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「予想がすべて裏切られた」「正体って●●なんじゃ…」シャマラン父娘が放つ『ザ・ウォッチャーズ』を20代男女がネタバレ回避で語り合う!

  • 2024.6.14
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地図にない森のなかに佇むガラス張りの部屋。そこに避難した孤独なアーティストのミナ(ダコタ・ファニング)が出会ったのは、見知らぬ3人の男女。彼らはこの部屋で毎晩“監視者(=ウォッチャーズ)”から監視される恐怖を味わうことになる。そして、「“監視者”に背を向けてはいけない」「決してドアを開けてはいけない」「常に光の中にいろ」という3つのルールを1つでも破れば殺されてしまう。

【写真を見る】見知らぬ男女が、ガラス張りの部屋で…“ウォッチャーズ”のおぞましい正体に絶句

『シックス・センス』(99)で世界中を驚愕させて以来、四半世紀にわたってスリラー映画界を牽引してきたM.ナイト・シャマランがプロデューサーを務め、彼の愛娘イシャナ・ナイト・シャマランが長編映画監督デビューを飾った『ザ・ウォッチャーズ』(6月21日公開)。まるでシャマラン家のしきたりであるかのように、父さながらの徹底した“秘密主義”が貫かれた本作は、公開されている予告映像を観てもなお多くのことが謎に包まれたままだ。

そこでMOVIE WALKER PRESSでは、イシャナ監督とほぼ同世代の男女4名にひと足早く本作を鑑賞してもらい、社内の“ガラス張り”の会議室で座談会を実施。彼らに課した3つのルールは「予告編を観て、予想や想像、考察を膨らませながら鑑賞すること」「作品を観て感じたことを率直に語り合うこと」、そして「ネタバレを避けること」。

この座談会に参加したのは、ホラーに特化したイベントやプロモーションなどの制作を行う株式会社闇でプロデューサーとして働く遠藤(20代・女性)と、連続ドラマのAPなど制作の仕事に携わり、監督した短編『笑顔の町』が「第2回日本ホラー映画大賞」で入選を果たした小泉(20代・男性)。編集者・ライターとして働き、映画は好きだがホラーはあまり得意ではないという高木(20代・女性)、「MOVIE WALKER PRESS」の最年少編集部員である山下(20代・男性)。

主人公のミナを演じるのは、天才子役として注目を集めたダコタ・ファニング [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
主人公のミナを演じるのは、天才子役として注目を集めたダコタ・ファニング [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

彼らは“マスター・オブ・サプライズ”の血を引く若き才能が仕掛けるリアリティーホラーをどのように考察し、どのようにその恐怖を味わったのか?なお、記事中で物語の核心に触れそうな部分は「●●●●」のように伏せ字で表記させてもらう。

ウォッチャーズにまさかの感情移入!?鑑賞前の予想は全部覆される…

山下「まずは、予告編を観て予想したことから話していきましょうか。遠藤さんはどんな予想をしていましたか?」

遠藤「私は予告編の時点でお父さんのM.ナイト・シャマラン監督の作品とは少し毛色の違うホラーになるのかなと感じていました。でも念のため、お父さんの作品を改めて全部観直してからこの作品に臨みました」

小泉「やっぱりお父さんの印象は強いですからね。僕はお父さんの作品のように、人間愛のある“人間が怖い”映画になるんだろうなと想像を膨らませましたが、シャマラン映画は事前情報を入れないほうが楽しめますから。なるべくまっさらな気持ちで観るよう心掛けていました」

高木「私も“人間が怖い”系の作品なんだろうなと予想していて、例えば『ミッドサマー』みたいに森に住んで独自の文化を築いている人たちに主人公たちが触れてしまうような映画なのかなって思っていました」

予告編は謎だらけ…予想は何度も覆される! [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
予告編は謎だらけ…予想は何度も覆される! [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

山下「僕はワンシチュエーションもののホラーが好きなので、狭い部屋に閉じ込められるという時点で『CUBE』とか『ソウ』のような展開を想像しました。でも舞台が“森”なので、『ヴィレッジ』なのかな?とか、自然と結びついた怖さが描かれるのかなといろいろ想像をめぐらせていて…。でも最初のほうのシーンで、『これは人為的ななにかでは!?』と思ったら、別のシーンでは化け物のような声も聞こえたり。観ている間も何度も予想を変えてはずっと覆されてばかりでした」

小泉「どうしたっていろいろ考えながら観てしまいますよね。中盤で“ウォッチャーズ”が●●●●した時点で、僕はこの映画の見方を180度変えなければいけないと思って、そこからは直球の●●●●ものとして楽しむことができました。いい意味で予想を裏切られっぱなしです」

遠藤「最近のホラー映画だと特にインパクトやビジュアルの怖さを売りにした作品が多かったですが、この映画ではウォッチャーズの存在についてとてもロジカルで丁寧に描かれていたので、彼らの大枠が見えてからもいろいろ考察したくなりましたよね」

小泉「観ているうちにウォッチャーズに不思議と感情移入しかけてしまうのも巧い。主人公のミナは●●●●があるから彼らに●●●●ことができるし、その辺りの描写はギレルモ・デル・トロ監督の映画みたいですごく好きです」

視覚と聴覚、両方で迫る“ウォッチャーズ”の恐怖

遠藤「間違いなくホラー映画なんですけど、ファンタジー要素もありますよね。血が出たりグロい描写も一切ないので、老若男女が安心して観れるホラー映画だと思いました」

【写真を見る】見知らぬ男女が、ガラス張りの部屋で…“ウォッチャーズ”のおぞましい正体に絶句 [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
【写真を見る】見知らぬ男女が、ガラス張りの部屋で…“ウォッチャーズ”のおぞましい正体に絶句 [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

高木「いきなりなにかが飛び出てきて驚かせるような演出があったら嫌だなって思っていたんですけど、ここからどうなっていくんだろうとワクワクしながら観ることができました。なので、私は主人公たちに感情移入しながら、自分だったらどうするかな?ってずっと考えていました。でも主人公もほかの登場人物も勇気がありすぎて…」

山下「みんな環境に順応する能力がものすごく高いですよね。普通は穴の中から●●●●を持ってくる発想にはならない(笑)」

小泉「部屋のシーンで、あの4人の前にある大きなガラスが●●●●じゃないですか。ぼんやりと見える向こう側になにか出てくるんじゃないか、破られてもおかしくないなという怖さはずっとありました」

遠藤「確実に死ぬな、っていう状況なら怖くて当たり前ですけど、ガラスとコンクリートの建物で守られていて、『ルールを守れば大丈夫』と安全が保障されていてもなお怖いと感じるのは、“音”の怖さが大きいですよね」

山下「最初にミナが部屋に来た時に、外から拍手する音が聞こえるじゃないですか。あれにゾッとしました」

遠藤「たしかに。あの時点でウォッチャーズの正体って●●●●なんじゃないかって…」

高木「どう考えたって歓迎される場所じゃないのに歓迎してくるから、部屋のなかの4人の気持ちと相入れないものがある。理解できない、話が通じない存在なんだとわかるシーンでもありましたね」

“音”であらゆることを想像させる巧妙な仕掛けが恐怖を駆り立てていく [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
“音”であらゆることを想像させる巧妙な仕掛けが恐怖を駆り立てていく [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

山下「ある意味では、映画館で映画を観ている環境もそれに近いのかなと感じました。視覚的に怖いものがいつ出てくるのかと考えながら、聴覚だけでそれを想像してどんどん怖さが増してくる演出は、観ている側が味わっているものとまったく同じ」

遠藤「でももしかしたら、逆に意思疎通ができるのかなという期待も持ってしまいました。ちゃんと意思を持って生きている存在なのかなって。だからミナはガラスに近づいていったのではないかと」

山下「あとはやっぱり●●●●な状態になったウォッチャーズの姿が、怖いけれど画面に釘付けになってしまいますよね」

遠藤「あれは拍手したくなっちゃう(笑)」

小泉「僕もそのシーンは最高でした。暗い森のなかで、唯一明るい家をバックにした影で見せていて。お父さんの映画だと、敵の姿をあまりハッキリと見せることってないじゃないですか。でもホラー映画としては『これだよこれ!』ってすごくテンションが上がりました」

遠藤「私はもう一つ、昼間の森のシーンがとても怖かったです。安全なはずだけど、すごく遠くまでハッキリと見えていて…」

山下「そこもまたなにか出てくるんじゃないかという感じと、音の怖さがありましたね」

ただ薄暗いだけじゃない…!森のなかのシーンにイシャナ監督のセンスが冴え渡る [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
ただ薄暗いだけじゃない…!森のなかのシーンにイシャナ監督のセンスが冴え渡る [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

遠藤「総じて森の見せ方がオシャレでしたよね。森を舞台にしたホラー映画って、画が変わらないから結構退屈になりがちですし、色も足りないから、普通はあまりオシャレじゃないんですよね」

高木「わかります!」

遠藤「この映画に出てくる森は彩りがあってすごく綺麗。イシャナ監督はアーティストとして絵も描かれるし、Instagramを見てみるとファッションのセンスもすごくオシャレ。そういう部分が映画にも活かされているんでしょうね」

高木「ミナがずっと連れている鳥も、はじめは『なんで黄色なんだろう?』と疑問だったんですが、森の暗いなかに入ると本当に目立つし、鬱々とした画面のアクセントになっていました」

山下「『サイン』でお父さんがオマージュしたヒッチコックの『鳥』に出てきたカラフルな鳥を思い出しましたし、森のなかで黄色がアクセントになるのは『ヴィレッジ』ですよね」

小泉「僕も次にホラー映画を撮る時は、オシャレ路線を目指そうかな」

長編デビュー作ににじみ出る、イシャナ監督の類稀なるセンスと人間性

山下「それにしてもイシャナ監督は現在24歳。自分よりも年下で、これが初めての長編監督作とは思えないくらい落ち着きのある演出ぶりに驚かされました」

メガホンをとったイシャナ・ナイト・シャマランは、偉大な父を持つ現在24歳の超新星 [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
メガホンをとったイシャナ・ナイト・シャマランは、偉大な父を持つ現在24歳の超新星 [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

小泉「序盤のカットの速さには若さを感じましたし、とにかくありとあらゆる描写に直球で挑む度胸がすごい。驚いたのはサプライズの見せ方です。観客を驚かせる情報が幾重にも重ねられていて、一つ驚くシーンがあったらまた次、また次と続いていて。こんなにきれいに仕分けできるものなんだなと、その才能には嫉妬しかないです(笑)」

遠藤「サプライズのポイントが全部納得できるものなんですよね。最初のほうのミナの行動の疑問もきれいに回収されるし、この主人公じゃないと絶対ダメなパーソナルデータがいくつも用意されているのは本当に見事です」

高木「原作があるというのはもちろんなんですけど、イシャナ監督のなかに『こう作りたい』というビジョンが明確にあるんでしょうね。本人の理解度がすごく高いから、観客にも伝わるものができる。伏線回収のさりげなさといい、本当にスマートでした」

遠藤「普通、20代で監督になったら『回収したよ!』『ほら見て!』といった、承認欲求が先走った演出になっちゃいますよね」

小泉「やっぱり生まれた時からあのお父さんが近くにいたのが大きいんでしょうね。お父さんの現場にも立ち会って、それを見て学んだ部分もあり、反面教師にしている部分もあり」

山下「現場でのノウハウもしっかりあったうえで、20代としての感覚やトレンドをきちんと押さえられているのも強いですよね。どんなに新鮮なものも、土台がしっかりしていないと浮ついて見えちゃうけど、この映画にはスッと受け入れられる説得力がある」

遠藤「それだけイシャナ監督がいろんな人と関わってきたということなのかなと思いました。コミュニケーション能力や人間力の高さが、年上の俳優さんやスタッフを動かすだけの説得力になってこの映画ができたのだと」

小泉「今後の作品にも期待が持てそうですよね。でもこういう映画をやらせてもらえる環境と、実際に演出できるセンスを24歳で持っているなんて、本当に羨ましすぎる…」

高木「とにかく、嫉妬しかないんですね(笑)」

怖いけれど…ホラー好き以外にも勧められる?

ルールを1つでも破ったら死んでしまう…彼らはどんな行動を取るのか [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
ルールを1つでも破ったら死んでしまう…彼らはどんな行動を取るのか [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

高木「私のようにホラーが苦手で手を伸ばしづらいと思っている人には、『こういうホラー映画もあるんだ!』と知ることができるきっかけになる作品だと思いました。観終わったあとに『怖かったね』だけで終わるのではなく、観た人と一緒に考察を語り合いたくなる。そういった点がSNS世代に刺さりそう」

山下「誰かと一緒に観られるホラー映画っていいですよね。僕は昔『ミッドサマー』を友だちと観に行ってものすごく気まずくなった経験があるんですが、この映画なら心配なさそうです(笑)」

小泉「よくホラー好きじゃない友だちから『おすすめのホラー映画ある?』って訊かれるんですけど、そういう時に出しやすい映画ですよね。物語として純粋におもしろいし、普通におすすめできるポイントがたくさんある。どんどん周りに広めていこうと思います」

遠藤「私はホラーゲームの実況動画が好きな人に勧めたいですね。ああいった動画に通ずるテンポ感や視点があると思います。それと、予告から感じ取っている方もいるのではないかと思うのですが…SCP好きには親しみやすい作風になっていると思いました。年齢制限もないので、SCPのメインターゲットでもある小、中学生でもきっと安心して観られるはず!」

高木「あとはリアル脱出ゲームとかマーダーミステリーなど、プレイヤーが主体となって考察していくコンテンツが好きな人には、確実に刺さると思います」

『ザ・ウォッチャーズ』は6月21日(金)より公開! [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
『ザ・ウォッチャーズ』は6月21日(金)より公開! [c]2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

遠藤「そうそう!絶対に言えるのは、家でながら見しちゃダメなタイプの作品。無駄な要素がなくて、たぶん画面のすべてに意味がある。先ほど話に出たみたいに、主人公たちと同じような環境が味わえる映画館でじっと目を離さずに観れば、おもしろさがより伝わってくると思います」

山下「確かに。この濃度ならば、複数回観ることでまた新しい発見ができそうですね。今日は皆さんありがとうございました!」

取材・文/久保田 和馬

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