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『アンナチュラル』や『ラストマイル』を制作した"黄金チーム"にしか作れない!壮大な大作"新日曜劇場"

  • 2024.10.31

10月20日から放送が開始した日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』。ドラマ『アンナチュラル』から映画『ラストマイル』まで続いた秀作を手がけた脚本家・野木亜紀子、監督・塚原あゆ子、プロデューサー・新井順子の黄金チームが初めて日曜劇場を手がける。このチームの強みがどう生かされる作品になるのか。

第1話のストーリー、舞台となる端島とは

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日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第1話より (C)TBS

『海に眠るダイヤモンド』は、1955年の長崎・端島と2018年の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情の物語。神木隆之介が、端島の炭鉱の職員として働く鉄平と現代の東京でホストとして働く玲央を一人二役で演じる。第1話の物語は、玲央がいづみ(宮本信子)と名乗る謎の婦人に出会うところから始まった。玲央に出会い頭に結婚を申し込んだいづみは、玲央を長崎へと連れていく。軍艦島(端島)見学ツアーに参加し、海から島を見る二人。いづみは、廃墟として観光資源になった端島を眺め、泣き崩れる。

廃墟となった建物に重なる映像とともに、物語は1955年の端島へ。長崎大学を卒業した鉄平は、父・一平(國村隼)の反対を押し切り、端島で働くことを決めていた。鉄平は久しぶりの端島で、幼馴染の朝子(杉咲花)、賢将(清水尋也)、百合子(土屋太鳳)と変わらぬやりとりを交わす。そんな時、謎の歌手・リナ(池田エライザ)が端島に訪れる。ひょんなことから知り合った鉄平たちとリナ。彼女にぶつけられた「たかが端島」という言葉に、怒りを覚えた鉄平たちは、リナが端島で暮らし続ける術を模索し行動。彼女は、端島に居場所を見つけるのだった。

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日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第1話より (C)TBS

物語の舞台となっている端島は軍艦島とも呼ばれ、現在は長崎県を代表する観光地の一つとなっている。日本初の鉄筋コンクリートアパートが所狭しと立ち並ぶ光景は、高度経済成長期のノスタルジーを感じさせる。端島は、良質な石炭が採れることから石炭の島として、多い時には炭鉱夫とその家族など5000人以上の島民が暮らした島。

作中で描かれている通り、日本のエネルギーを支える石炭が採れる端島、そんな場所で炭鉱夫として働いている家族に誇りを持っている人が大勢いた。そんな端島は、エネルギー源の主体が石炭から石油に変わっていったことで、地中に石炭を残したまま1974年に閉山。それに伴い、住民たちも端島を出て行った。故郷の誇り高き産業が、国から求められなくなり、しまいには暮らし働く人もいなくなり無人島になったのだ。

端島で生まれ育ち、暮らした人々にとってはノスタルジーなんて言葉では片付けられないほど、切なくやるせない気持ちがあるだろう。第1話のいづみの涙には、そんな思いが込められているのだ。

黄金チームの変わらぬ魅力

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日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第1話より (C)TBS

これまでに野木、塚原、新井の黄金チームが手がけた3作品は、社会性を感じさせるクライムサスペンスだった。法医解剖医や機動捜査隊が活躍し、事件を解決に導いていく爽快感がある一方で、そこに描かれていたのは、自身の仕事に誇りを持ち、物事に懸命に向き合う人々だ。黄金チームが作る物語には、仕事人に対する真摯な目線がある。

この魅力は、『海に眠るダイヤモンド』でも変わらない。長崎・端島パートでは、炭鉱業を生業とする端島そのものに対する各人が持っている愛情がひしひしと伝わってくる。健康被害も多く、地位を軽んじられがちだった炭鉱夫という職業を丁寧に描くという意識が感じられる。現代パートの玲央の職業も営業形態に問題があるホストだ。第1話では、売掛金(客側のツケ払い)の問題を取り上げ、玲央が借金の危機に瀕する場面が描かれた。過去と現代にまたがり、職業の良い面と悪い面を描いていく姿勢が見てとれる。

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日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第1話より (C)TBS

また注目したいのは、ヒューマンドラマでありながらミステリアスなパートもしっかり存在しているということ。現代パートで端島を眺めて涙したいづみは、玲央の姿に鉄平を見出していることは間違いない。果たして、いづみは過去パートの誰の関係者なのか。第1話からそのヒントとなるようなセリフや仕草が散りばめられており、これがストーリー全体を引っ張っていく謎になるだろう。壮大なヒューマンドラマでありながら、先が気になる構造を作り上げているのは、さすがクライムサスペンスが得意なチームと言いたくなる

このチームはこれまで過去と現在を行き来したり、特定の地域や時代を舞台とする物語を手がけたことはない。しかし、第1話を見てみると、一人二役の神木や現代にも通ずる仕事や地域に対する偏見を、起点にシームレスに過去と現代を描いていた。その切り替わりに、違和感や見にくさはなく、むしろ真新しさとして受け取れた。『Nのために』や『最愛』などを手がけた塚原の手腕ということができる。また、これまでの作品と同じように緻密な取材によって、特定の地域や時代を舞台にした濃密な人間ドラマを描くことを可能にしている。野木、塚原、新井がそれぞれに培った能力が、思う存分発揮されているのだ。

『海に眠るダイヤモンド』は、黄金チームがこれまで培った経験を生かした新たな挑戦だ。黄金チームにしか作れない壮大なヒューマンラブエンターテインメントを通して、端島の歴史、炭鉱業の発展と衰退、そこに生きる人々を描くことが、現代を生きる私たちに何を語りかけるのかに注目したい。

TBS系 日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』 毎週日曜よる9時



ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202