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【鈴木保奈美さんインタビュー】 「”いつかやろう”ではなく、思い立ったら、すぐに動く」

  • 2024.6.13

「いつかやろう」ではなく、思い立ったら、すぐに動く

〝誰かのため〟ではなく、何より自分のために。時間にも心にも余裕の生まれる50代は、興味の赴くまま、一歩踏み出すには絶好のタイミング。
鈴木保奈美さんにとっての50代も、「ようやく本当に好きなものがわかってくる年代」だったと話します。

「10代や20代で、『この道一筋で生きていこう』というものを見つけて、一直線に生きられたら素敵だけど、なかなかそうはいかない。大半の人は目の前の暮らしが最優先ですよね。
いろんな経験をして、1周して落ち着いたときに、『やっぱりこれが好き』と思えるのが50代じゃないでしょうか」

鈴木さんが50代から意識し始めたのが、「思い立ったら動く」こと。

「例えば雑誌を読んで気になる場所を見つけたら、とりあえず行ってみる。いいジムがあるとすすめられたら、すぐに電話してみる。
仕事に限らず、私たちは『いつかここに行こう』『いつかやろう』と思いがちじゃないですか? でもそんなことを言っていたら、いつ実現できるかわからない。『いつか』をなるべくやめるようにしたんです」

後回しにせず、フットワークを軽くして動くには、それまでの考え方の枠を意識的に切り替える必要も。

「今までは、行動したことに対して成果が伴わないと、無駄なことをしたように感じていたんです。たとえばジムに行っても三日坊主で終わったら、無駄になっちゃったなとつい後ろ向きに捉えてしまって。
でも、自分には合わないとわかったなら、それ自体も成果だと思えばいい。行動しなかったら、それすらわかりませんから。そうやって、発想を転換するように努めています」

行動力を高めたことで得られた成果のひとつが、7月から始まる舞台『逃奔政走‒嘘つきは政治家のはじまり?‒』。

クリーンなイメージで当選した女性知事があるスキャンダルに巻き込まれ、火消しに奔走する……というコメディで、脚本・演出を手がけるのは劇団・アガリスクエンターテイメントを主宰する冨坂友さん。
鈴木さんは7年ほど前に同劇団の舞台を初めて見て以来、いつか一緒にやりたいと願っていたそう。

「無駄なセリフが1行もなくて、言葉のセンスも面白い。伏線もしっかり回収されていて、上手に計算された作品だと思いました。でも、出たいと思って待っているだけじゃ、いつまで経っても仕事は得られない。
『すごく面白いんだよ』『私もこういう作品に出たい』と周りに伝えているうちに、いろいろなつながりが生まれて、ようやく実現に至りました。言い続けていれば意外と叶うものなんだな、と実感しています」

演じる小川すみれは、報道番組のコメンテーターを経て、女性知事になった人物。

「真面目な人なんだけど、マイクで演説するときはがらりと変わって、熱血になる。その感じが面白く出るといいなと思っています。稽古はこれからですが、準備の一環として、先日は都議会を見学してきました。

お客様が何を喜ぶのか、何を見たいのかを意識しながら演じる

知事や議員の皆さんがどんな佇まいで、どんな話し方をするのかを実際に見られたことは、とても参考になりましたね」

2022年に『セールスマンの死』で25年ぶりに本格的な舞台に復帰した鈴木さん。以来、昨年の『レイディマクベス』、そして本作と、意欲的に舞台へと出演しています。

「というのも、その2作品が演出家もスタッフも出演者も素晴らしくて、とても楽しい現場だったので。もちろん、人として学ぶこともたくさんあります。
映像だとお客様の姿を直に見ることはできませんが、舞台ではお客様が劇場に来て、目の前で拍手をしてくださる。そういう生の体験をすると、仕事に対する考え方にも変化が生まれて。
生意気な言い方になりますけど、お客様が何を喜ぶのか、何を見たいのかを意識しながら演じるようになる。
映像の場合は監督からOKをもらうことを目指してお芝居するけれど、舞台は公演が始まれば対峙するのはお客様。そのお客様がOKをくださるかどうかが基準になる。どちらがいいという話ではなく、その違いが興味深いし、両方に対応できるようになりたいです」

数年前にはプライベートで友人と「演劇部」を結成。

「具体的な目標があるわけではなく、仲間内のサークルのようなもの」と話す鈴木さんですが、そんなエピソードからも演劇への熱意が伝わってきます。

「演劇とはまったく関係ない職種の方も参加して、好きな作品の台本を読み合ったりしています。これは俳優という職業の性だと思うのですが、ドラマを見ていて『わあ、いいシーン!』と思うと、自分でもやってみたくなるんです(笑)。
そんなとき、ひとりでやるよりも相手がいたほうがいい。以前、冨坂さんが書いた高校生の話を、男女の役を逆にして読んでみたことがあるんです。仕事では男子高校生の役なんてできないけど、疑似体験してみたらすごく新鮮で。参加した60代の男性も、『この年で女子高生の台詞を言うとは思わなかったけど、ちょっとものの見方が変わった』と話していたり」

現在、MCを務めている書評番組『あの本、読みました?』も、読書好きの鈴木さんにとって、欠かせないインプットの時間に。

「番組をきっかけに、今まで読んだことのない小説も読むようになりました。今度は私が本を通じて得た新たな発見や楽しさを、見る方へご紹介できればと思っています」


最後に、「今、いちばん夢中になっているものは?」と尋ねると、「本と舞台」と即答。

「今は趣味と仕事が一緒で、垣根がないんです。この年齢になると体力にも限りがあるから、嫌なことを頑張る元気はない。でも、好きなことであれば、夜更かししてでも頑張ることができるんです」

HONAMI SUZUKI
1966年、東京都生まれ。1984年、芸能界入り。多くのトレンディードラマに出演し、『東京ラブストーリー』でブレイク。近年の出演作にドラマ『フィクサー Season2』、映画『ミステリと言う勿れ』、舞台『レイディマクベス』『セールスマンの死』など。読書エンターテインメント『あの本、読みました?』(BSテレ東)にレギュラー出演中。7月5日より舞台『逃奔政走-嘘つきは政治家のはじまり?-』(東京・三越劇場、京都・京都劇場)に出演。

シャツ¥194,700/アニオナ(ウールン商会)、パンツ¥27,500/デザイナーズ リミックス(コロネット)、帽子/¥70,400/ヘレンカミンスキー(ヘレンカミンスキー ギンザシックス店)、バングル¥96,800/ノアーク(ノウン)、サンダル¥77,000/ヘリュー(ギャルリー•ヴィー 丸の内店)

撮影/浅井佳代子 スタイリング/ 犬走比佐乃 ヘアメイク/福沢京子 文/工藤花衣

大人のおしゃれ手帖 2024年7月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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