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弟ばかり贔屓する親… “不平等な遺言書”に従わなきゃダメ?対処法をプロが解説

  • 2024.7.27
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“まさかの正体”

親がほかの兄弟姉妹ばかりを贔屓して困った、という方は多いようです。「兄だけいつも部活動をさせてもらえるのに、私はお金がないという理由で許してもらえなかった」「妹のことはまったく叱らないのに僕だけいつも叱られる」という声もよく耳にします。

お菓子の量など些細なことなら我慢できても、金銭面の援助や遺産相続についてとなると、ただ黙って我慢しているわけにはいきません。

不平等な遺言書に記載された遺産分配に従うべきかについて、行政書士さんにお話を伺いました。

不公平な遺言に従わなきゃだめ?

父が亡くなったときの話です。数年前に母はすでに他界していたので、弟と、姉である私で遺産を相続することに
父は遺言書を残していたのですが、その内容が、あまりにも弟の取り分が多すぎるのです。
古い気質のためか、「遺産は男に残すもの」と思っていたようです。まったく名家などではなく、代々受け継ぐものもないのですが…。

小さい頃から、私には「国公立大学以外への進学は許さない」と言っていたのに、弟には何も言わずに私立大学に通わせたり、
就職後、私も弟も実家を出たのですが、弟にだけ両親は仕送りをしていたりと、ほかの親戚からたしなめられたことがあるほど、弟ばかり優遇していました。

弟は遺言書の通りに分配すべきと言って譲りません。
親の病院の送迎や付き添い、生活の支援や金銭的フォローも私のほうがしてきたのに、まさか、という思いです。
遺言があるからといって、弟が多額の遺産を相続することを、私は止められないのでしょうか?

こちらのケースについて、行政書士である奥村行政書士事務所の奥村美妃子さんにお話をお伺いしました。

---明らかに相続の分配に偏りのある遺言書だった場合でも、遺言書が優先されるのでしょうか?

遺言書がある場合、遺言が優先されます
民法964条では、『遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる』と決められており、遺産相続では『故人の意思を重んじる』ことを原則にしているため、遺言者(亡くなった方)の意思」が最優先されることになります。

そのため明らかに相続の分配に偏りがある場合でも、遺言書が優先されるのですが、不公平な遺言でも100%従わなくてはいけない、という意味ではありません」

---そうなのですね。具体的にはどのような例でしょうか?

「『遺言そのものが有効か』という点も無視できず、内容が不明確なもの、認知症などで遺言の能力がない、遺言の形式に不備がある場合には、遺言が無効になる可能性もあります。まず落ち着いて遺言そのものを確認されることをお勧めします。

過去の裁判で無効になった事例をご紹介します。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85488
こちらは、遺言者が故意に斜線を引いた遺言が、遺言を撤回したものとみなされた事例です。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/224/003224_hanrei.pdf
こちらが、認知症の遺言者が作成した遺言が無効とされた例です」

---遺言自体が無効という可能性もあるのですね。もし遺言通りにしなくてもいいとして、それを弟が認めなかったらどうなるのでしょうか?

「一般的には下記の扱いになります。

  • ステップ1.
    相談者様と弟さんを含めた相続人全員で話し合います
    相続人全員が同意した場合、遺言通りにせず、相続人全員で話し合って遺産分割を行うことが可能ですが、相続人の中でお1人でも反対する方がいた場合、遺産分割協議ができません。
  • ステップ2.
    遺言無効確認訴訟を行う
    遺言書の効力が疑わしく、なおかつ話合いでの解決が難しい場合には、遺言が無効であることを主張するために遺言無効確認訴訟を行います。証拠となる資料の収集や調査が必要になりますので、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
  • ステップ3.
    遺留分減殺請求を行う
    民法1042条では、兄弟姉妹以外の相続人に対して最低保障分(遺留分)を定めています。遺言で決められた自分の取り分が、この最低保障分(遺留分)に足りない場合、遺留分減殺請求を行い、遺産を多く取得した人に対して不足分を請求することができます。
    詳しい内容は後からご説明しますが、遺留分減殺請求には時効があるので、ステップ2の遺言無効確認訴訟と同時に行うことをお勧めします。また裁判所での手続も必要になるので、やはり弁護士などの専門家の力が必要です。

---こういった状況の場合、どのような遺産の分配になるのが妥当でしょうか?

「民法1042条では、兄弟姉妹以外の相続人には、最低限度の遺産取得分が認められており、遺留分と呼びます。(民法1042条)

不公平な遺言などにより、相続人が遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合には、自分の遺留分を侵害されたとして、贈与または遺贈を受けた者に対して、その侵害額に相当する金銭の支払を請求できます。遺留分侵害額の請求調停と呼び、家庭裁判所に申立を行うほか、内容証明郵便などで相手方に対する意思表示が必要です。

今回のご相談者様の場合は、弟さんに対して請求を行うことが可能と思われます

---遺留分というのはどのようにわかりますか?

「遺留分の計算は、相続人が配偶者や子どもの場合、法定相続分×1/2となります。子どもが複数いる場合には、子どもの人数で割ります。

今回のお話のように、相続人が子ども2人のみの場合、もし遺留分の算定基礎となる財産が3000万円だとすると、本来の相続財産が3000万円×1/2=1500となり、遺留分はさらにその1/2となるため、相談者様が請求できる遺留分は1500万円×1/2=750万円になります。

財産がすべて現金ではなく、不動産などお金にするのが難しいものもあると思いますので、早めに弁護士へ相談されることをお勧めします。

遺留分侵害額請求調停の申立期間は決められていますので、くれぐれもご注意を!

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/lkazi_07_26/index.html
詳しくは裁判所のHPもご覧ください」

---わかりやすいお話をありがとうございました!

期間の確認もお忘れなく

今回の投稿者さんは、一定の遺留分を請求することができそうです。

親の死後は手配や申請で忙しくなってしまいますが、遺留分侵害額請求調停の申立期間についても確認しておく必要がありそうですね。



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