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ゆっきゅん「私に与えられたポエジーは、天井から」 詩人・小野絵里華と“ポエジー”を語る

  • 2024.6.13
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ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。今回から、詩人の小野絵里華さんとの対談を4回にわたってお届けします! 第1回目のテーマは「ポエジーは風景からも天井からもやってくる」です。

ポエジーは風景からも天井からもやってくる。

ゆっきゅん(以下、ゆ):小野さんのことを知ったのは昨年の秋。出会いは、ユーミンのコンサートを観に行った仙台…のブックオフなんです。そこの詩のコーナーで小野さんの詩集『エリカについて』を見つけました。「地球上の生活がぜんぶエリカで、エリカが詩だった」という伊藤比呂美さんの帯文が気になり、少し開いてすぐ買いました。以来、何冊も買って新刊を友人に配っていて(笑)。

小野絵里華(以下、エ):ありがとうございます、嬉しいです。

ゆ:それからいろいろ調べたんですけど情報が少なく、X上ではもはや伝説の詩人となっています。

エ:伝説!(笑) 恐縮です。

ゆ:小野さんに、詩を書き始めたきっかけを聞きたいです。

エ:詩って、読むのが先の人と、作るのが先の人がいると思うんですけど、私は完全に後者で。風景を見ていたら、詩が勝手にやってくるような子どもだったんです。いつも脳内で、言葉をころころ転がしていました。

ゆ:じゃあ、子どもの頃から。

エ:物心がつく前からだったので、まだそれを「詩」とは認識してはいなかったと思います。ただ、そこにはポエジーとしか呼べないような何かはありました。

ゆ:詩って、“書くぞ”と思って始まるものじゃないですよね。

エ:絵を描くのとも似ていて、まだそれが何かはわからないんだけど、どこかほわほわするような感覚があって。大学院に行き始めた頃からちゃんと意識して、詩を書き始めました。

ゆ:以前、小野さんが書かれた論考で“言葉よりも風景=「言葉<風景」”という話をされていたと思うんですけど、私もそうなんです。私は歌詞として、きれいなもの、面白いけどまだ歌われていないことなどを歌にしたいと思って表現していて。ただ言葉を褒められたときに、「いや違うんです、本当はこの風景自体が素敵で、私はそれにどうにか近づけるよう歌っているだけなんです」という意識なんですよね。すごいのは風景。

エ:まさに、そういう意識です。

ゆ:ちなみに、私にポエジーを降ろしてきたものは天井だったんです。ずっと家で天井を見ていて。

エ:天井って、空の比喩ではなくて? 本物の天井ですか…?

ゆ:はい。ずっと狭く散らかった部屋に住んでいて、部屋の中できれいな場所が天井しかなくて。ずっと天井を眺めている人がそれでも立ち上がる歌の歌詞を書いたのが始まりです。だから私に与えられたポエジーは、天井から。

エ:それ、いいですね!(笑)

おの・えりか 詩人。東京都出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2010年に『ユリイカ』(青土社)の新人賞を受賞。’22年に第一詩集『エリカについて』(左右社)を刊行。’23年に同詩集で第73回H氏賞を受賞。

ゆっきゅん 1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun

※『anan』2024年6月12号より。写真・幸喜ひかり 文・綿貫大介

(by anan編集部)

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