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「気が変わっただけさ」デヴィッド・ボウイの言葉に学ぶ、自由という気高さ。

  • 2024.6.14
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文筆家・村上香住子が胸をときめかせた言葉を綴る連載「La boîte à bijoux pour les mots précieuxーことばの宝石箱」。今回は"地球に落ちてきた"ロックスターにして俳優、デヴィッド・ボウイの言葉をご紹介。

世紀の伝説を生み出したミュージシャン、デヴィッド・ボウイは、おそらくサーフィンの名人のように、未来からやってくる新たな波を次々に乗り越えていき、どんな時も目まぐるしい自己改造を続けながら、群れから遠ざかっていき、独自の世界を築き上げていったのだと思う。

そんな彼には嘘をつくなんて発想はない。その瞬間に燃焼しているので、少し前にいったことと真逆を自分がいったとしても、それは次の瞬間の真実をいったまでだし、どこが悪い、という感じになるのだろう。グラムロック、ファンク、ディスコ、エレクトロ、カメレオンのように次々に音楽のスタイルを激変させていったボウイは、その度に衣装も目まぐるしく変化していき、「地球に落ちて来た男」の頃はアンドロジナスになり、日常的にも女性のドレスを着ていた時期もあったという。

頭の中にはとめどなく、いつだって新しい考えがひしめいていて、ひとつの案にいつまでも拘ってはいられないので、くるくると思考が変化して、転換していく。そういう沸騰状態だったのだろう。

普通なら、前日に自分はこういう意見をいったので、次の日も同じことをいわなければいけない、という考えに縛られてしまう。ところがあらゆることから解き放たれ、風のように自由に生きたボウイには、そんなことで自分を縛りつける気なんか、さらさらない。

無論政治家がそんな生き方をしたら、たちまち引き摺り下ろされるし、許されないけど、アートに携わる人たちなら、そういうスタイルをしても、それも天下のボウイなら、喝采を送りたいぐらい。

いまの世の中あらゆることがモラルに結び付けられる時代になってきているし、日常的にも一本筋を通さないとネット炎上が起きてしまう可能性もある。少し息苦しく、窮屈になってきている今だからか、

ボウイの生き方は眩しい。一瞬一瞬を自由に、一瞬一瞬を徹底的にクリエイティブに生きていたボウイは、現実離れしているし、やはり「地球に落ちてきた男」なのかもしれない。

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デヴィッド・ボウイ

1947年、ロンドン生まれ。1969年、映画『2001年宇宙の旅』をモチーフにしたアルバム『スペイス・オディティ』が大ヒット。72年にコンセプトアルバム『ジギー・スターダスト』を発表、グラムロック路線を確立する。76年には初の主演映画『地球に落ちてきた男』も公開、俳優としても活躍した。00年代後半、病気療養後は表舞台への露出が減るが、13年に新曲「ホエア・ウィー・ナウ?」で復帰。16年、最後のアルバム『ブラックスター(★)』発表から2日後、肝がんにより逝去。

photography:Iconicpix/Aflo

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