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好みによって評価が分かれる朝ドラ『おむすび』『虎に翼』との違いはテンポ感とヒロイン像?

  • 2024.10.15

橋本環奈が主演を務める朝ドラ『おむすび』。放送開始から早くも2週間が経過し、SNS上では前作『虎に翼』と比較したうえで、ネガティブな声を向けるものもあれば、好意的な意見を向ける声も見られる。ドラマなんてそれぞれの好みによって、評価が変わると言ってしまえばそれまでだが、なぜここまで意見が分かれるのかについて考えてみたい。

情報量とテンポ感の違い

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『おむすび』第2週(C)NHK

まず、『虎に翼』と『おむすび』で大きく異なるのが、物語上での時間経過の速さだ。昭和初期から主人公・寅子(伊藤沙莉)の死後である平成まで描いた『虎に翼』は、テロップのみで数年の時間を経過させることがたびたびあった。10代だった寅子が60代になるまで描く物語であったため当たり前ではあるが、作中の時間経過がとても速く、それがドラマのテンポの良さに繋がっていた。

そしてこのテンポの良さがあることで、1話1話の情報量がとても多く、1週間のストーリーで何を示すのかが明確だった。ドラマのなかに情報量が多いということは、視聴者側が処理して理解する情報もとても多いということ。『虎に翼』はそれが魅力でもあり、弱点でもあった。

一方、『おむすび』は、物語が始まった段階で2004年(平成16年)と、今から20年前が舞台。朝ドラで、10年単位の未来を詳しく描いていくことは考えにくいため、ドラマで描いていくのは、20年間ほどと考えられるだろう。『虎に翼』と比べれば描く年数が大幅に短い。必然的に物語のテンポは遅くなり、数年単位で時間を飛ばすこともなく、主人公・米田結(橋本環奈)の人生に伴走するような物語になっていきそうだ。『おむすび』と同じく、平成を描いた朝ドラ『おかえりモネ』では、過去の回想や主人公以外の登場人物のドラマに重点を置く週もあった。『おむすび』もそういった構成になるかもしれない。

また、結の高校時代を詳細に描いていることもあり、『虎に翼』に比べれば1話ごとの情報量が少ない。結や博多ギャル連合のメンバー、結の家族がどんな人物で何を抱えているのかにじっくりと想いを馳せることができるが、ちょっと物足りないと思う人もいるだろう。

真逆とも言える寅子と結

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『おむすび』第2週(C)NHK

もう一つ大きな違いと言えるのは、寅子と結のヒロイン像だ。社会の理不尽に違和感を抱き怒り続けていた寅子は、言いたいことを言い、自分の望む未来へひたすら歩みを進める猪突猛進タイプ。そのなかで寅子も選択を間違え、傷つき、傷つけられて法律家として、母として成長していった。

それに比べて、結はなかなか自分から行動しようとしない。誰かに誘われたり、背中を押されたり、引っ張られたりして行動を起こす受け身なタイプだ。寅子に比べて、物語を推進していくようなヒロインではない。基本的に受け身な結が、人助けをするときだけ自分から行動してしまうのが彼女の長所であり、物語を前に進めていく要素ということができるだろう。

どちらのヒロインが好きかというのは、個人の好みとしか言えない。寅子のように怒り続けているヒロインは疲れるという人には、結のナチュラルで現代っ子風のヒロイン像がハマるだろうし、寅子のような熱意溢れるヒロインが好きな人には、結の受け身な態度が物足りなく見えるだろう。

物語のテンポ感とヒロイン像の違いを踏まえれば、『虎に翼』と『おむすび』はほぼ真逆の作風といってもいいかもしれない。SNS上では『おむすび』に対して、「物足りない」「王道展開、王道ヒロインすぎる」という声もあれば、「小さな心の動きが丁寧」「心地よく見られる」という声も。しかし、このバリエーションの豊かさも、朝ドラの魅力なのだ。

朝ドラは半年間、毎朝15分と、他のドラマに比べて長い付き合いになる枠。だからこそ、どんな人物、どんな物語と、朝を共にしたいかは人によって大きく異なるのだろう。公式のドラマガイドでは、ギャルが栄養士を目指す成長物語だけではなく、阪神淡路大震災を筆頭に災害による人の心の動きや傷についても触れていく物語になることが、すでに発表されている。結が出会いと別れのなかで、どんな変化と成長を見せるのかを楽しみに、半年間見守っていきたい。

NHK 連続テレビ小説『おむすび』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中



ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202