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「母の介護をしてるのは私だけ」遺産は兄弟と同額!?多めにもらう方法を【プロ解説】

  • 2024.7.29
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

要介護の親を抱えると、家族内で「誰が介護をするのか」が大きな課題になります。子どもの一人が負担したとして、親の死後、当人に労いとして遺産が多く配分される可能性はあるのでしょうか。

親の死後、残された子どもたちの間での遺産配分について、行政書士さんにお伺いしました。

兄弟で介護したのは一人なのに遺産は均等?

私の家は3人きょうだい。兄、私、弟です。
父が亡くなった後、母も体調を崩し、介護が必要となりました。兄弟全員、就職後に地元を出て正社員として働いていたのですが、きょうだいで話し合った結果、なかば強引に私が介護担当にさせられました。

母には感謝しているため、正社員だった仕事も辞めて田舎に帰り、母の介護をしています。しかし、兄も弟もまったく家に帰ってこず、それどころか母の介護にかかるお金もいっさい出そうとしません。

そんななか、兄から急に「母の遺産はどのくらいになるか」という連絡が来ました。
母は要介護とはいえ、まだ亡くなっていないというのに。
兄は「当然三等分になるのだから、早めに試算してほしい」と言ってきて、驚きました。

介護のために仕事を辞めて地元に戻り母の面倒を見ている私と、家にも帰ってこず、母にも連絡をせず、介護のお金も出さない兄や弟が、遺産が同額なのでしょうか?

こちらのケースについて、行政書士である奥村行政書士事務所の奥村美妃子さんにお話をお伺いしました。

---介護を1人で担っているこの投稿者さんが遺産を多めにもらうというのは不可能なのでしょうか?

「なかば強引に介護の担当にさせられたとのこと、ご相談者様の大変さが伝わってきます。残念ながら『介護をした人には多めに遺産をあげなさい』というルールがないため、何もしなければ介護をした、しない、にかかわらず、相続の権利は1/3ずつです」

---そうなのですね。釈然としませんが、何か方法はないのでしょうか…?

「遺産を多めにもらうためには、お母様に遺産の分け方を具体的に書いた遺言書を作成してもらうことをおすすめします。介護が必要なお母様に対して『遺言を書いて』というのは気が引けると思いますが、後々のトラブルを防ぐためにも必要です。

また、お母様が亡くなられた場合、民法904条の2では、『被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした』場合には、寄与分を主張できる可能性があります。

しかし寄与分については、まず相続人同士での話合いが必要となり、話合いがつかなければ家庭裁判所が決めることになりますが、寄与分は証拠資料の収集も必要となり、認められにくいとされています」

---投稿者さんが介護をしていた証拠はあっても、ほかの兄弟がしていなかった証拠を集めるのは難しいかもしれませんね…。母親自身の遺言で、投稿者さんに多く遺産を残すと書き残して亡くなったとします。そして死後に兄と弟がそれを不服として裁判を起こしたとしたら、遺産が等分になってしまう可能性もあるのでしょうか?

「もし裁判になった場合、遺産が等分になる可能性は低いと思われます。民法1042条では、兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分(いりゅうぶん)と呼ばれる最低限度の遺産取得分が認められていますので、お兄さんと弟さんが『自分たちの遺留分が侵害されている』と主張し、『遺留分の減殺請求』をする可能性はあります。

遺留分は本来の相続財産の1/2になり、仮に遺留分の算定基礎となる財産が3,000万円とした場合、本来の相続財産3,000万円×1/3=1,000となり、遺留分はその1/2ですから、お兄さんと弟さんが請求できる金額はそれぞれ、1,000万円×1/2=500万円になります」

---もし、この投稿者さんほどは介護に携わっていなくて、たとえば「きょうだいのうち1人だけ母親と同居し、仕事をしながら、病院に付き添い、日々の食事の支度や風呂の介助をおこなっていた(仕事を辞めて昼夜つきっきり等ではない)」などの場合だと、きょうだい間での相続配分はどうなりますか?

「最初にも少し申し上げましたが『介護をした人に多めに遺産をあげなさい』というルールがないため、相続の権利は基本的に1/3ずつになります。

過去の例ですが、同居して入浴の介助などを行ってきたものの、1日中付き添いが必要な状態ではなく、自分でトイレに行ったり、食事をとることができたため『同居の直系親族としての通常期待される扶養義務の範囲とみなされ、寄与分を認められなかった事例もあります。(静岡家庭裁判所沼津支部平成21年3月27日審判)

加えて民法877条では『直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある』とされているため、仕事をしながらの病院への付き添い、食事や風呂の介助などは、程度の差はあるものの、親子であれば『当然に期待されるもの』とみなされる可能性が高いでしょう」

---遺言書など法的な書類を残しておくことの大切さがわかりました。ありがとうございました!

遺言書が遺産トラブル防止に

介護にかかる心身の負担を考えると、遺産は多めにもらいたいと思うところが、実際には厳しいようです。

身内で金銭トラブルが発生しないよう、生前にきちんと話し合って遺産相続配分を決め、遺言書を残すことが大切といえそうですね。



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