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スマホやタブレットを子どもにはどこまで自由に使わせるべき? その前に…【男の子の育て方 対談連載vol.24】

  • 2024.6.7

男の子は自分と性別が違うからわからない……と感じているSTORYママに向けて、「男の子の教育で気をつけるべきことは何か」について、ともに2人の男児を育てている専門家が語り合います。

「フィルターバブル」と「エコーチェンバー」

STORYライター東 中1の息子は小学校高学年の時からiPadを支給されているので、調べ物にもすべてネットを使い、ネットの情報を何でも信じてしまいます。先日も地震が起きた時に「空に龍が通って、地震を予言していたんだって!」と嬉しそうに私に教えてきました。これからが不安です…。

田中 もちろん子どもたちがそういったフェイクニュースやウワサを信じてしまうようなことは問題なのですが、それだけでもないんです。
僕らが大人になり、Windows95が出てからインターネットが当たり前の時代になりましたが、子どもたちに注意してほしい問題が2つあります。それが「フィルターバブル」と「エコーチェンバー」です。
「フィルターバブル」とは、ネットの閲覧履歴を学習したアルゴリズムによって、閲覧者が好みそうな情報ばかりがやってくることで、「エコーチェンバー」とは、そんなフィルターバブルの中で、自分と似た考え方を持つユーザーの声ばかりが集まり、あたかもそれが正しいかのように受け取ってしまうことです。
実は僕もそうなっている部分はありまして…。ヒョウモントカゲモドキの話をしましたよね。

太田 はい。ヤモリを飼育され始めたというお話でした。

田中 そうです。SNSでは「飼育は簡単で長生きをする」と書いてあったのにうちのヤモリの寿命は「2カ月」でした…。

太田 え~!

田中 SNSでは、一生懸命に餌を食べているシーンなどが公開されていて、本当に可愛いんですよ。でも実際に飼ってみると、夜行性で日中は外に出てこないうえに、ご飯もあまり食べない。ヤモリは、1週間ご飯を食べなくても大丈夫な生き物だったのです。全く知りませんでした…。2カ月の間、食べていたのは数回でした。飼育もそれほど簡単ではありません。
僕は「フィルターバブル」と「エコーチェンバー」について大学で偉そうに話をしていたのに、僕自身が引っかかってしまった(笑)。良い場面だけの切り取りだけを見て、それを信じ込んでしまいました…。

太田 まんまと、みんな騙されていそうですよね。

限られたものしか見ていないのは大人も同じ

田中 だから思うのですが、大人が子どもに「こうだよ」と教えてあげるだけでなくて、僕らも一歩立ち止まって考える必要があります。
「自分だけは絶対に詐欺に引っかからない」「どうしてオレオレ詐欺なんかに引っかかるんだよ」と思いがちですが、それでもやっぱり騙されてしまう。「今の子どもたちは安易にYouTubeやSNSの話を信じちゃうよね」と侮るのではなく、僕らが本当にメディアリテラシーをしっかりと身につけて、子どもたちと向き合っていかなければなりません。
うちの子どもは、まだスマホを持つ年齢ではないのですが、太田さんは何かそういうご経験があったり、懸念されてることはございますか?

太田 おっしゃるとおりで、確かに大人も偉そうなことを言えないですよね(笑)。SNSどっぷりになってしまうし…。
やはりネットの情報には本当に気をつけないと、人の感性を歪めてしまうと思います。「限られたものしか見ていない」という自覚をもっと持たなければいけないのですが、それは大人でも難しいことですよね。

田中 そうなんです。

太田 大人もエコーチェンバーの中にいるんですよね。SNSを使う目的が仲間とのやり取りや情報交換のためで内輪のやりとりであっても、タイムラインに自分と同じような感覚の人のコメントばかり流れてくると、なんだか世の中全体そういう意見の人が多いような錯覚に陥っちゃったり。一方で、実は誰でも見られる場でやりとりをしているわけですから、内輪のつもりでもアンチからの思わぬ攻撃も来ますしね…。
私も、子どもとネットの付き合い方をどう考えるかは試行錯誤です。ネットと完全に無縁というわけにもいかないですし。どうすればいいのか、まだまだわからないですね。

STORYライター東 小学校高学年の子どもがいるママたちの中には、スマホを持たせることに躊躇している人もたくさんいます。SNSによる事件もニュースになっているので、どうしたらいいものか…。

大人だって夢中になってしまうSNSの魅力

田中 デジタル端末でいうと、太田さんは子どもが何歳の時にスマホを持たせましたか?

太田 上の息子が中学生になり、塾に行き出してからですね。1人での行動半径が広がった子どもの居場所をGPSで追うことができますから。
もちろんスマホがない時代にも、子どもは塾に行っていましたし、なかったらなかったで何とかするのでしょうが、子どもの安全性向上のために使える便利な機能があるなら、使わない判断は難しいですね。
例えば大地震が起きたような時に、どこにいるかを知っておきたいということもあって…。
私がシングルマザーで、子どもたちが家で留守番する機会も多かったことも、うちはスマホを持たせる時期が結構早かったことの理由のひとつですね。

田中 確かにGPSがあると親にとっては安心ですよね。ただインターネットの普及については、「どう使いますか?」といった使用ルールや倫理的な基準がはっきりしないまま曖昧に進んでしまっています。ネットサービスが始まった最初は、インターネットのことがよくわからないおばあちゃんたちにも、「タダだから持っていって!」などと言って、携帯電話を0円で配っていたような時期もありました。
でも結局のところ、最悪なのはSNSの誹謗中傷で亡くなる方も出てきました。インターネットは便利で儲かるけど、やはり僕たちが歯止めをかけるようなルールが必要ですね。僕も最初はデジタルデトックスを馬鹿にしていたのですが、僕がすっかり騙されたということがあってから、その必要性を感じます…。

太田 私もXのアプリを削除した時に感じました。Xアプリが入ってると、移動中でも常に意識してしまいますね。

田中 そうそう。通知が来るんですよね。

太田 そうなんです! そうやって、そわそわさせる仕組みなんです。

田中 それで届いたコメントを開いてみて酷い悪口が書いてあると、本当に傷つきますよね。
やはり世の中はインターネットに限らず、「儲かるから」という理由で推進されてしまうことが、大変多いと思います。それに対して、僕ら大人が何かしらの歯止めをかけなければならない。儲かるから以外の理由で。
先ほど太田さんがおっしゃっていましたが、ネットには人間関係を歪め、ものの見方を歪めてしまっている面がたくさんある。気を付けなくてはなりません。

太田 SNSとは少し違うのかもしれませんが、うちの息子はゲームの「フォートナイト」でオンラインチャットをしています。仲間と協力し合って相手を倒したりするのが楽しそうで、横で見ていると、確かにあれはひとつのコミュニケーションなんだと思います。視力や姿勢には気を付けてほしいし、課金をしたくなる仕組みに注意が必要ですけれど、ゲーム自体の制限は、私はしていないです。リアルなコミュニケーションと同じで、チャット内で意地悪が起きることもあれば、優しく助け合うようなこともありますね。

田中 これまでは、学校が別れてしまうと、仲が良かった友達と連絡が取りづらくなっていました。それを考えると今はスマホで繋がりを保つことができるので良いのですが、それ以外の使い方を同時に規制できないところが気になります。SNSでは、子どもが誰とどのように繋がっているか、わからないですからね。携帯やスマホを渡す年齢は難しい問題だと思います。以前、タブレットを使っていた息子がYouTubeでアダルト広告を見ていた話をしましたが、スマホの場合は、なおさら目にしてしまう危険性があると思います。

太田 連絡先がスマホに残っていると、今の時代は周りの人と「完全に連絡先がわからなくなる」ということが少なくなりました。人生を重ねるごとに、LINEグループがどんどん増えていきます。

田中 おそらく可視化されているだけなのかもしれませんが…。

太田 LINEグループから抜ける時も、いちいち「抜けます」とご丁寧に意思表明をするかどうかという選択肢も生まれてますね。ずっと既読をつけなくなるということでなんとなく抜けるということもあるでしょうが、「既読がつかない」ということが可視化され続けるともいえ、自然消滅とかフェードアウトが前よりしづらいようには思います。

取材/東 理恵

太田啓子/ 弁護士。高校生と中学生男児の母。離婚問題、セクハラ事件などに多く関わる。弁護士業務と育児の経験を基にした、ジェンダーにまつわるSNS投稿が反響を呼ぶ。性差別、性暴力について次世代についてどう教えるか悩みつつ書いた子育てエッセイ『これからの男の子たちへ』(2020年/大月書店)が話題になり、韓国、台湾など4か国で翻訳。©吉澤健太
田中俊之/ 社会学者。大妻女子大学人間関係学部准教授。専門は男性学。『男性学の新展開』(2009年)、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(2019年)など著書多数。競争社会、労働問題など「男性が男性であるがゆえに抱える問題」「男らしさ」「男は弱音を吐かない」などの解放を推奨する。ジェンダーや男性学の視点から男女とも生きやすい世の中を研究。私生活では小学生と保育園男児の父。

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