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秋ドラマ、思わぬ作品が「目が離せない」と話題に! 視聴者を釘付けにする、驚きの“制作手法”

  • 2024.10.22
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3000万(1) 10月5日放送(C)NHK

10月5日(土)から放送が開始したNHKドラマ『3000万』が、秋ドラマのダークホースとして注目を集めている。このドラマは、NHKが発足したWDR(Writers' Development Room)プロジェクトから生まれており、特徴的な脚本制作を行っていることから、放送前から業界内では注目を集めていた。その期待通り、『3000万』は、クライムサスペンスとしてのスリリングな展開、生活の中にあるリアルな貧困と犯罪グループなどの社会性のあるテーマ、リアリティのある人物描写と抜け目のない作品になっている。

息つく暇もない展開と細かい人物描写

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3000万(1) 10月5日放送(C)NHK

『3000万』は、ある夫婦が犯罪グループが運んでいたお金を、偶然手にしてしまうところから始まる。佐々木祐子(安達祐実)と義光(青木崇高)は、家のローン、ピアノが得意な息子・純一(味元耀大)の教育費とお金の悩みがつきない。純一のピアノの購入を躊躇ったり、ちょっといいロールケーキを前に少し安いプリンを選んだりと、佐々木家の生活描写からは「困窮しているわけではないけれど、あと少しだけお金があれば」という現代人が直面するリアルな貧困が感じられる。

犯罪グループの一員であるソラ(森田想)を車で轢いてしまった事故をきっかけに、手にした3000万円。祐子と義光は、お金を警察に返さねばと思いながらも、一度持ち帰ったことがバレたらどうなる? 事故に遭ったソラはそのまま死ぬかもしれない、だったらこのままにしておいてもいいのではないか? と葛藤する。第1話では、祐子と義光の自身を正当化する弱さと道徳観の間で揺れる心情が、丁寧に描かれていた。

第2話では、金を奪って逃げたソラを追いかける犯罪グループの蒲池(加治将樹)と長田(萩原護)がリーダーである坂本(木原勝利)に脅されて、ソラと佐々木家に迫るというスリリングな展開も描かれた。3000万を前にした夫婦の葛藤、警察、犯罪グループとの攻防に、視聴者は目が離せなくなっていく。

WDRプロジェクトとは?

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3000万(1) 10月5日放送(C)NHK

『3000万』の企画が生まれたWDRプロジェクトは、2022年6月にプロだけでなく脚本家を目指す一般の方も対象とした募集が行われた。応募総数2025人の中から10名が選ばれ、7ヶ月の間、プロデューサーによる座学、海外ドラマの脚本の構造やキャラクターの作り方、展開の仕方を学んでいった。7ヶ月間で、それぞれのメンバーが連続ドラマの企画書と1話の脚本を2本ずつ制作し、互いの企画や脚本についてフィードバックしあいながら、最終的に19本の企画と連続ドラマの1話を完成させた。その後、制作された企画のなかから『3000万』のドラマ化が決定し、WDRプロジェクトメンバーから4人の脚本家が再召集されて制作が進められた。

脚本は、メインライターとサブライターの2〜3人体制で書かれていることは珍しくない。また、最近は『VIVANT』や『アンチヒーロー』など、複数人体制で脚本が執筆されることも増えてきた。これまでの体制に比べて、WDRプロジェクトが特徴的なのは10人に対して同じ技術を習得させたうえで、企画と第1話の脚本を書いてもらい、7ヶ月間かけてそれぞれの個性と強みを磨いていったことだろう。『3000万』が、ストーリー展開、人物描写の細かさ、セリフのリアリティなど細部まで高い技術を感じるのは、脚本家一人ひとりの強みが生かされている証拠だろう。

SNSでは、「めちゃくちゃ面白い」「目が離せない」「続きが気になる」と好評の声が集まっており、WDRプロジェクトの制作手法が評価されていることが伺える。『3000万』の存在が、ドラマ制作全体をアップデートするきっかけになるかもしれない。

NHK『3000万』
NHKプラスで見逃し配信中


ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202

参考:土曜ドラマ「3000万」ができるまで~脚本開発「WDRプロジェクト」とは?~