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非凡なまでに平凡な男・安部礼司。 漫画版の魅力とは? 普通の毎日が愛おしく思えるオフィスコメディ

  • 2024.6.11
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大人気ラジオドラマ「NISSAN あ、安部礼司 ~BEYOND THE AVERAGE~」をご存知だろうか。ごくごく平均的=Averageなサラリーマン・安部礼司がトレンドの荒波に揉まれる姿と、それでも前向きに生きる姿を描いた、勇気と成長のコメディオフィスドラマである本作。2006年の放送開始から20年弱、TOKYO FMを始めとしたJFN38局ネットで今もなお放送を続けている人気長寿番組だ。

このラジオ番組を原作とするのが、『ミワさんなりすます』でも知られる青木U平によるマンガ「あ、安部礼司です。」(青木 U平:著、「NISSAN あ、安部礼司~BEYOND THE AVERAGE~」:企画・原案/主婦と生活社)である。ラジオドラマと同じく、主人公・安部礼司が勤める中堅企業・大日本ジェネラルを舞台として物語は展開する。登場するのも安部礼司をはじめ、彼の妻である安部優や後輩の飯野平太など、ラジオではお馴染みの面々ばかりだ。

マンガでも描かれるのは、彼らによるオフィスでの平凡かつドタバタな毎日。ラジオと同じく多くの人が共感し、思わずくすっとしてしまうようなエピソードも満載。いい意味でどこまでも“フツー”な安部礼司の毎日が、肩の力の抜けたユルいタッチで描かれる点も本作の大きな魅力である。

耳で楽しむ音声のみのコンテンツでありながら、180万人超のリスナーに愛される。そんな作品が視覚を伴うことで、これまで以上に解像度高く楽しめるのは言わずもがな。元々、オフィスで働く人々の解像度の高さが本コンテンツの人気の理由のひとつだったが、その魅力はマンガとなってもしっかり健在。まだ「安部礼司」の存在を知らない人たちも気軽に楽しめる、入口としても申し分ない作品となっている。

とはいえ一方でラジオ番組を知る人の中には、「あれはラジオドラマだからこそ良いんじゃないか」という人もいることだろう。しかし当然そんな人たちにとっても、本作は充分楽しめるマンガともなっている。

個性的だが、いい意味でどこにでも居そう。そんな物語の登場人物の絶妙な存在感も、キャラ造形・背景にしっかり落とし込まれている。加えて、主人公である安部礼司が正しく“平凡な人間”として視覚的に描かれることで、彼が普通であることによるシュールな要素が、より作品の魅力として惹き立っているのである。

物語で描かれる安部礼司の毎日は確かに平凡だ。しかし平凡であることは、変わり映えがない、何もドラマがないということとイコールでは決してない。彼と同じように平凡な一凡人の私たちの毎日でも、それは同じである。

毎日決まった時間に起きて、毎日決まった時間に毎日決まった職場へ出社する。そんな生活を送る人が、おそらくこの社会の大多数だろう。しかし働いていても、やることなすことすべてがまるでコピー&ペーストしたようにまったく同じ、という人は、むしろこの世の中に極めて少ないのではないだろうか。

昨日と違うことはなんだろう。明日は今日とどう変わるんだろう。大まかな流れは同じ普通の毎日でも、自分ではない誰かと関わる日々が続く限り、誰しも必ず大なり小なりのドラマが1日のあちこちに散らばっている。

何もないと思うなら、小さな行動で自分からドラマを起こしてみてもいい。普段通らない道で会社から帰ってみる。いつもと違う時間帯にコンビニへ行く。滅多に買わない飲み物を自販機で買う。日頃あまり接点のない人に、敢えて会話を振ってみる。些細なきっかけで、何かが起こるかも知れないし、起こらないかもしれない。何も起こらなくともその時点ですでに、間違いなく昨日とまったく同じ日にはなっていないはずだ。

私たちと同じ平凡な日常を描くオフィスドラマを通して、普通であることの尊さに気づけたり、普通に生きる人々の背中を押してくれる。そんな安部礼司の物語をラジオですでに知っている人も、まだ知らない人も、ぜひマンガという形態を通じて安部礼司の魅力に触れてはいかが。

文=ネゴト/ 曽我美なつめ

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