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繊細な心を守る為のサングラスが、繊細ゆえ怖気づきかけられなかった

  • 2024.6.9
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ここ数日は陽射しがジリジリと熱く、街では半袖シャツを着る人を見かけるようになった。そろそろ夏が近づいている。
今年の夏にやりたいことは、サングラスをかけて街を歩くこと。
私がサングラスを手に取るきっかけになったのは1冊の本だった。

その本のタイトルは『仕事、人間関係の悩みがスーッと軽くなる!「繊細さん」の知恵袋』。HSP(とても敏感な人)が快適に過ごすためのノウハウが書かれている本だ。

その中で私の目に留まったのが「光や周囲の人からの視線が刺激に感じて落ち着かない時は、サングラスをかける」という項目。
これは目からウロコだった。

◎ ◎

私は子供の頃から真夏の太陽の光が苦手だった。どうしようもなく眩しくて目元にクシャッと皺が寄って、歪んだ表情になってしまう。夏に撮影された写真は顔をしかめているものが多い。
加えて、私は外を歩いていると唐突に周りの人の視線が気になりはじめてソワソワと落ち着かなくなることがある。 誰も私のことなんて大して見ていないと頭で分かっていても心のざわつきは治まらず、調子が悪い時はそのままメンタルが落ちてしまって憂鬱になったりする。
そんな私にとって、サングラスをかけるというのは画期的な解決方法だった。
そうか。物理的にバリケードを張ればよいのか。その手があった。私は本を読み終えてすぐにサングラスを購入した。

しかしそれから5年、サングラスはケースに仕舞われたまま使われることはなかった。勢いで買ってみたのはいいものの、私にとってサングラスはかなり奇抜なファッションで、身につけるには勇気が必要だった。
イカついかな?悪目立ちするかな?
周囲の人にジロジロと見られるところを想像して怖気付く。他人からどう思われるかを過剰に気にして悪い方に妄想してしまうのは、私の悪い癖だった。

そんな恐怖心を抱えて先延ばしにしているうちにサングラスの存在をすっかり忘れ、気づけば5年も経ってしまっていた。

◎ ◎

そして今年の1月1日、「去年よりもHSPを飼い慣らせるように」という意気込みで私はあの本を読み直したことで、ケースに仕舞ったままのサングラスを思い出した。
久しぶりにちょっとかけてみようと思って棚を覗き込むと、サングラスはお気に入りの化粧品や香水に隠れて棚の奥の奥に追いやられて転がっていた。なんだか切ない気持ちになった。置きっぱなしにしてごめんね。

サングラスをかけて鏡の前に立ってみると、5年前の自分よりも似合っているような気がした。髪型やメイクを変えたからだろうか。
「今年は実行できるかもしれない」と直感した。

私はこの5年の間にうつ病の発症、休職、退職、転職、障害者手帳の申請、結婚など劇的な変化をいくつか経験した。その影響なのか、行動することへの抵抗や躊躇いが以前よりも薄れていた。泣きながら怖い上司に休職願いを提出したことや、はじめて心療内科の門を叩いたことに比べれば、サングラスをかける羞恥心なんて大したことではない。

前に進むには、恐怖心や羞恥心を飛び越えて行動するしかないのだ。大丈夫だ。今の私ならできる。
それに、私の推しの星野源さんもサングラスかけてたし。あれめっちゃ似合ってたんです。『POP VIRUS』という曲のMVでかけてたんです。とんでもなくカッコイイんです。
星野源リスペクトという心持ちで挑んでもいいかもしれない。推しへの愛をガソリンにして。

◎ ◎

そうして私は「今年の夏こそ!」と意気込み、ついさっきサングラスを通勤リュックの中に押し込んだ。SNSでも「明日からサングラスかける!」とフォロワーに意思表明して、自分の逃げ道をなくしてやった。はじめてかけた日にはご褒美に美味しいクッキーを買うと決めている。

今年こそはやります。今年こそは。

■福々 えぬのプロフィール
穏やかに暮らしたい社会人。 like:シルバニア/書道/読書/映画 Twitter:@tittyai_nikki Instagram︰@hokori793

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