着物や袴姿で観光地を闊歩(かっぽ)したり、カラフルな喫茶メニューを撮影したり……。10~20代を中心に「大正ロマン」「昭和レトロ」がたびたびブームになっているのは、どのような理由からなのでしょうか?若い世代はもちろん、オトナも魅了される独特の世界観を追います。
懐かしい…ではなく「新しい」
大正ロマンや昭和レトロは、アラフォー以上の世代にとってはどこか懐かしさを感じるテースト。しかし、10~20代の若者にとっては新しい、「新鮮さ」を感じる対象です。
大正・昭和時代特有のノスタルジックな雰囲気や独特のデザイン、当時の文化や生活様式。それらに対する“憧れ”というよりはむしろ、目新しくオシャレなものという感覚から、自身の消費・表現行動などに取り入れているとみられます。
また、古き良き「和」の中に革新的なオシャレ感をプラスしたスタイルも人気を集め、東京の浅草や京都などの観光地に行くと、着物や袴姿で着飾ったZ世代の姿を多く確認できます。
若い世代のユーザーが多いインスタグラムでのハッシュタグ投稿件数は、「#昭和レトロ」が236.9万件、「#大正ロマン」が32.4万件(2024年6月7日現在)。
これがどのくらいの規模感かというと、「#ユニクロ」が244万件、「#ジュエリー」は279万件。「#おやつ作り」36.3万件や「#夏ファッション」32.5万件などに匹敵するものと捉えれば、その広がりが体感できるかもしれません。
「昭和レトロ」SNSで多い投稿とは?
「昭和レトロ」のタグでは、クリームソーダの写真がダントツで多く、続いて喫茶店のプリンの投稿が多く投稿されていました。ノスタルジックな店内の雰囲気にフォーカスした投稿も多数。令和の現代からすれば非現実的な世界観に珍しさやオシャレさを感じる人は一定数いるようです。
また「大正ロマン」のタグの中心コンテンツは、着物。モダンからレトロまでさまざなな柄やカラーの袴、着物を着た若者の写真がたくさん投稿されています。大正ロマン・昭和レトロのテイストはアジア圏の若者にも“刺さって”いるようで、中国語で投稿されたものもありました。
熱烈ファンから歴史好きまで…注目スポット
大正ロマンや昭和レトロを感じられる古き良きレトロさは、Z世代や女性に限らず幅広い世代・属性の人が楽しめる普遍的な魅力があります。その証拠に、それらを堪能できるスポットは一過性のトレンドで終わることなく長くファンを魅了し続けている場所がほとんどです。
例えば、大正ロマンな雰囲気が注目を集める石川県金沢市の「金沢白鳥路ホテル山楽」。ロビーラウンジには重厚感のあるソファ、窓にはステンドグラスとムードたっぷり。そのラウンジは宿泊客以外もカフェとして利用でき、カラフルなクリームソーダが楽しめます。
Z世代にとってのフォトスポットとしてはもちろん、大正ロマンな世界観に見せられた「歴女」(れきじょ、歴史好きの女性たち)からも人気とのことです。
昭和レトロを満喫するなら老舗の喫茶店、いわゆる純喫茶は外せません。レトロな雰囲気の喫茶店は日本全国にありますが、中でも京都府京都市の「喫茶ソワレ」は昭和レトロを語るには外せない1軒です。
1948(昭和23)年創業。リアルな昭和のムードをたたえる店内で感じられるのは、まごうかたなきレトロのかほり。喫茶店ならホテルより利用のハードルが低く、昭和レトロ初心者でも気軽に体験できます。
「昭和レトロ」思いきり満喫するには?
最後に、Z世代の多くが(無意識的にせよ)取り入れている、大正ロマン・昭和レトロをめいっぱい楽しむためのコツを紹介します。
・写真を撮る際は、対象物だけでなく空間全体を写り込ませるアングルに・食べ物は光を入れてキラキラさせる・着物や袴でお出かけする、もちろん撮影も忘れずに
写真撮影をする際は、食べ物などを真横から撮って、写真の中に空間全体を映り込ませるのがポイントです。せっかく大正ロマン・昭和レトロのムード漂う場所に来たのですから、メニューのレトロ感だけしか写さないのはもったいない。空間のレトロ感を拾って、いい雰囲気の写真を撮ってみてください。
また、レトロなお店は照明が暗かったり光が入りにくかったりすることがあります。それでもクリームソーダやプリンにうまく光が当たる角度を見つけて、キラキラさせて写真を撮ると映えるでしょう。
着物や袴などをレンタルして、自分自身がレトロな世界観に入り込むのも、大正ロマン・昭和レトロを楽しむ方法の一つ。大人世代にとっての“懐かしさ”も、実体験を経ることでより新鮮なものに感じされるかもしれません。
(岩井なな)