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不倫、モラハラ、DV……それでも「別れられない」妻たちの本音とその理由

  • 2024.6.16

夫の不倫やモラハラ、DVなどの裏切り行為で「離婚」を考えたことがある女性は、少なくないかもしれません。今回、幾度となく深く傷つき夫婦関係に悩みながらも、離婚を選択できずに夫との結婚生活を継続する道を選んだ女性二人にインタビューしました。それでも夫と“別れられない”理由、そのリアルな本音について紐解いていきます。

裸足で逃げたことも……年下夫からDVの日々

「30歳までに子どもを産みたい」という人生の計画を立てていた恵美さん(仮名/45歳)。29歳の時に職場で出会った太一さん(仮名/40歳)と結婚して退職、翌年第1子を授かりました。

太一さんとは仕事で頻繁にやり取りをする関係性で、いわゆる交際0日婚。偶然結婚したいタイミングが合致して、太一さんからの最初のアプローチが「僕と結婚してください」というプロポーズだったのだそう。そこから婚姻届を出し、妊娠・出産と、結婚生活はトントン拍子に進んでいきました。

恵美さんの5歳年下の太一さんは、子どもが生まれた当時、25歳。仕事はまだ安定しておらず、働きながら国家試験を控えていた身でした。

家事や育児はおろか、帰宅したら服をそこらに脱ぎ捨て「メシ!」と、そのまま席につくような亭主関白タイプの太一さんを、恵美さんはできる限りサポートしました。が、一方で産後すぐに慣れない育児を一人で抱えて、いっぱいいっぱいだったとふり返ります。

Pranithan Chorruangsak/iStock/Getty Images Plus

太一さんは気に入らないことがあってひとたび機嫌を悪くすると、暴言を吐いたり暴力に及んだりすることがありました。一度キレてしまうと止められない性格で、恵美さんは蹴られたり物を投げられたり。ガラスのテーブルを割られたこともあり、度重なるDV行為に、子どもを抱き裸足で家から逃げ出したこともあったそうです。

また、恵美さんがパートに出た時にも「どうせお前が働いても俺より稼げないんだから」とバカにしてきたり、「お前はロクな人生を歩んできてないだろ」と卑下したりするなど、太一さんは恵美さんの人格を否定する言葉をかけていました。

その度に、恵美さんは実家に逃げ帰りますが、少し時間が経つと太一さんが実家に謝りに来るそうです。そしてまた自宅に戻り、しばらくすると暴言暴力を浴びせられるという……。この終わりが見えないようなDV・モラハラのループに、恵美さんはどう対処していったのでしょうか。

SvetaZi/iStock/Getty Images Plus

転機は夫の収入増と……

恵美さんはワンオペで育児をしながら、太一さんからのモラハラに耐える日々。もちろん何度も「離婚」の二文字が頭をよぎりましたが、そんな中、少しずつですが、状況は変化していきました。

一つは、太一さんが国家資格に合格して、収入が右肩上がりで増えていったことです。経済的に余裕が出てきたことで「この生活を崩したくない」という思いが、恵美さんの中で大きくなっていきました。

もう一つは、恵美さんが40歳の時に、10年ぶりに第2子を妊娠、出産したこと。上の子は娘でしたが、下の子は息子だったので「男の子にはパパが必要だな」と、元気いっぱいに動く息子を育てる中で痛感したそうです。

「夫の収入が上がったこと」と「息子が生まれて男親が必要だと感じたこと」という二つの要素によって、恵美さんは「太一さんからのモラハラに耐えてでも、離婚するより結婚を継続した方が得策だ」という考えに至ったといいます。太一さんの場合は、子どもに対しては直接の暴力・モラハラ行為が見られなかったそうで、その点も離婚を思いとどまった要因でした。

fizkes/iStock/Getty Images Plus

幸い仕事が軌道に乗り、精神的に余裕が出てきたせいか、太一さんのDVはだいぶ減ってきていたそう。ただモラハラは相変わらずでした。恵美さんが何とか見い出したモラハラ回避方法は、「萎縮せず、自分の意見をはっきり言うこと」。恵美さんは何か怒鳴られても冷静に反論するようになり、“強い妻”になることで、徐々にDVはなくなり、モラハラも減ってきたそうです。

とはいえ、恵美さんに太一さんへの感情を聞くと、このような回答が返ってきました。

「結婚前から、夫がモラハラ気質だとわかっていたら結婚しなかった」
「夫と同じくらい自分も稼げていたら、離婚していただろう」
「もし子どもに対しても暴力やモラハラ行為が見られたら、さすがに離婚を選んでいた」
「子どもが成人したら、夫婦二人で生活するのは無理」
「子どもがいなかったら、とっくに離婚している」

……と、冷めきった言葉がずらり。これまでのひどい言葉や暴力を思うと、再び太一さんに心を開くことは難しいようです。

しかし、それを太一さんは薄々察しており、最近は時々恵美さんに「二人で出かけない?」とデートの誘いをしてくることもあるとか。恵美さんはもちろん断っています。彼は自分が仕事以外の家事・育児など“生活全般のこと”が一切できないため、太一さんは恵美さんがいないと生きていけないと焦り始めている模様。今では夫婦の形勢が逆転してきており、少しずつ実権は恵美さんが握り始めているようです。

Tero Vesalainen/iStock/Getty Images Plus

これまで太一さんとの「離婚」が何度も頭をよぎりながらも、恵美さんが「別れられなかった」のは、「子どもに経済的な不自由をさせないため」ということが一番の理由。娘が私立中学に進学できたのも、息子に色々な習い事をさせることができるのも、“稼ぐ夫がいるから”だと思っています。もし離婚して恵美さんがシングルマザーになっていたら、子どもたちに今の生活はさせてあげられなかったでしょう。だからこそ、本当は一緒にいるのが苦痛である夫との生活に、恵美さんは日々耐えているのだと話します。

子どもたちが成人した後の夫婦関係は、継続できるのか?離婚するのか? わかりませんが、太一さんとかれこれ15年を共に暮らす中で、「人を変えるのは無理」と心底感じたという恵美さん。「子どもを育て上げるまでは……」というのが本音のようです。

夫が不倫、3人の子どもと残された妻

大学時代の先輩後輩で、学生時代から付き合い25歳で結婚した和子さん(47歳/仮名)と博司さん(48歳/仮名)。結婚13年目、和子さんが38歳になる時に第3子が生まれました。

上の子は28歳と30歳で産みましたが、3人目の子はなかなか授からなかったといいます。それでも結婚当初に博司さんと「子どもは3人できたらいいね」と話していた夢が現実となり、「上の子二人に比べて年齢的にも妊娠・出産は大変だったけど、その分生まれてきてくれた時の感動はひとしおでした」と、和子さんは当時を振り返ります。

産後は里帰りせず、母親に1カ月ほど来てもらって育児や家事のサポートをしてもらっていた和子さん。博司さんは仕事が忙しく不規則なので、元々育児の協力に期待はしていませんでしたが、その1カ月の間、今思うと博司さんの帰りが遅かったり、泊りがけの出張も入っていたりしていたな……という記憶もあります。しかし当時はとにかく育児と自身の体調の回復、そして3人になった子どもたちの生活サイクルを整えていくことに必死で、和子さんは博司さんの行動を特に疑うこともありませんでした。

Ben Bloom/iStock/Getty Images Plus

その後、母親が実家に戻り、「いよいよ家族5人の生活がスタートするぞ!」と、和子さんは気合いを入れ直していたところ、思いもよらない出来事が起きたのです。

博司さんは仕事柄接待や会食も多く、夜帰ってくる時間もまちまちで、夜中に帰ってきていることも多々ありました。しかし、ある日を境に突然、博司さんが家に帰って来なくなったのです!

博司さんが帰宅しなくなって、1日、2日と経ち、和子さんはもちろん「どこにいるの?」と連絡をしていましたが、返事はありません。電話にも出ません。最初は浮気を疑ったりもしましたが、3日目にはさすがに心配になり、「何かのトラブルに巻き込まれたのでは?」と、捜索願を出すことも検討し始めていた頃、博司さんからメールが来たといいます。

『すまないが、当分帰れない。生活費は今まで通り振り込みます』

「どういうこと……?」と、和子さんは信じられない現実を突きつけられて、ただただ唖然としたそうです。

Serenethos/iStock/Getty Images Plus

それでも、和子さんは3人の子どもとの生活がとめどなく続いていくので、子どもたちの前では気丈に振る舞いながら、博司さんとは時々メールでのみやり取りができる程度の状態に。事を荒げたくなかった和子さんは、子どもや近所の人には「パパ(夫)は長期出張に行っている」と説明していました。

しかし、実際に博司さんは何をしていたのでしょうか? 幸い共通の学生時代の友人が何人もいて、中には夫婦ぐるみの付き合いをしている友人もいたので、少しずつ話を聞き出していくと、その実情がわかってきました。

「職場の後輩女性と2年ほど付き合っていた」
「彼女には“妻とは冷めきっている”と説明していたのに、3人目の子どもが生まれたことで激怒し、嫉妬と束縛が強くなった」
「彼女が会社を辞め、博司さんに“責任を取って”と迫ってきた」
「その結果、駆け落ちをすることになった」

和子さんは博司さんが不倫していたことも知らなかったので、まさに青天の霹靂。すぐには状況を受け入れられず、相手の様子を把握することも難しかったのですが、学生時代の友人曰く「当初、博司さんは軽い気持ちで付き合っていたけど彼女の方は本気で、3人目の子が生まれたことで彼女からの嫉妬が強くなり、博司さんも寂しい気持ちに火がついて、二人は燃え上がったみたいだよ」ということでした。

次第に、博司さんから和子さんに『離婚してくれ』というメッセージも届くようになりました。和子さんとしては、「子どもが3人もいて離婚は毛頭考えられない……」と、離婚には断固応じない姿勢を貫きました。

Farknot_Architect/iStock/Getty Images Plus

「人生の中でちゃんと恋愛をし、こんなにも長く付き合ったのは博司さんだけ。こんな裏切り方をされて本当にショックだけれど、このまま離婚して終わりにしたくない」。和子さんは毎晩、子どもたちが寝静まると泣いていたそうです。

5年を経て、夫と再会…!

博司さんが駆け落ちをして、5年の時が経過しました。和子さんは母親の力も借りながら、ワンオペで3人を育てていました。ただ毎月、決まった額の生活費は振り込まれていました。

5年が経とうとするころ、博司さんから少しずつ、家族を気にかける連絡が増えてきました。ある時「そろそろ帰っていいか?」というメールが来たそうです。もう5年も会っていないので、まさか本当に帰っては来ないだろうと思いつつ、和子さんは心の奥底では帰って来て欲しいと思っていたので、「いいよ」と返信。するとその週末に、博司さんがひょっこり家に帰って来たのです。

和子さんも、思春期の子ども二人も、色々な思いがあり複雑でしたが、「おかえり」と博司さんを受け入れました。こうして5年間の空白を経て、「5人家族」での生活となりました。

和子さんに率直な思いを聞くと、「もちろん浮気されて深く傷つき、人間不信にもなって、今でも決して許せません。ただ、5年間途切れずに生活費を振り込んでくれていたので子どもたちと生活できていたことは事実。だから家を守って待っていることができたと思います」とのこと。後から聞いた話だそうですが、和子さんが離婚を断固拒否していたため、不倫相手の女性は博司さんと結婚できず、結果的に別れたとのこと。

monkeybusinessimages/iStock/Getty Images Plus

現在、博司さんは和子さんの誕生日や記念日には必ずお祝いを用意しれたり、旅行に一緒に行ったりと、駆け落ち前よりも断然優しくなったそうです。博司さんは不倫中も子どものことは気にかけていたそうで、そのために生活費だけは欠かさなかったと話しています。和子さんに対しては、大事な子どもたちを守ってくれていた恩と、不倫をして裏切ったことの償いの気持ちがあるのでしょう。今は、夫婦の時間を大事にしようとしているといいます。

これまでの複雑な思いがありながらも、こうして博司さんに優しくされることについて、和子さんは正直「嬉しい」と感じるのだそうです。その理由は、学生時代に一目惚れして付き合ってから今までずっと、「心の奥底では博司さんに惚れているから……」。

だからこんなにも長きにわたり浮気をされて、これほど傷つけられても、和子さんは別れを選ぶことができなかったと振り返ります。これは、和子さんが大学の友人から「博司さんって、和子の好みのタイプのどストライクだもんね」と言われて、ハッと気づいたことでした。

浮気され、駆け落ちまでされて、一生消えない心の傷を負いながらも、それでも「好き」という気持ちが消えない相手。和子さんは別れを選ぶことができず、今もなお婚姻関係を続けています。

選択肢が少ない現実

一度は永遠の愛を誓った相手から、DVやモラハラ、不倫など裏切り行為をされた場合、深く深く傷つきます。その時のつらい思いは、時間が経っても決して簡単に消えるものではありません。こうした妻の心の傷を、夫はどこまで理解しているのでしょうか。

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今回取材をした二人の女性が、離婚を選択せず“別れられなかった”のは、経済的な理由、子どものこと、そして恋愛感情の部分がネックとなってたからでした。

夫の行動に驚き悲しみ、日々苦痛に耐えながら婚姻関係を続けるということは、妻にとって決して容易なことではありません。しかし離婚してシングルマザーになり、仕事をして収入を得ながら、家事や育児もすべて一手に担うのは、それもまたとても厳しく、勇気のいる選択です。

夫にどんなにひどいことをされても、外から見れば、なぜ離婚しないのかと思う関係性でも、“別れられない”ケースがあり、それもまた現実なのだと思います。実際問題、子どもを持つ女性、経済力を手にしていない女性、の場合は特に、選択肢が狭まってしまう厳しい状況を目の当たりにした取材でした。

■田中 絵音のプロフィール
一般社団法人日本合コン協会会長。東京ママパーティー主宰。唎酒師。 数々の合コン・婚活パーティーやママイベントの運営に携わり、恋愛心理やコミュニケーションに精通する恋愛アドバイザーとして活動中。 著書は6冊。一児の母。

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