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学んで旅して日本をもっと好きに!イチオシの「日本遺産」と学び方のススメ

  • 2024.6.28
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こんにちは!トラベルライターの土庄です。

いきなりですが皆さんは「日本遺産」をご存知でしょうか?日本遺産とは、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーのこと。2024年6月現在、全部で104のストーリーが認定されています。

日本遺産の最大の特徴は、観光地そのものではなく、その土地に息づくストーリーに焦点を当てていることです。日本遺産を学ぶと地域の個性やバックグラウンドがみえ、その地域をより理解することができます。

今回は、そんな「日本遺産」を学ぶことで、さらに深まる旅の楽しみ方についてご紹介します。

旅先での体験をより印象的な学びに変える

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旅先でのディープな体験は、必ずと言って良いほど現地の風土や文化、そして歴史と深い繋がりがあります。

皆さんも、訪れた国や地域の強烈な個性の虜になった……という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

一言でいえば、日本遺産とは「バリエーションに富んだ日本の個性に着目し、その個性を形作ったルーツに迫るもの」。

地域の文化や慣習、信仰などには必ず、はじまりと影響を与えたバックグラウンドがあります。旅に出ることで、地域の個性を知ることはできても、現地でその個性を深掘りしていくことはなかなか難しいですよね。

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例えばどこかに訪れたとき、頭の片隅に事前にインプットした情報や知識があれば、「へぇ〜」で終わっていたかもしれない旅行経験が"より新鮮で色づいた学び"に変わる可能性があると思うのです。

琵琶湖に向かって鳥居が立つ「白髭神社(滋賀県高島市)」を例に出しましょう。

古来より琵琶湖は、湖畔地域に水をもたらしてくれる恵みの存在で、人々の生活を支えたほか、祈りや信仰の対象になりました。

事前にこうした知識をつけておくことで、白髭神社を訪れたとき、単にフォトジェニックな場所だという感想で終わらず、感動もより深まるのではないでしょうか。

興味の幅が広がり、新しい旅の動機になる

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冒頭で触れたように、日本遺産では地域の個性をストーリーとして認定している点に大きな特徴があります。ストーリーを辿るということは、つまりさまざまな場所が舞台として登場するということです。

「どの場所をめぐろうか?」こんなふうに旅の計画を立てるとき、スポットの選定をするのにも大いに役立ちます。

また、ひとつのストーリーを辿るように地域を巡ることで、普段の自分が計画する旅では立ち寄らないスポットに目を向けられるのも魅力ではないでしょうか。

日本遺産を学んで旅に出ることで、興味関心の幅がきっと広がるはず。そしてその幅の広がりが、また新たな旅につながるかもしれません。

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筆者は、よく自転車で瀬戸内(しまなみ海道など)を旅していますが、次に瀬戸内を訪れるときには、中世の海賊・村上水軍にゆかりのある場所を巡る計画を立てています。

じつは海賊といっても、理不尽に船を襲って金品を奪う"パイレーツ"とは対照的に、瀬戸内水道の水先案内人としても活動した村上水軍。

彼らの足跡を追うことで、大好きな瀬戸内の理解を深めディープな魅力を見つけられるのではないか?……と期待に胸が膨らんでいます。

個性を明らかにし、守っていくためのヒント集

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日本遺産を学ぶことは「地域の個性=ストーリー」を過去へと掘り下げるというベクトルだけでなく、今日にいたるまで大切に守られてきた個性をどのように現代に位置付けていくか考える機会を与えてくれます。

よく話題にあがるのが、「文化」の継承について。お祭りやしきたりなど無形のものだけでなく、地域の原風景といった有形のものも含みます。

例えば、古代和歌の舞台として愛された和歌の浦(和歌山県和歌山市)や、造林発祥となった吉野山の風景(奈良県吉野町)、甲州ワインの原料となる葡萄畑が広がる風景(山梨県)などです。

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地域の文化・原風景がどのように形成され、そして守られてきたのか変遷を追うこと。

ともすると日本遺産とは、地域に脈絡と息づくアイデンティティを明らかにし、それを守り続けていくための"過去のヒント集"とも言い換えられるかもしれませんね。

旅に出る人のみならず、観光に携わる人材や事業者にとっても、非常に有意義なのではないでしょうか。

筆者イチオシの日本遺産【3選】

それでは、現在ある104のストーリーラインナップなかから、筆者イチオシの日本遺産をご紹介します。

浮世絵にも描かれた東海道「有松」

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東海道の情緒と伝統産業・有松絞りが織りなす町、名古屋市緑区の「有松」。

かつて農作地が少なかった土地に村をおこして産業振興を行ったことで、江戸時代の東海道を行き交う人々の中には知らない人はいないほど有名な一大工芸品・有松絞りが生み出されました。

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もちろん絞り染めを始めた人々の存在や、物流網として発達した東海道の繁栄が大きいのですが、鍵となったのは尾張藩による保護政策。官民の協力により、大きな産業が生み出された好事例といえます。

そして400年もの年月をかけて、職人による100以上の技法が生み出され、世界的にも有名な絞り染の産地としての地位を確立しました。今でも訪れると、印象的な有松絞りの暖簾が家々にかかり、往時の原風景をとどめています。

■詳細情報
・名称:有松の町並み
・住所:愛知県名古屋市緑区有松
・アクセス:名鉄名古屋線・有松駅から徒歩すぐ
・営業時間:24時間

若狭と京都をつないだ「鯖街道」

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古代から御食国(みけつくに)として塩や海産物など豊富な食材を運び、京都の食文化を支えてきた地・若狭。その軌跡は、若狭から京都まで続く「鯖街道(さばかいどう)」に見ることができます。

象徴的なスポットが「熊川宿」です。若狭湾から続く北川に沿って発生した集落は、馬や船が荷を運び込める荷次場として発展を遂げました。今でもその繁栄を物語るように、見応えある歴史的街並みが残っています。

■詳細情報
・名称:若狭熊川宿
・住所:福井県三方上中郡若狭町熊川
・アクセス:小浜市街から車約25分、京都市街から車約1時間10分
・営業時間:24時間

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また鯖街道とは、現在の国道367号線だけではありません。いくつか支流もあり、2020年に全面舗装化された「おにゅう峠」もイチオシスポットです。若狭から京都へいたる最短経路では、美しい山並みと雲海の風景に出会うことができますよ。

■詳細情報
・名称:おにゅう峠
・住所:滋賀県高島市朽木小入谷
・アクセス:小浜市街から車約40分、京都市街から車約1時間30分
・営業時間:冬季閉鎖あり
・オススメの時期:秋(10月下旬〜11月上旬)

国造林発祥の地「吉野」

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奈良県の吉野といえば「吉野杉」が有名ですが、これは人工の風景だということはご存知でしょうか?

もともと吉野は豊かな森林資源を有した地域でした。しかし戦国時代、畿内に城郭や寺社の建築が増えるようになると、天然林が減少してしまいます。

そこで木材需要に応えながら天然林を守るために、植林が始められました。修験道の信仰が根づく、「吉野山」の歴史や自然景観に配慮しつつ、人工林を広げて行われていったのが特徴です。

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山上には「金峯山寺」をはじめとして神仏がめぐる原生の吉野の世界があります。

山麓には林業に代表される諸産業を通じて、人々の活気や生活風景も。まさに人と自然が寄り添って生きてきた共同体の姿を垣間見ることができます。

■詳細情報
・名称:吉野山
・住所:奈良県吉野郡吉野町
・アクセス:吉野ロープウェイ・吉野山駅から徒歩すぐ
・オススメの時期:春、夏

日本遺産検定を取得して、新たな発見の旅へ

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以上、日本遺産を学ぶ魅力と、筆者イチオシの日本遺産を3つをご紹介いたしました。

日本遺産については、じつは2023年7月から「日本遺産検定」がスタートしています。地域の歴史や文化が育んだ独自のストーリーを学びつつ、それを広く普及するために作られたもので、合格者には「日本遺産ソムリエ」の称号が与えられます。

古くから日本に根付いた多様な個性への理解を深め、旅の楽しみに生かすのが日本遺産を学ぶ醍醐味。興味がある方は本腰を入れて勉強する機会を作ってみてはいかがでしょうか。

All photos by Yuhei Tonosho

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