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初孫の愛らしさに身もだえる堅物おじいちゃんの奮闘記『じじいくじ ~元最強刑事の初孫育児~』

  • 2024.6.11
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ママとパパは対等であるからこそ、育児への考え方の違いで軋轢が生まれてしまうことも。とくに初めての子育ての場合、同じゼロからのスタートにもかかわらず、パパはなぜだか「お手伝いさんポジ」に回ってしまうことが多い。なにが手伝うだ! 主体的に行動しろバカヤロー! というのはSNS育児アカウント界隈で定番のやりとりのひとつでもある。とにかく、育児においてママとパパの関係性はとてもデリケートなのだ。

しかしその相手が「じぃじ」に変わると、グッと微笑ましく感じるから不思議だ。初めての孫育てに奮闘するおじいちゃんの姿を描いた育児漫画、それが『じじいくじ ~元最強刑事の初孫育児~』(上地拓郎/KADOKAWA)なのである。

その剛腕で街のならず者たちから恐れられ、「鬼鉄」と呼ばれていたかつての敏腕刑事・小林鉄男。現役を引退した彼が刑事の仕事と同じくらいの気合で臨んでいるのが、孫・鉄斗のお世話だ。鉄斗は生まれたてほやほやの新生児。おじいちゃんとなった鬼鉄が単身赴任中の娘婿に代わり、産後間もない娘のケアと孫のお世話に奮闘する姿を描くのが本作である。

仕事一筋だった鬼鉄にとって、赤ちゃんのお世話は人生初! 70歳を超えた堅物おじいちゃんが子育ての難しさに直面しながらも、持ち前の真面目さと根性と筋力で乗り越えてゆく。

鬼鉄は、こんなおじいちゃんがいてくれたら心強いなー! という娘(ママ)の願望を叶えてくれるようなキャラクターだ。包容力に溢れ、寡黙ながらも家族への愛情を強く感じる。

作者の上地先生は、ご自身の育児体験をもとに「独身者や学生でも楽しめるような育児漫画を描きたい!」という思いで本作を執筆されたそう。その思いは作品に見事に反映されていて、パパやママといった当事者よりもひとつ遠い存在にいる「おじいちゃん」を主人公に据えたことで育児の見え方がより客観的になり、コメディとしてのおもしろさが増幅されているように思う。

真面目で一本気な鬼鉄の性格も、赤ちゃんに振り回される立場としていい味を出している。なにより、父と娘の関係性がとてつもなく、いい。命がけで子どもを産んだ娘へのリスペクトと気遣い、愛する娘の力になってやりたいと願う鬼鉄の心が、読者に出産と育児の偉大さを語りかけてくる。

そして愛する娘が産んだ宝物……「孫」を愛でているおじいちゃんの姿をみると、なぜだか胸をギュッと締めつけられてしまう。もしかすると、人類にはおじいちゃんと孫の組み合わせに心を奪われてしまうDNAが組み込まれているのかもしれない。

例えば、祖父の立場から孫への愛情を歌った大泉逸郎の名曲「孫」は国民的大ヒットとなり、発売から20年以上がたった今でも歌い継がれている。『ちびまる子ちゃん』(さくらももこ/集英社)の友蔵とまる子のコンビは、微笑ましいおじいちゃんと孫の姿の代名詞だ。鬼鉄やそれらのおじいちゃん達から感じるのは、見返りを求めない愛である。元気に育ってくれさえすればそれでいいのだ、という無償の愛情が、わたしたちの心に響いているのかもしれない。

おじいちゃんが育児に奮闘する、という現代的なテーマに挑戦した『じじいくじ ~元最強刑事の初孫育児~』。汗をかきながら頑張る鬼鉄の姿にクスッと笑えてほろっとさせられる、面白い育児マンガとなっている。ぜひご実家のリビングで、家族みんなで楽しんでいただきたい。

文=ネゴト/ あまみん

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