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新垣結衣さん「“もっと楽しもう”と現場で思えるように」/映画『違国日記』インタビュー

  • 2024.6.8

年齢も性格も異なる他者との関わりを丁寧に見つめた映画『違国日記』。ヤマシタトモコさんによる原作コミックのファンでもあるという、新垣結衣さんが本作への思いを語ってくれました。

『違国日記』ならではの言葉選びに惹かれました

他者と完全にわかり合うことはできないけれど、お互いを認めて、歩み寄ることはできる——。
小説家の槙生と、その姪で高校生の朝。朝の両親が亡くなったことで始まったふたりの暮らしと、家族とも友人とも異なるかけがえのない関係性を描いた、映画『違国日記』。槙生を演じた新垣結衣さんは、出演が決まる前からヤマシタトモコさんの原作コミックを読んでいたそう。

「原作の好きなところは本当にたくさんあって、すべて言葉にするのは難しいのですが……。なかでも魅力を感じているのは、『違国日記』ならではの言葉選び。槙生が小説家というのもあるのか、選ぶ言葉にすごく“らしさ”があるなと思います」

とりわけ新垣さんにとって印象的だったのが、「私の姉への怒りや息苦しさをあなたは決して理解できない。私が、あなたの焦りや寂しさを理解できないのと同じように。あなたと私は、別の人間だから」という槙生の言葉。

「それを言われた朝ちゃんはショックを受けたかもしれないけど、決してネガティブな言葉ではないと思うんですよね。人と関わるうえではすごく大事なことだと思うし、今後も自分の心に留めておきたい言葉だと思っています」

わかり合えなくても、同じ時間を過ごすことはできる

わかり合えないからといって、そこで関係が断絶するのではなく、違う人間が交わるからこそ、得られるものもある。それも本作で伝えたいメッセージのひとつです。

「槙生と出会う前の朝はお母さんがすべてだったけれど、槙生と出会ったことで世界が広がる。槙生にとっても、朝は不仲だったお姉さんの娘でもあり、自分のトラウマを刺激する存在だったかもしれない。でも朝と出会ったことで、それまで味わったことのない感情を知ることができた。違う人間だけど、一緒にいることでお互いの世界が広がっていくんですよね。その心地よさが見てくださった方にも伝わればうれしいです」

槙生をはじめ、朝を取り巻く大人たちは決して完璧ではなく、不完全なひとりの人間として描かれます。

「登場人物それぞれに境遇も違うし、100パーセント理解し合うことはできないけれど、一緒に話をしたり、美味しいごはんを食べたりして、同じ時間を過ごすことはできる。トラウマを抱えたまま、一日一日を大事に過ごしている人たちの姿がすごく素敵だなと思います」

人づきあいが苦手、と形容される槙生についても、「決して人間が嫌いなわけではない」と新垣さん。

「ファーストコンタクトでは戸惑うこともあるけど、そこを超えたら、相手としっかり向き合う人だと思うんです。ひとりの時間も大切にしているけど、誰かと過ごす時間も大事にしている人だと思います」

振り返ったときに「いい時間だった」と思えるように

10代でデビューして以来、俳優として第一線で活躍してきた新垣さんですが、今に至るまで変わらないのは、常に最善を尽くすこと。

「どの仕事でも、今、自分にできることをやる。それしかできないと思っているので。ただ、前と比べて変わったのは『もっと楽しもう』と思うようになったこと。私は初めてのことに対して怖がりなところがあって、新しい作品の現場はいつも緊張するんです。でも最近は、新しい現場でも意識的に楽しもうと考えるようになりました」

そうやって現場での意識を変えたことが、お芝居にもいい影響をもたらしている、と新垣さん。

「私は変に力んだり、気合を入れたりすると、緊張にのまれてしまうんです。でも、楽しもうと意識したことで、適度に力が抜けるようになりました。どの現場も大変なことはたくさんあるし、楽しいだけでは終わらないけど、それでも振り返ったときに『いい時間だったな』と思えるように過ごしたい。今回の映画もそう思える作品であり、現場だったと思います」

#新垣さんに最近のこと、聞きました! Q&A

━━Q.最近のマイブームは?
プライベートではほとんどノーメイクだったのですが、最近はメイクをしたいなと思うようになりました。ただ、お仕事ではプロのメイクさんがしてくれるので、ちゃんとやり方をわかっていなくて。自分なりにアイラインやハイライトを入れてみたり、似合う色のアイシャドウを探したり……といろいろと試すのが楽しいです。

━━Q.休日の過ごし方は
睡眠をいちばん大事にしているので、撮影の合間の貴重なオフは可能な限り寝ています(笑)。あとは、家を整えること。疲れた状態で整っていない家に帰ると余計に疲れてしまうので、居心地のいい空間になるように心がけています。もちろん面倒だなと思うこともありますが、苦ではないですね。むしろ家をきれいに掃除することが、ストレス解消にもなっています。

━━Q.いま、作品選びで大切にしていることは?
自分がその作品に興味を持てるか、描かれる世界観を知りたいと思えるか……。そういうことを大事にしています。でも、すべてはご縁だと思います。

映画『違国日記』

監督・脚本:瀬田なつき/原作:ヤマシタトモコ/出演:新垣結衣、早瀬憩、夏帆、小宮山莉渚、中村優子、伊礼姫奈、滝澤エリカ、染谷将太、銀粉蝶、瀬戸康史/現在公開中

累計販売数180万部を突破したヤマシタトモコさんの同名コミックを映画化。両親を事故で亡くした15歳の田汲朝(早瀬憩)。小説家の高代槙生(新垣結衣)は、葬式の席で心ない発言をする親族の態度に耐えられず、たらい回しになっていた朝を引き取ることに。対照的なふたりの同居生活は戸惑いの連続だったが、日々を重ねるうちに距離が近づいていく。

新垣結衣さん Profile

1988年生まれ、沖縄県出身。2007年に公開された主演映画『恋空』がヒットし、第31回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年の出演作に映画『劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』『ゴーストブック おばけずかん』『正欲』、ドラマ「コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」「リーガル・ハイ」「逃げるは恥だが役に立つ」「獣になれない私たち」、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」「風間公親-教場0-」などがある。

シャツ¥53,900、エプロンドレス¥42,900/すべてザ リラクス(ザ リラクス)、ピアス¥7,700/ロニ(ロニ)

photograph:Emiko Tennichi styling:Yoshiaki Komatsu(nomadica) hair & make- up:Asuka Fujio(kichi) text:Hanae Kudo

リンネル2024年8月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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