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大人気!「とろサバ」のみりん干しにチャレンジ

  • 2024.6.8

今回伝授してもらったのは、伊東の人気干物店「島源商店」の看板商品の一つ、とろサバみりん干し。静岡の人気リゾートホテルの朝食に出され人気を博している一品だ。脂のしっかりのったサバを臭みなく仕上げる秘密は、漬けダレに加える、ある果物にあった!

大人気!「とろサバ」のみりん干しにチャレンジ

■濃厚でジューシーな看板商品、「とろサバ」のみりん干しをつくろう

無添加天日干しをモットーにする島源商店。その看板商品の一つが“トロさば味醂醤油天日干し干物”。静岡県内の星野リゾートの朝食でも提供され、人気を博している一品だ。

とろサバとはいかにも美味しそうなネーミングだが、とろサバの正式名称はタイセイヨウサバというらしい。北大西洋でノルウェーの漁船が獲ることが多いため「ノルウェーサバ」「ノルサバ」などとも呼ばれ、日本も大量に輸入している。
「マサバやゴマサバとは違う種類です。脂がガッツリあって、ジューシーかつこってり。若かった頃の私なら大好物になっていたでしょう。今はマサバのあっさりした脂のほうが好きですけど」

今日も率直&朗らかな我らが干物師匠の内田清隆さん。トロサバの脂には独特の匂いがある。それを伊豆半島の特産物であるダイダイ(橙)で抑えつつ、みりんと砂糖で味を足したものが「トロサバ味醂醤油天日干し」になるのだ。

■慣れると快感!包丁がスパッと入るサバの大名おろし

アジの干物は開きにするが、サバはアジなどより大きいので、三枚おろしにすると良い。
今回は、手早くできる「大名おろし」を教わった。大名おろしとは、シンプルな包丁遣いで中骨を切り離すおろし方で、普通の3枚おろしよりも中骨に身が多く残る“贅沢な”おろし方であることから、その名がついたと言われる。

□サバの大名おろし

(1)頭を落とす
エラに刃先を入れ、頭を切り落とす。

頭を落とす
頭を落とす

(2)尾を切り落とす

尾を切り落とす
尾を切り落とす

(3)内臓を取り除く
左右の胸ビレの間から包丁を差し込み肛門まで切り目を入れ、内臓をかき出す。

内臓を取り除く
内臓を取り除く
内臓を取り除く
内臓を取り除く

(4)腹の中を水で洗う

腹の中を水で洗う
腹の中を水で洗う

(5)中骨を切り離す
背骨と中骨の上に包丁を滑らせて左右の身を骨から切り離す。サバの骨は固くて、身は柔らかい。慣れてくると、包丁がスパッと入って骨の上を滑り、リズミカルにおろせる。快感だ。

中骨を切り離す
中骨を切り離す
中骨を切り離す
中骨を切り離す
中骨を切り離す
中骨を切り離す
中骨を切り離す
中骨を切り離す

■柑橘入りのみりんダレで、脂の臭みを抑える

みりん干しの漬けダレの配合は、「砂糖:醤油:みりん=1:2:0.2」が島源商店の伝統(前回記事も参照)このタレ4.5リットルに対してダイダイを2個入れる。もちろん、家庭ではそんな大量の漬けダレを用意する必要はない。柑橘の量も適当でOK。内田さんによると、柑橘の香りや果汁は魚にはほぼ入らないからだ。家庭では、砂糖50g、醤油100ml、みりん10ml、ダイダイ1/2個くらいがよさそうだ。

「漬けダレにダイダイを加えるのはサバの臭みを消すためです。味は変わりません。甘く仕上げたいならば、タレの砂糖の量を増やしてください。全体的に味を濃くしたいならば、漬けダレを絡めて置く時間を長くしましょう」

柑橘入りのみりんダレで、脂の臭みを抑える
柑橘入りのみりんダレで、脂の臭みを抑える

■鮮度が良くて脂が多い魚は、浸け時間を長めにする

サバの切り身を漬けダレにさっとくぐらせたら、バットなどに並べて約30分間置く。鮮度がよく脂の多い魚は一般に漬けダレが浸透しにくい。「トロサバは脂が多いので、漬け時間は長めの30分にしています。同じ大きさの魚でも鮮度と脂の量で浸け時間を調整してください」。干す前にもう一度、漬けダレにくぐらせる。

鮮度が良くて脂が多い魚は、浸け時間を長めにする
鮮度が良くて脂が多い魚は、浸け時間を長めにする
鮮度が良くて脂が多い魚は、浸け時間を長めにする
鮮度が良くて脂が多い魚は、浸け時間を長めにする

干し方も基本的に前回のアジのみりん干しと同じ。干し上がったときに光沢が出るように、干す前に表面をなでてキメを整えてから金網にのせ、干し網の中へ。風が当たりやすいように、網の片側に板などをかませて、少し角度をつけてもいい。天候によるが、干し時間の目安は3~4時間。身を指で押してみて指紋がうっすらつくようになったら、さらに30分ほど干す。身が締まって弾力が出て、押しても指紋が残らなくなったら干し上がりだ。

干す
干す
干す
干す
干し上がり
干し上がり

焼き方もアジのみりん干しと同じ。焼き網をしっかり熱し、身から火を当てて表面をコーティングしながら焼いていく。皮目はお好みで少し焼くだけ。焼いている途中、身の中で脂が沸騰してブシュ!と旨そうな音を立てる。身側を十分に焼いて、皮目は焦げ目をつける程度に仕上げてもらった。

焼く
焼く
焼く
焼く

■とろサバの脂とみりん&砂糖の強い甘味。ロゼワインと合わせたい!

焼き上がったとろサバをすかさず口に入れると、アジのみりん干しよりも明らかに甘い。漬けダレの配合は同じなのだから、とろサバの豊かな脂の甘さなのだろう。骨を取ってある分だけ表面積が大きくなり、身のすき間にも漬けダレがよく浸みていて、最後まで味をしっかり感じながら食べることができた。臭みを全く感じなかったのはダイダイの効果なのだろう。
「ロゼが飲みたい!」

酒好きカメラマン牧田さんが叫んだ。トロサバ味醂醤油天日干しは甘味が強く、脂もしっかりのっているので、厚みのあるロゼワインと合わせたくなったのかもしれない。

家にある柑橘類の半分を漬けダレに使い、もう半分は焼いた干物に搾りかける。そんな楽しみ方をしてみたくなった。

とろサバみりん干し
とろサバみりん干し

――教える人

「内田清隆(「島源商店」専務)」

1977年生まれ、東京都江戸川区出身。2005年、妻の実家である「島源商店」に入社。旬の魚を目利きし、脂乗りや身の厚さに応じて仕込み、干し台の向きや干し時間を天候によって変えるなど、魚と塩と天日だけを使った干物づくりの伝統を受け継ぎ、「一口食べれば味の違いを実感する」干物づくりに精進している。内田さんの義父である島田静男さんは『かんたん干物づくり』(家の光協会)という一般向けの本も監修。


島源商店
住所:静岡県伊東市松原本町4‐8
TEL:0557‐37‐2968
http://www.shimagen.com/index.html
※明治30年創業の干物店。卸が中心だが、店頭でも購入可能。

文:大宮冬洋 撮影:牧田健太郎

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