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誰のためのヒーロー? 派手な姿で敵を倒すだけの話に違和感/新装版 わたしが正義について語るなら②

  • 2024.6.13
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『新装版 わたしが正義について語るなら』(やなせたかし/ポプラ社)第2回【全5回】正義とは何か、正義の味方とはどのような人なのか――。『アンパンマン』の作者・やなせたかしさんが自身の体験談を交えながら、正義への思いを綴った1冊です。戦争や自然災害、物価高…混迷の時代に生きる人々を勇気づける、やなせ流の人生哲学を『新装版 わたしが正義について語るなら』の中から抜粋してお届けします!

ダ・ヴィンチWeb
『新装版 わたしが正義について語るなら』(やなせたかし/ポプラ社)

食べ物がないのは耐えられない

ぼくが飢えを実感したのは兵隊として戦争に行った時でした。兵隊は大変なんですよ。泥の中を這いずり回らなくてはいけませんし、毎日訓練もします。ぼくらは野戦銃砲隊という大砲の部隊で、大砲に一番大きな弾丸を込めて持って歩く。大砲は重いので、大変な重労働です。ヘトヘトになるんですね。

しかし若いから、重労働は一晩寝ればなんともない。それ以外にも辛い訓練があって毎日殴られるけれど、それにも耐えられる。

耐えられないのは何かというと、食べるものがないということだったのですね。それ以外のことは、けがをしても薬をつけていれば治るし、たいていのことは我慢できるのだけれど、ひもじいということには耐えられません。なんでもかんでも食べたくなっちゃう。一番辛いのは食べられない、餓えるということだったんです。

追いつめられれば人間でもなんでも食べたくなる。だから漂流した人が餓えた時に死んだ人を食べるという話を聞いても、納得できるんだよね。少しずつ削って食べたそうですけれど。自分が餓える体験をしてみて、餓えるのがいかに辛いかよく分かりました。

日本に帰ってみても、その当時の昭和二十年代は本当に食べるものがなかった。毎日食べていくのが大変な時代でした。戦争が終わって、アメリカのスーパーマンやスパイダーマン、いろんなヒーローがいっぱい出てきました。正義の味方だといって、どんどん人気が出た。ところが彼らは、餓えた人を助けに行くとか、そういうことは全然やらないのですね。

スーパーマンにもスパイダーマンにも敵対する悪い奴がいて、それをやっつけると正義が勝ったということになる。例えばウルトラマンは怪獣をやっつけます。怪獣は地球に害を与える奴だから、怪獣をやっつけると正義が勝ったということになる。

それからスーパーマンはやたら派手派手しい服を着てニューヨークを飛び回っています。その姿が変に思えたんだよね。餓えた子どもには何もやらないで自分のことだけアピールするコマーシャルみたい。

現在も、バングラデシュやエチオピア、ブラジル、いろいろな国にストリートチルドレンや飢え死にしている子どもがたくさんいます。どこかの国で戦争が起きると、戦争している国同士は両方正義だ、悪い奴をやっつけると正義が勝ったのだと言って戦っているけれど、子どもたちのことは見てやらない。そうして子どもたちは次々に死んでいますね。

だからぼくが何かをやるとしたら、まず餓えた子どもを助けることが大事だと思った。それが戦争を体験して感じた一番大きなことでした。

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