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6年前の夏、同期の恋を応援すべく、夏祭りの誘いを断った

  • 2024.6.14
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今年こそ浴衣が着たい。
コロナ禍で中止になっていた花火大会が、復活の兆しを見せている。
そんな中ここ数年の間、毎年浴衣を着たいと思っている。

◎ ◎

家の近くで開催される夏祭りは、歩いて行けるので一番浴衣を着やすい。
そう思って去年の祭りを思い出すと、浴衣を着ている人は同性異性問わず、必ず誰かと一緒にいた。
「お一人様浴衣で夏祭り」は難しそうだ。

この前ポツリと友達の前で今年は浴衣を着たいと漏らすと、彼氏と夏祭りに行くのかと聞かれた。今のところその予定はないので即座に否定したが、やはり浴衣は特別なもので、大抵は彼氏と夏祭りに行く時に着るものなのだと再認識した。

彼氏と行かなければならないとなると、急にハードルが高くなる。かと言ってお一人様を決行する勇気もない。なんて難しいのだろう。
そして、今の心地よい気候だから浴衣を着たいと思えるが、着るのにかなり力がいる浴衣を、酷暑の中着たいと思えるかが次なる課題な気がした。

◎ ◎

最後にいつ浴衣を着ただろう。
大学生のときに行った夏祭りは、人が多くて有名だったので浴衣は着なかった。
中高は夏休みは部活で忙しかったので、そうなると小学生にまで遡ってしまうかもしれない。
浴衣を着ることは若い人の特権かと思いたくなる。
確かに去年の夏祭りに行くと、若い高校生と見られるカップルの女の子が浴衣を着ていて可愛かった。
アラサーが着ても問題ないと信じている。

肝心の浴衣は持っている。
ちゃんと大人っぽい落ち着いた柄だ。
それなのに、1人暮らしの家に浴衣を持ってきて6年経ったが、まだ一度も着られていない。

しかし6年前には、あと少しで浴衣を着られそうだったのだ。

◎ ◎

私は6年前の夏、一番仲の良かった同期に、浴衣で祭りに行くことを誘われていた。
彼女と二人ではなく、一緒に花火に行くメンバーは、その同期のことが好きというか、気になっていると言っていた男性の同期と、3人で花火大会に一緒に行く流れになっていた。
さすがに二人の邪魔はできないと思った。

「花火には別の人と行くから、二人で行ってきなよ」私は笑顔でそう告げた。
そして、昨晩の飲み会で別のグループから誘われたこと、その返事を保留にしてたことをでっち上げて、付け加えた。

私が、一緒に行く人がいなくなってしまうことを心配してくれていたようで、引き攣った笑顔に気づかれることはなかった。

そのまま彼女は、約束の時間になると浴衣ではなく、ワンピースで出掛けていった。
後ろ姿のポニーテールが、ウキウキと揺れていた。
彼女が浴衣を着ていかなかったことが良かったのか、残念だったのかよく分からなかった。

私は結局、花火会場に一人で行く勇気はなく遠くから小さく見える花火を見た。
その後無事に2人が付き合ったことだけが救いだ。

◎ ◎

夏祭りと浴衣には苦い思い出が甦るので、できれば今年こそ良い思い出に上書きしたい。
ただし浴衣を着られる条件のハードルが高いので、夏休みにちょっとお高い旅館に泊まって、そこで 旅館にある浴衣を着ることで、目標達成ということにしてもいいかなと思い始めた。

パジャマではない帯を巻くタイプの着物がある旅館を予約することを考えると、ワクワクしてきた。

■高山葵衣のプロフィール
在宅勤務メインのアラサーOL。 お家時間と心を充実させるべく、ていねいな暮らしを目指している。 好きなものは北欧雑貨とからあげ。

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