キリンの首は高いところにある葉を食べるために長くなった、と考えている方は多いのではないでしょうか。実はそれ、違うんです。第1章「生き残った者だけが残る!適応と自然選択」から、キリンの進化について紹介します。
【本記事は石川幹人 監修『進歩した文明と進化しない心 進化心理学で読み解く、私たちの心の本性』(カンゼン)より一部抜粋して掲載しています。】
キリンの首が長い理由、それこそが”進化”の証拠
進化心理学やその基礎となる生物進化論における「進化」とは、非常に長い時間をかけて生物の姿や性質が環境に適合しながら変化していく、その過程全般を指します。
たとえば、みなさんご存知のキリンは大型草食動物のなかでも特に長い首を持つことで知られています。この特徴的な長い首こそキリンが独自の進化を続けてきた証なのです。
首の長いキリンは生き残り、首の短いキリンは死んでしまった!
今でこそ、「キリンは首の長い動物」というのが当たり前の認識になっていますが、もともとはキリンと共通の祖先を持つオカピのような首の短い動物でした。しかし、首のやや長いキリンが出現し、そのほうがサバンナという環境には適応していました。
その結果、首のやや長いキリンは子孫を残すことができ、その子孫が生き延びてまた子供を残し・・・・・・というサイクルを繰り返し、自然と増えていったのです。これを進化生物学では「自然選択」と言います。
首の長いキリンが生まれた理由それが突然変異!
人間の場合、親子や兄弟で顔立ちがそっくりだったり、背が高い、体毛が濃いといった身体的な特徴が似ていたりというのはよく耳にする話ですね。しかし、ごく稀に両親には見られない、ちょっと変わった性質や特徴を持った子どもが生まれてくることもあります。これがいわゆる「突然変異」です。
このわずかな変化が環境にうまくハマることでほかの個体より有利になれば生存率は上がり、より多くの子孫を残すことが可能となります。さらにその子孫たちが世代を重ね、変化が特性として受け継がれ、強調されていくことで、いつしかそれが種のスタンダードな形質となっていくのです。
生物の"進化"と個体の"進歩"どこが違う?
私たちの日常を少し注意深く見てみると、そこかしこに「進化」という言葉があふれています。
しかしこれらは生物進化論が意味するところの進化とは別物。
一個体の能力向上や形質の変化だけでは「進化」と呼ぶことはできません。
その個体と子孫も含めた種全体が持つ共通かつ普遍的な状態になることが「進化」なのです。ある集団のなかで特定の個人・個体だけが強くなったり、優れた技術を手に入れたとしても、それは個の「進歩」や「成長」であって、集団としての「進化」とは違うものです。
進化は「自然選択」のよって成り立つ!
元々、キリンがオカピほどの首の長さだったというのは驚きですね。首を伸ばそうとしたのではなく、突然変異で首が長く生まれた個体が生き残り、それが種全体の普遍的な状態になっていったのでした。キリンに限らず、「自然選択」によって形を変えながら進化してきた生物は多いのかもしれません…!
石川幹人 監修『進歩した文明と進化しない心 進化心理学で読み解く、私たちの心の本性』(カンゼン)より