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「洗濯物いつからそこに置いてある?」「どういうしつけしてんの?」モラハラ夫vsワンオペ妻の一触即発な毎日

  • 2024.6.13
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妻を貶める夫のクズっぷりが波紋を呼び、WEBサイト「ママの求人」での連載中に堀江貴文氏が「これはひどい」とTwitter(現:X)で言及するという伝説も残した『夫の扶養からぬけだしたい』(ゆむい/KADOKAWA)。この大ヒット作の魅力を、2018年の連載開始から6年が経過した今、改めて振り返ってみたいと思う。

主人公は、息子の世話と毎日の家事に追われる専業主婦のももこ。夫のつとむは、ももこの要領の悪さにイラつき心ない言葉をぶつけるという、モラハラな一面がある。

本作では、そんな夫から精神的にも金銭的にも自立するため「扶養からぬけられるぐらい収入を得よう」と奔走するももこの姿を描いてゆく。

ページをめくると目を引くのは、やはり夫のクズっぷりだ。「社会人失格」だの「今までどんな努力をしたの?」だのとのたまい、高圧的な態度でももこに接する。ここまではっきりと言葉にされなくとも、夫が家事に非協力的だったり、できていないことを粗探しされたりなど、肩身の狭い思いをしたことがある女性は多いのではないだろうか。

そういった意味でも本作は広く共感を呼ぶし、センセーショナルなセリフの数々には心をぞわっとさせられる。

しかしもうひとつ注目してほしいのは、出産を経たひとりの女性が働き、社会的信用を得ることがどれほど大変な道のりなのか、というプロセスを描いている部分だ。この一連の流れにこそ、本作の面白さが詰まっている。

『夫の扶養からぬけだしたい』が連載されていたのは2018年。副業禁止の規定が削除された、いわゆる副業解禁元年の年だ。隙間時間にお金を稼ごうよ! という文句が広がり、会社員という枠組みに縛られない新しいスタイルの稼ぎ方として在宅ワークが注目され始めた。

そのような風潮もあってなのか、翌年の2019年からはSNSを中心に専業主婦や育休中のママへ向けた「ママの在宅ワークブーム」が活発化したことを覚えている。そしてそのブームは、様々な理由から働くことを諦めていたママたちにとって希望の光となった。本作はまさに「新時代の働くママ」の奮闘を描いた先駆け的な存在だったといえる。

しかしそんな在宅ワークブームの傍らで、会社員じゃないというだけで冷ややかな目を向けられていた人も大勢いたはずだ。

マンガ家の経験があったももこが、在宅で絵の仕事を始めると決めたとき、夫のつとむは「母親なのに何夢見てんの?」と詰め寄った。1度筆を折ったももこを信頼できない気持ちがそうさせたのだろう。がんじがらめの会社員生活を続けていたつとむにとっては、一種の悔しさもあったのかもしれない。

そんなつとむに、ももこは絵の仕事を決めた真意をぶつける。

「子どもがいて 時間に融通がきかなくて 大した資格もなくて あなたの仕事の都合ですぐ辞めるかもしれない」

「そんな立場で 私が仕事を選り好みしていると思ってるの?」

選ばなければ仕事なんてあるのに、とはよくいうけれど、逆なのだ。手をかけなければ育たない幼子を抱えていると、そもそも選べる立場にないのである。

楽な道を選んでいると誤解され、苦い思いをしてきた世の女性たちの思いを代弁するかのようなももこの言葉に、少なくともわたしは胸がせいせいした思いだった。

物語の終盤、つとむは事故に遭い会社勤めを続けられるかどうかわからない瀬戸際へ追い詰められる。

生活、仕事、そして健康。その3点をバランスよく維持することがいかに難しいことなのか、本作を読むと実感させられる。我が家が目指す幸せの形ってどんなだろう? そんなことを考えながら、ぜひももこの奮闘を楽しんでいただきたい。

文=ネゴト/ あまみん

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