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「レシピを見ずに料理できる」は【料理上手】の証?

  • 2024.6.14
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「メシマズ」とは?

「作るメシがマズイ」の意。ネットの世界では「味が極端にマズイ」「見た目も味もひどい」など、激しいものを指すことが多いですが、この連載では「料理歴はそこそこあるのに味が微妙・たまに成功するけれど、だいたいおいしくない」といった意味で使用しています。

【登場人物】

教えてくれるのは……

料理研究家

小田真規子さん

著書やテレビ出演多数! 長年第一線で活躍しているプロ中のプロ。料理初心者にも寄り添ってくれる、手取り足取りなレシピに定評あり。

教わるのは……

エディター

オギ

料理歴は大学時代から一応10年以上の独身アラサーエディター。健康や美容に興味はあるが、基本ズボラ。

マンガで解説「料理上手の頭の中」

「レシピを見ずに料理できる」は【料理上手】の証?
「レシピを見ずに料理できる」は【料理上手】の証?

「料理上手=レシピを見ない」は正しいの?

オギ

どうも自分の中に、料理上手な人=レシピを見ないというイメージがありまして。レシピを見ずにいろんな料理がチャチャッと作れるようになるのが憧れなんです!


小田先生

そうなの!?


オギ

調味料の組み合わせがあらかじめインプットされていて、味見で思い通りに味を調整できる料理上手な人は、やっぱりレシピを見ずに料理するんですよね?


小田先生

それは「人による」と思います。レシピを見ないで上手に作れる人はいますからね。一つ言えることは、「料理は体験」ということ。料理上手な人のベースの一つになっているのは、両親や祖父母など、生活を共にしている人が料理しているところを見てきた、手伝ったりした、という体験だと思うんです。そういう体験があるからこそ、「こんなやり方だったはず」「こういう味だったな」と想像が及ぶようになります。


オギ

なるほど……。


小田先生

ピアノでも、初めから楽譜を見ずに弾ける人がいたら、私はすごいと思うんです。でも、子どもの頃にピアノを習っていたり、楽器がその家にあったり、身近で誰かが弾いていたりする体験を持つ人なら、「環境や経験があるからできるのでは」と思うはずです。料理もそれと同じですね。


オギ

料理をする母を見て育ったはずなのに、その過程はスルーして、できあがった成果だけ「おいしい!」と享受していました……。どうやら、舌だけ肥えて料理スキルは微妙という、チグハグな状態に仕上がってしまったようです。
ちなみに先生は、やっぱりレシピを見ないんでしょうか?


小田先生

私自身も、まったく見ないわけではありませんよ。確認のために見ることもありますし、そもそも年齢を重ねると忘れることも増えるので(笑)。ただ、レシピを考える側の料理研究家としては、自分が忘れるような手順や配合じゃダメだな、もっとシンプルな手順はないかと常に模索しています。


オギ

プロはそこまで考え抜いてレシピを作っているんですね! レシピ通りに作れば間違いないはずなのに、なぜか「レシピを見る=料理が自分のものになってない」と思ってしまうんです……。


小田先生

もしかして、「レシピを見る=カンニング」と思っていませんか?


オギ

……図星です。調味料の組み合わせや、味のさじ加減が、あらかじめ頭や舌にインプットされていて、凝った料理もパパっと手際よくできちゃいます、というテイにしたい!という願望があります(笑)。


小田先生

気持ちはわかりますが、体験の積み重ねがないまま、いきなりレシピを見ずに料理をするのはやっぱり無理があるんです。


オギ

ですよね……。


小田先生

でも、たとえ体験の積み重ねがなかったとしても、何歳からでも料理のスキルを上げることはできます。


オギ

その方法、知りたいです!


小田先生

まずはレシピ通りに作ってみること、それに尽きます。レシピには、料理をおいしく作るための成功・失敗の体験から導き出されたノウハウやコツ、工夫が詰まっています。手軽に体験を積み重ねることができる便利なもの、それがレシピなんです!


料理のスキルを上げるには“お手本”選びがかなり重要

オギ

ただ、今って肉じゃが一つにしても、いろんなレシピがあって、一体どれを参考にすればいいのかよくわからない……というところもあります。


小田先生

自分のベースとなる料理体験を着実に積み重ねていくには、お手本選びがとても重要です。大切なのは、参考にするお手本をコロコロ変えないこと。あるときは料理のサイト、あるときはインスタグラマー、あるときは時短料理が得意な人……とその時々で参考にするものを変えてしまうと、「何が正解か」「誰の言うことを軸にすべきか」がブレてしまいます。


オギ

身に覚えがありすぎます……。


小田先生

人によって「おいしい料理」の定義はいろいろですし、味の好みや作り方も異なります。ある人のレシピや考え方がいいなと思ったら、その人の料理をとことん深掘りして、「こうすればおいしく作れる」という自分のベースを作っていくのがおすすめです。インスタグラムで見たおしゃれな料理に挑戦するのは、それからでも遅くありません。


オギ

つい先日も、「パラパラチャーハンを作るには、卵とごはんを先に混ぜておくといい」という情報をとりあえず真似してみたんです。でも、ただ真似するだけだと、「卵のタンパク質で米をコーティングすることでパラパラになる」という理論を知らないままなので、火通りが甘くてべちゃっとした仕上がりになる……みたいな失敗がよくあります。


小田先生

そういうフレーズだけを知って、いきなり料理に活かそうとしても、なかなか手先まで落とし込むことは難しいですね。体験としてはなかなか身につかないところがあります。


オギ

インスタグラムなどで何品も並んだ素敵な食卓を目にすると、「自分も!」と意気込むものの、成功したためしがなかったのは、「体験として身につかない」からだったんですね。納得です!


小田先生

最近はSNSの影響もあって、料理が“人に見せるもの”になっています。それは悪いことばかりではありませんが、「毎日違うものを作らないといけない」「何品も用意しないといけない」と、必要以上にカッコつけようとしてしまう弊害もあります。基本となる体験を積むことなく、あれもこれもと中途半端に手を出してしまうので、「何をやってもうまくいかない」となりがちなんです。


オギ

スキンケアやメイクだって「基本があってこその応用」が当たり前なのに、なぜか料理だとそれがスコーンと抜けてしまうんです。


小田先生

いきなり凝ったことをしようとする人が多いけれど、そのためには自主トレやウォーミングアップが必要でしょ? まずは、同じ方法で味噌汁や卵焼きを10回、20回繰り返し作ってみるだけで十分。それが「体験を積む」ことです。何度も同じ方法で作っていく間に、「味噌を少し増やしたほうが好みの味になるな」「この卵焼き、ネギを加えるとおいしいかも」と、自分がおいしいと思えるものが見えてきます。それだけで体験はどんどん積み上がっていくし、作れるバリエーションも増えていきます。


オギ

何事も基本が大事なんですね。


小田先生

そうです。特に面倒だと敬遠されがちな「分量を測る」というのも、きっちりやっておくといいですよ。それを続けていくと、「このくらいの分量だとこういう味」というのが、自ずとわかるようになっていきますから。


【今回の学び】基礎トレを積むことがメシマズ脱却への最短距離!

できない自分がわかっているから、いつも「失敗知らず」「鉄板レシピ」みたいな“必殺技”的なレシピに惹かれがちだったのですが、それがまったく体験の積み重ねになっていなかったことに、今回気づかされました。結局、料理上手になるには、メイクや仕事、勉強と同じで基礎トレあってこそなんですね。今日からさっそく、味噌汁作り20回に取り組もうと思います!

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撮影/国井美奈子 監修/小田真規子 イラスト/大窪史乃 取材・文/伊藤彩子

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