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結婚と出産が同時に訪れる「うっかり婚」。24歳だった作者が、初めての結婚・妊娠生活を乗り越えられた10年間を描くコミックエッセイ

  • 2024.6.10
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すべてのカップルが必ずしも結婚を目指しているわけではない。「好きだから」「気が合ったから」「何となく」など、交際する理由はさまざまだ。自由恋愛が尊ばれる現代では、気軽な気持ちで交際することになんの問題もない。そんな中でつき合って間もない相手との間に子どもを授かり、初めての子育てと結婚が同時にやってくることを「うっかり婚」と呼ぶらしい。

「はちみつコミックエッセイ」より刊行の『うっかり婚も気がつけば10年め。』(こいしさん/オーバーラップ)は、うっかり子どもを授かって結婚した作者のコミックエッセイである。うっかり婚から10年経ってからも幸せに暮らしていると、もはやどこにでもいる普通の夫婦だ。本作では、そんな初めての妊娠を受け入れるまでの葛藤や不安で泣いて過ごした10年前の出来事を振り返っていく。作者と同じように「うっかり婚」する人や初めて妊娠した人は、本作を読めば不安な気持ちが軽くなるかもしれない。

時は2013年の冬。10年前の作者は、将来への漠然とした不安から転職したいと思う24歳の新社会人だった。妊娠が発覚したときは、後の夫と交際して3ヶ月。結婚前提でもなければ、付き合いたてでまだ相手のこともよく知らない。そんな状態で妊娠したなら、絶望で目の前が真っ暗になるかもしれない。まだまだ遊び盛りで、親になる覚悟などない若者だった10年前の作者の気持ちは察するに余りある。

授かった赤ちゃんに対して「会ってみたい」という男性と付き合っていたことが最大の幸運なのだろう。もしここで迷惑そうにされていたら、子どもを諦めていたかもしれないのだ。お金や住居、仕事への不安は尽きず、身近に相談できる人もいない。そんな状況でも、赤ちゃんを産み育てると決めたのは、はじめはどんな女性でも「初めて」を乗り越えているのだと気づいたからだった。

特に印象的だったのは、出産前と出産後の夫の言動の変化だ。初めての実家へ挨拶に行くときは、海を眺めながらの運転で「本当に結婚しても大丈夫か?」と読者を不安にさせてくる。しかし、出産後初めて子どもを乗せた運転はとても慎重なものになっていた。「いのちをあずかってますから」とカチカチで運転する姿に、ああ、この人はしっかり「親」になったのだな。とホッと胸を撫で下ろす。

初めての子育てをしながらの新婚生活。いざふたを開けてみれば、そこにあるのは不安ばかりだった。実母と自分を比べて落ち込む日には、「母は偉大」なのだと気づかされる。そんな葛藤を抱えながらも手間暇かけて作ったお弁当で、夫からおいしいと言われたのはウインナーだった。努力が報われなくてガッカリするような、過度な期待がないことに安心するような複雑な気持ちにさせられる。そんなちょっぴり無神経な言動により、「もっと気楽に生活していいか!」と妻の心を軽くするのだから良い夫なのだろう。

作者と同じようにうっかり婚をする人や初めての出産に不安を抱えている人は、本作を読んで安心してほしい。うっかりで子どもを授かり結婚と出産を同時に経験した人でも、10年経てば普通の夫婦として幸せに暮らせるようになる。あくまでひとつの家庭のお話なので、全く同じように進むわけではないだろう。それでも、深く悩みすぎず人生は「なるようになる」という気持ちで生きるくらいがちょうど良いのかもしれない、と思わせてもらえる。そうして少しだけ軽くなった心で、またいつもの明日を迎えてもらいたい。

文=ネゴト/ 押入れの人

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