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案外普通の人だった…松下洸平”コウタロウ”の正体にヤキモキするワケ。ドラマ『9ボーダー』第8話考察&感想レビュー

  • 2024.6.11
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『9ボーダー』第8話より ©TBS

川口春奈がTBS金ドラ初主演。木南晴夏&畑芽育と3姉妹役を演じるドラマ『9ボーダー』。19歳、29歳、39歳…各年代のラストイヤーで、3姉妹がモヤり、焦りながら、自分の生きる道を模索するヒューマンラブストーリー。今回は第8話のレビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。

『9ボーダー』第8話より ©TBS
『9ボーダー』第8話より ©TBS

コウタロウ(松下洸平)の正体が判明した『9ボーダー』(TBS系)第8話。彼の本当の名前は、柴田悠斗。神戸で家族経営をしている不動産会社の副社長で、商店街の再開発プロジェクトに関する交渉をするために、おおば湯の近くに来ていたらしい。毎朝8時半に鳴るアラームは、ミーティングの開始時刻で、口座にあった1億円は祖父の遺産。さらに、百合子(大政絢)という婚約者までいた。

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七苗(川口春奈)は、いつかこんな日が来ると予想していたのだろう。この幸せな時間は、永遠に続くわけじゃない。記憶を失う前のコウタロウを大事に想っていた人はきっとどこかにいて、その人が現れたら彼を返さなければならない。だから七苗は、後悔がないように全力で恋をした。

コウタロウ自身も、「もっと嬉しいと思ってた。自分が誰か分かったら、不安がストンとなくなって、目の前が明るくなるんだろうなって」と話していたが、視聴者も同じ気持ちだ。むしろ、危ない仕事をしている人だった…というオチの方が、七苗もまだ前に進めたかもしれない。でも、柴田は案外普通の人だった。

柴田家は、まるで『やんごとなき一族』(2022年/フジテレビ系)を彷彿とさせるような豪華な一族ではあるが、危ない仕事をしているわけじゃない。だから、嫌いになる理由を探そうとしても探すことができず、一緒にいられる理由を見つけられないことが切ない。

もしも、最悪の環境にいたのなら、七苗も「ここにいれば?」と声をかけられたかもしれないが、コウタロウは柴田悠斗に戻ったとしても、不幸になるわけじゃない。

『9ボーダー』第8話より ©TBS
『9ボーダー』第8話より ©TBS

ただ、やっぱり柴田よりもコウタロウでいるときの方が、幸せそうに見えてしまうのはなぜだろう。柴田は仕事人間で、大事な婚約者が結婚式の相談をしても、仕事を優先させたりと、どこかトゲがあるように見えた。しかし、コウタロウはぽわぽわしている。人想いで、誰にでも優しくて、一緒にいる人の心を和ませている。

もしかすると、コウタロウは柴田が鎧を脱いだ姿なのかもしれない。華麗なる一族に生まれたことへの重圧とか、副社長としての責任とか。そういったものをすべて脱ぎ去った柴田の真の姿が、コウタロウなのではないだろうか。

今の自分が好きな人を選ぶか、過去の自分が好きだった人を選ぶか。コウタロウはどちらの道を選んだとしても、誰かを傷つけてしまうことになる。「必ず、戻ります。戻る理由があるから」と言っていたが、神戸に戻って本当の記憶が蘇ったらどうなってしまうのだろう。七苗は、幸せになれない未来が見えたから、手を離そうとしたのかもしれない。

「また後悔するの? 母さんが出て行ったとき、言えなかったんでしょ。行かないでって。素直に言いなよ。ダメでも、無駄でもいいから、伝えなよ」

九吾(齋藤潤)の言葉を受けて、コウタロウに会うために空港に駆けつけた七苗。しかし、もうそこに彼はいなかった。2人は結ばれる運命ではなかったということなのか。

記憶が戻らないまま七苗のもとに帰ってきたとしても、コウタロウを愛している人たちが神戸にいるという事実は変わらない。この恋、どちらに転んでも苦しい結末になる気がしてしまう。

『9ボーダー』第9話より ©TBS
9ボーダー第9話より ©TBS

第8話も、陽ちゃん(木戸大聖)がいい人すぎた。

まず、朔(井之脇海)が六月(木南晴夏)の誕生日を知りたがっているのを察して、「むっちゃんは10月だよな?」とさり気なくアシスト。そして、コウタロウを突き落とした犯人が判明すると、本人よりもブチ切れて、どれだけコウタロウがしんどい想いをしていたのかを訴える。さらに、ずっと好きだった七苗をコウタロウのところに行かせてあげるために車まで出してくれる。

空港まで送ってあげて、「行け! 七苗!」と全力で応援したのに、七苗はコウタロウを探すのに必死で見向きもしないあたり、当て馬あるあるを踏襲していて、胸が痛い。八海(畑芽育)は前を向いているようだし、陽ちゃんはこのまま誰とも結ばれることなく終わってしまうのだろうか。

その一方で、六月の年下彼氏・朔は幸せたっぷりだ。六月のそばにいられるだけでニマニマしちゃっている感じが、飼い主に忠実なワンコのよう。おおば湯で行われる試食会に招待されただけで、宝くじが当たったレベルで大喜びしてくれるのだから、六月からしたら愛おしくて仕方がないはず。こんなにまっすぐ愛を表現されたら、強がりな六月も素直にならざるを得ない。

『9ボーダー』第6話より ©TBS
9ボーダー第6話より ©TBS

ただ、職場ではあくまで上司と部下の関係であるため、イチャイチャは厳禁だ。それなのに、同僚の森岡(内田慈)にバレているということは、2人とも愛がダダ漏れなのだろう。六月が「(仕事)よろしくね」と肩に手を置いたとき、その手をぎゅっと握って「僕はこれだけで幸せです」と言わんばかりに微笑んでいた朔。その健気さに、心を掴まれた人も多いのではないだろうか。

しかし、朔は海外での仕事に未練があるような描写が…。六月に告白したときも、「一緒に海外に行きませんか? 僕が働いていた公園、あの大自然のなかで六月さんと一緒にいられたら」と言っていたし、ゆくゆくは海外移住も視野に入れているのだろうか。

当時は、実家のおおば湯の経営危機問題もあり、「大自然に行っている場合じゃない」と断っていた六月だが、五郎(高橋克実)が帰ってきたいま、状況は変わっている。

恋愛なら、ただ幸せな気持ちだけを享受することもできるが、海外について行くとなるとまた別の問題も出てくるだろう。年の差もあるし、今のことだけを考えているわけには行かない。この先は、六月と朔の人生設計についての価値観の違いが浮き彫りになってきそうだ。

(文・菜本かな)

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