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本当は悪いことをしたい? 悪役好きな子どもの心理を分析/新装版 わたしが正義について語るなら④

  • 2024.6.15
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『新装版 わたしが正義について語るなら』(やなせたかし/ポプラ社)第4回【全5回】正義とは何か、正義の味方とはどのような人なのか――。『アンパンマン』の作者・やなせたかしさんが自身の体験談を交えながら、正義への思いを綴った1冊です。戦争や自然災害、物価高…混迷の時代に生きる人々を勇気づける、やなせ流の人生哲学を『新装版 わたしが正義について語るなら』の中から抜粋してお届けします!

ダ・ヴィンチWeb
『新装版 わたしが正義について語るなら』(やなせたかし/ポプラ社)

正義のヒーローはいつもみんなの人気者なのか?

「アンパンマン」に登場するキャラクターは、今では二千を超えています。最初は食べ物の関係だけにしようと思っていたけれど、だんだん増えて今ではゆうやけマンなんていうのもいます。

二千以上のキャラクターそれぞれに性格や特徴があるわけですが、正義の味方はなんといってもアンパンマン。そしてばいきんまんは正義の敵。アンパンマンとばいきんまんは、宿命の相手としていつも対決をしています。

だけど、子どもに一番人気があるのは正義の味方のアンパンマンかというとそうでもない。

昔から、ばいきんまんは結構人気があります。子どもたちは、ちょっと大きくなるとばいきんまんが好きになるみたい。

子どもでも誰でも本当は悪いことをしたいんですね。

お母さんに𠮟られるからとか、学校で決まりがあるからというのでやらないけど、本当は朝はもっと寝ていたいし、宿題もやりたくない。そういう悪いことをばいきんまんはガンガンやるので、子どものストレスを解消して、ウケることになっているのかもしれません。

アンパンマンは少し優等生なんですね。だから、読む人はどうしても暴れ回っている方に感情移入するというか、好きになってしまう部分が出てきます。いろいろな物語でも、悪人の方がかっこいい、素敵だとウケることがありますね。古典でいえば『宝島』の中に片目の海賊が出てくる。悪いやつだけど、主人公より人気があります。

もちろん、アンパンマンのファンは多いですよ。モテるタイプかモテないタイプか、と言えば一般的にモテます。特に小さい子どもはアンパンマンのことが非常に好きです。

女の子はメロンパンナとかロールパンナとかを好きだという話をよく聞きます。

ドキンちゃんは男に人気があるんですよ。手のつけられないワガママで、自分を美人だと思い込んでいる嫌な女でしょう。それが男、特に大きくなった大人の男に人気があるんです。男はみんな慎ましくて従順な女性を好きになるかというと、意外とそうでもないのですね。不思議ですが、そういうふうになっているんです。

最近、アンパンマンが少ししか出てこないで他のキャラクターばかりが活躍する話もあります。ところが、アンパンマンがいないと他のキャラクターが引き立たない。

みなさんがばいきんまんが好きとか、メロンパンナが好き、ドキンちゃんが好きとかいろいろ言うのは、アンパンマンと対比して好きということなのですね。

アンパンマンは太陽みたいな存在でね。みんなあまり気がついてないけど、アンパンマンに対比して他のキャラクターを好きになっているのですね。これはぼくも話を書き始めてから気がついたことだけど、アンパンマンはやっぱり主役で中心なのです。アンパンマンの光を受けて他のキャラクターはみんな生きている。一番光を受けているのはばいきんまんですが、他のキャラクターもみんな受けています。

その点でアンパンマンは非常に重要です。面白いキャラクターはたくさん出てくるんですけど、その時アンパンマンがいないとあまり面白くないのです。

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