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【秘密の花園】森を背に彩られるバラと宿根草とアジサイの庭

  • 2024.6.27
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森の緑を背景に、バラやアジサイ、そしてさまざまな宿根草が競演する武島由美子さんの庭。小鳥のさえずりが響き渡り、ミツバチやチョウが花から花へ飛び交うこの庭は、竹林を開拓するところから始まりました。さまざまな試行錯誤の末に、知る人ぞ知る秘密の花園へと生まれ変わった庭を訪ねました。

奥行き30cmにも満たないつるバラと草花の花壇

愛知県日進市の住宅街、遠くから見てすぐにその家だということが分かるほど、通りに面して花々が美しく競演する武島邸。奥行き30cmもない石積みの花壇に、 ‘レイニー・ブルー’や‘コンテスト・ドゥ・セギュール’、‘たまかずら’など数種類のつるバラが植栽され、そのやさしい色合いのバラの間に、窓辺の花台のアジサイが心地よいリズムで鮮やかな彩りを添えます。

つるバラの花壇
(左)房咲きの花をたわわに咲かせるつるバラの‘たまかずら’や‘コンテスト・ドゥ・セギュール’。(右)バラの色を引き立てるブルーのロベリア‘カリブウォーター’や優しいイエローのペチュニア‘ステファニー’、ガザニア‘ビーストシルバーフォックス’がバラの株元をふんわり覆う。

バラの株元と花壇の手前に置かれたコンテナには、ブルーとイエローの花がふんわりと咲き誇ります。花があふれんばかりの華やかさながら、色を絞った色彩計画のもとにデザインされた壁際の花壇は、一幅の絵画を見るような美しさです。しかし、この表の庭は武島さんの庭のほんの一部に過ぎません。

つるバラの花壇
淡い紫色のつるバラ‘レイニー・ブルー’にブルーと黄色の小花がよく似合う。

森を背に華やかに彩られるメルヘンチックなバラと宿根草の庭

知る人ぞ知る秘密の花園は、玄関の脇の小道を進んだその奥、森の緑を背にして広がっています。広さ約200㎡の庭は、森に向かって少し高くなるように傾斜がつけられており、緩やかにカーブするレンガの小道は、その先の景色を見え隠れさせながら歩みを誘います。頭上から甘い香りを降り注ぐバラのアーチ、背丈以上の高さで林立する何百本ものジギタリスとデルフィニウム、白花がレースのように咲き集うホワイトガーデン。小道の先に開ける景色は常に新鮮な驚きをもたらし、一巡りする頃には感嘆のため息を使い果たしてしまいそうです。

竹の抜根から始まった苦労の庭づくり

バラとジギタリス
バラとジギタリスの群落が競演する庭。

「ここは元々、竹林だったんですよ」と話すのは、庭主の武島由美子さん。ガーデン設計施工の「アンズガーデン」のデザイナーとして活躍しながら、ハンギングバスケット協会の理事も務め、講師として全国を飛び回るかたわら庭の手入れをしています。

花々の優雅な競演を前に、にわかに想像し難い竹林の風景ですが、実際に今でも花の間から竹がひょっこり生えてくると言います。

「竹って地下茎でつながっていて、地中に縦横無尽に根が張り巡らされているんですよ。それを取り除かないと花が植えられないので、最初は竹との格闘の日々。それはもう庭づくりっていうか、『開拓』でしたね(笑)」

武島由美子さん
庭主で「アンズガーデン」の代表を務める武島由美子さん。ハンギングバスケット協会の講師として九州から北海道まで全国を回る忙しい日々を送りながら、庭の手入れを行っている。

草花の素朴なガーデンに新たに加わった初夏の女王バラ

そんな苦労をしてでも武島さんを庭づくりへとかき立てたものは、花が好きというシンプルな思いです。文字通り竹林を開いて得た土地を耕し、道をつくってガーデンの骨格を整え、花を植え、庭づくりを続けてきました。

「最初の頃は、素朴な宿根草とか一年草だけの庭だったんですが、いつからかそういう素朴な草花にも似合うオールドローズとかイングリッシュローズが登場して一気に魅了され、バラも育て始めたんです」。しかし、なかなか上手に咲かすことができずに、往復500kmの距離もいとわずコマツガーデンのバラ栽培の講座に通い、バラ栽培を勉強したといいます。

バラの庭
(左)茎が細く華奢な雰囲気で咲く‘フランソワ・ジュランヴィル’。ガーデンには草花との相性がよい小輪〜中輪のバラが選ばれている。(右)宿根リナリアやジギタリスと咲く淡いピンクのバラ。

「バラと宿根草では土壌づくりが違うんですよね。土壌を豊かにしようと思って堆肥を庭にまいたら、バラの枝がグングン伸びて葉っぱばかり茂ってしまったことがあって。堆肥はチッ素分が多いことが原因なんですが、バラにはバラに適した肥料があるということを学びました」

バラの庭
ガーデンシェッドやベンチなどのガーデンファニチャーと、植物がコーディネートされたフォトジェニックなコーナーが庭のそこここに。雑草対策として、見えないように草花の間には段ボールが敷かれている。

そうした失敗も経験しながら、草花中心だった庭には段々とバラが増え、手入れの仕方もバラ中心に変わってきました。年が明けると、1月末までにバラの剪定と誘引を1週間かけて行い、バラの芽出しの頃とその2週間後に病害虫予防として2回ほど薬を散布。5月になると400本以上のバラが次々に咲き誇り、その開花を待って2週間に渡り開催されるオープンガーデンには全国からたくさんのファンが来訪します。それが終わるとお礼肥えとしてバラに肥料をたっぷりやり、宿根草は切り戻しをしてさっぱりさせます。

「この庭は草花が多いので、バラの株元がすっかり覆われてしまわないように、雑草の除草はもちろん、宿根草も結構短く切り戻しておきます。そうでないと、カミキリムシの被害サインのオガクズに気づきにくくなってしまいますからね」

バラと交代でシェードガーデンを彩るアジサイたち

バラの庭
(左)日陰になりやすい部分には、ライムイエローのヒューケラやタイツリソウ‘ゴールドハート’などのカラーリーフを下草にして、空間を明るく演出。(右)ピンクの絞り咲きアジサイ‘衣純千織(イズミチオリ)’をヒューケラやペチュニアと寄せ植えにして花台へ。

バラと交代に庭を彩るのはアジサイ。森に隣接したシェードエリアには、アジサイやギボウシ、ヒューケラ、アスチルベなど半日陰を好む植物がふんだんに植栽され、暗くなりがちなエリアが華やさを増してきます。ハンギングバスケット協会の理事も務める武島さんの庭には、庭植えだけでなく鉢植えやハンギングバスケットのアジサイも庭の彩りとして活躍。鬱々とした梅雨の時期に鮮やかな花色で庭を彩ります。

日陰の庭
(左)斑入りのギボウシやツワブキとともに日陰を彩るアジサイ‘ラグランジア’。(右)鉢植えにした銅葉のアジサイ‘ブラックダイヤモンド’がシェードエリアのフォーカルポイントに。
アジサイのハンギング
アジサイのハンギングをガーデンチェアの背に飾ったコーナー。

「7、8年ほど前からアジサイのハンギングを作っていますが、当初は植生の違いから、アジサイのハンギングは認められませんでしたが今ではコンテストにも並んでいます。アジサイは花がよく目立ちますし、ハンギングは目線より上に花色を持ってくることができるので、庭づくりでも重宝しますよ」

秋の庭の楽しみと、もう一つの楽しみ

庭のバラは四季咲きが多く、秋にももう一度見頃を迎えます。

「秋はバラの花数は少なくなりますが、庭にはフジバカマなどの宿根草がたくさん咲いて春とはまた違った雰囲気になります。いつからかフジバカマに、渡りをする蝶として知られるアサギマダラが毎年くるようになって、その美しい蝶と再会するのも庭の楽しみの一つなんです」

そしてもう一つ、最近になって庭にうれしい出来事があったと武島さん。

「昔、私が庭に置いた植木鉢が原因で、主人が大怪我をしてしまったことがあって、以来、花なんか見たくないというくらい花嫌いになっちゃったんです。だから、これまで庭に見向きもしなかったのに、ある日『うちのバラはきれいだなぁ』ってポツッと。それを聞いて本当にびっくり! 私的にはまだ会心の出来でバラを咲かせられたことはないのだけど、その一言に心の中でガッツポーズ(笑)」

今ではご主人のサポートもあり、庭にはご主人お気に入りのシーンもたくさんあります。それをiPad(アイパッド)で撮るのが会社へ行く前の日課になっているとか。そのiPadの中に、庭のアルバムのページが増えていくのが、武島さんの庭づくりの大きな楽しみに加わりました。


Credit
取材&文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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