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『かくしごと』杏に読者の疑問をぶつけてきた!偶然が重なった撮影当時の思い出から、フランスとの2拠点生活で感じることまで次々回答!

  • 2024.6.10
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映画やドラマを中心に幅広く活躍している杏が、見ず知らずの少年の母になる女性を演じた主演作『かくしごと』(公開中)。『生きてるだけで、愛。』(18)の関根光才監督による本作は、ミステリー作家、北國浩二の感動作「嘘」の映画化。認知症の父の介護ため故郷に戻った作家の千紗子が、偶然出会った記憶を失った少年を“拓未”と名付け、自分の息子と偽って育てはじめたことから思いがけない事態に陥っていくヒューマンミステリーだ。

【写真を見る】杏が『かくしごと』撮影当時を振り返る「いろんな偶然が組み合わさった奇跡のような作品」

MOVIE WALKER PRESSでは、Xにてユーザーから質問を募り、杏ご本人に答えてもらう“AMA”(=Ask Me Anythingの略。ネットスラング風に言うと「〇〇だけど、なにか質問ある?」といった意味)を実施。『かくしごと』に出演を決めた理由や共演者との思い出、撮影の舞台裏からパリでの暮らしについてまで、様々な質問に答えてもらった。

「千紗子という役をオファーされた際に、引き受けるきっかけになったことや経緯があれば教えてください」(20代/男性)

「脚本ですね。自分で選択できない子どもたちが悲しい事件に巻き込まれるニュースをよく耳にするなかで、この脚本の千紗子というキャラクターが飛び込んできたんです。彼女は倫理や社会のルールより、まず目の前の命を助けようと考えます。不可能を可能にしていく千紗子を応援したくなったんです。重いストーリーですが、キャラクター誰もがなにか秘密を抱えているところもミステリーとしてすごくおもしろいと感じました」

記憶を失った少年を守るために嘘をつく、複雑な役柄の千紗子を演じた杏 [c]2024「かくしごと」製作委員会
記憶を失った少年を守るために嘘をつく、複雑な役柄の千紗子を演じた杏 [c]2024「かくしごと」製作委員会

「千紗子を演じるうえでどのような役作りをされたのでしょうか?」(20代/女性)

「内緒でなにかを抱えている気持ちになってみようと、2週間くらいで消えるタトゥーシールをお腹に貼ったんです(笑)。一種の遊びみたいなものですが、誰にも見えない所にシールを貼っているんだということがずっと意識の片隅にありました。今回は専門的な役柄ではなかったし、監督からも役作りに関して特にお話はありませんでしたが、拓未が本心を淡々と語るやり取りではゾクっとする怖さが降ってきて、自分でも驚くくらい戸惑いました」

「千紗子とご自身を重ねて考えた時に、千紗子と似ている、あるいは自分とは違うと感じる部分があれば教えてください」(20代/男性)

「私とは違ったキャラクターだったので、自分とは別の存在だなという想いがありました。仲のよい友達でもすべてに共感できるわけではないのと同じ感覚で、だからこそ演じるのがおもしろいんだと思います。でも目の前にいる人を助けたいという想いを真っすぐ体現した彼女は、ステキというかカッコいい人だと思いました」

千紗子は”自分とは別の存在”としながらも、彼女のとった行動には共鳴する部分があるという 撮影/興梠真穂
千紗子は”自分とは別の存在”としながらも、彼女のとった行動には共鳴する部分があるという 撮影/興梠真穂

「父親の孝蔵役の奥田瑛二さん、記憶を失った少年を演じる中須翔真さんと一緒に撮影をされたなかで、印象的な出来事や共演されて感じたことがあれば教えてください」(30代/女性)

「奥田さんは現場でキャラクターを抜かず、撮影期間はずっと役をキープされていました。その没入のしかたがすごくて、それに触れたことで私も千紗子のままでいられたと思います。奥田さんで特に印象深いのは、娘の私をお母さん(妻)だと思い込み「母さん」って呼ぶところ。1回呼んだあと、レスポンスを求めて重ねるようにもう1回呼ぶんです。震えるような感情みたいなものを感じて、何度見返してもあそこは涙が出てきます。

翔真くんは子役というほど子どもではなく、ちゃんと自分の足で立って演技をしてました。周りから見たら全然できてるのに『うまくできなかったかもしれない』って悔しがったり。ラストに翔真くんとのお芝居があるんですが、彼の演技に背中がぞわっとなり私も生の感情が出せました。撮影から2年経ってるのでさらに大きく成長しているかと思いますが、当時の彼を観られるのは奇跡みたいに感じます」

千紗子の父、里谷孝蔵を演じた奥田瑛二による認知症の演技に涙を誘われる [c]2024「かくしごと」製作委員会
千紗子の父、里谷孝蔵を演じた奥田瑛二による認知症の演技に涙を誘われる [c]2024「かくしごと」製作委員会

「撮影で大変だったことはなんですか?」(20代/女性)

「オールロケ撮影だったので、無事に乗り切ることができるのかというプレッシャーですね。でもそれは測りきれないことなので、移動時間はちゃんと寝るとか規則正しい生活を心掛けました。朝4時に起きて犬の散歩をして、子どもを起こしてご飯を作り、子どもを送ってから現場に入る。子どもが寝る前には帰るようにして、翌日の準備をしたらセリフを覚えて、みたいな毎日でした。4時間くらいしか寝れない日も多かったんですが、最後までなんとか元気に撮影を終えることができました。環境としては本当に恵まれていたと思います」

「撮影を通して杏さんが特に印象に残っていることはなんでしょうか?」(30代/男性)

「ありのままの風景です。少しでもスケジュールがずれたら出なかった季節感とか、いろんな偶然が組み合わさった奇跡のような作品なんです。後半のあるシーンでドラマが盛り上がった瞬間に雨がバーっと降り出すシーンがあるんですが、実は演出じゃなく本当に雨が降ったんです。雨の予報だったので早く撮らないと、と話していたんですが、本番の時に神がかったタイミングで降り出して。現場でもみんなですごいね!と言い合ってました。撮影が8月の終わりだったので、肌がだんだん汗ばんでくるなど、日本の夏の湿度感も自然に出せたと思います」

”日本の夏”を感じさせるロケーションも魅力 [c]2024「かくしごと」製作委員会
”日本の夏”を感じさせるロケーションも魅力 [c]2024「かくしごと」製作委員会

「関根光才監督とは初めてのタッグだと思いますがお仕事をされていかがでしたか?」(40代/男性)

「自然体を重視してくださる方でした。泣くシーンでは顔の赤みや目の腫れなどが戻るまでちょっと大変なんですよ。関根監督はカメラ前での生の感情を第一にされている方なので、テストというより場当たり(段取りの確認)を重ねたら、そのまま本番に入る形で撮りました。脚本も手掛けられていたので、なにか疑問が出た時もお話ししやすかったですね」

「本作は『子どもを守るためにつく母親の嘘』が大きなテーマとなっていると思います。杏さんも、お子様を育てるなかで嘘をつくことはありますか?できれば具体的な内容も伺いたいです」(30代/男性)

「嘘と言えば嘘だし、みたいなことはままありますね(笑)。歯が抜けたときにやってきてコインを残してくれるというネズミさんに関しては、ネズミさんも忙しくて忘れる時があるようです」

千紗子の友人であり、彼女の嘘を知る唯一の人物でもある野々村久江を演じた佐津川愛美 [c]2024「かくしごと」製作委員会
千紗子の友人であり、彼女の嘘を知る唯一の人物でもある野々村久江を演じた佐津川愛美 [c]2024「かくしごと」製作委員会

「拠点を日本とフランスの2つに置くことで苦労したことを教えてください」(20代/男性)

「特に苦労を感じたことはないんです。ネットワーク環境が進んできたので、インタビューや打ち合わせ、ナレーションをリモートで収録することもありますから。その場にいなくても仕事ができるようになってきたし、さらに技術が進歩すればどこにいても仕事に繋げられると思います。10年前だったらもっと不便に感じたり、日本から離れて孤独を感じていたかもしれないですね」

日本とフランスの2拠点生活にもすっかり慣れた様子の杏 撮影/興梠真穂
日本とフランスの2拠点生活にもすっかり慣れた様子の杏 撮影/興梠真穂

「子育ての時間と、自分の時間(仕事を含む)をどう区別されていらっしゃるか?を知りたいです。また、役を家庭で引きずってしまう…ということはあるのでしょうか?笑顔で子育てができる秘訣…杏さんなりのお考えがあれば知りたいです!」(30代/女性)

「私の場合は、衣装を着たりメイクをしてもらったり、自宅とは違う場所で照明を浴びるとか、そういう一つ一つが重なって自動的に分けられている感じはします。お芝居のお仕事は衣装や環境が形作ってくれる部分も多いですから。逆に撮影の数か月後にアフレコをするようなお仕事は、当時の気持ちを思いださなきゃと毎回ドキドキします(笑)。

笑顔については、笑いたくない時は無理しなくていいのかな、と思っています。お芝居で感情を出す時は、たとえば幸せだった時の気持ちとか大変だったこと、悲しかったことなどいろんな記憶を想像しながら作って演じています。でも私自身は理由がないのに笑うのが苦手なんですよ。普段からうれしかったら表情や態度で伝えるのがいちばんだと思いますが、それが難しいときは言葉だけでも伝えられたらと思っています」

子育てに悩む人へメッセージを送る杏「辛い時は、無理して笑わなくていい」 撮影/興梠真穂
子育てに悩む人へメッセージを送る杏「辛い時は、無理して笑わなくていい」 撮影/興梠真穂

「フランス在住の杏さんの周りでいま流行っている日本のコンテンツがあれば教えてください!」(40代/女性)

「日本のアニメや漫画はすごく人気がありますね。コンテンツではないですが、びっくりしたのは“ふじりんご”とか果物や野菜の銘柄が日本の名称のまま売られていること。お酒や和牛も神戸や群馬とか、産地が表示されています。アイスのフレーバーもほうじ茶、ゆずのままだし、“お弁当”もそのまま通じるんですよ。意外にフランスにいても日本語が飛び交ってますね(笑)」

印象的な場面の一つであり、本作のなかでも度々描かれる”食事シーン” [c]2024「かくしごと」製作委員会
印象的な場面の一つであり、本作のなかでも度々描かれる”食事シーン” [c]2024「かくしごと」製作委員会

「SNSでのフランス生活の発信、楽しみに拝見しております。先日、お子さんと映画館に行かれたことを投稿してらっしゃいましたが、杏さんが体感されたフランスと日本の映画館の違いを教えてください!また、日本の作品や映画人は、現地でどのように受け止められているのでしょうか」(30代/男性)

「フランスの映画館では、ジュースをペットボトルのまま売ってます(笑)。違いはそれくらいで、あとはポップコーンも同じだしシネコンは日本とあまり変わらないように感じます。日本映画も人気のようで定期的に公開されています。この前も妻夫木聡さんの『ある男』をやっていたし、柳楽優弥さんの『HOKUSAI』も去年公開されました。2年くらい時差があるようですが、『かくしごと』もフランスで公開してくれるといいなと思っています(笑)」

【写真を見る】杏が『かくしごと』撮影当時を振り返る「いろんな偶然が組み合わさった奇跡のような作品」 撮影/興梠真穂 スタイリスト/中井綾子(crêpe) ヘアメイク/犬木愛(Ai Inuki)
【写真を見る】杏が『かくしごと』撮影当時を振り返る「いろんな偶然が組み合わさった奇跡のような作品」 撮影/興梠真穂 スタイリスト/中井綾子(crêpe) ヘアメイク/犬木愛(Ai Inuki)

取材・文/神武団四郎

※原作の「嘘」は旧字体が正式表記

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