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人は不要不急なものに救われていることを再認識させてくれるコロナ禍備忘録『腐女医の医者道! これが私のニューノーマル編』

  • 2024.6.7
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「外科医やってマンガ描いて夫と3人の子どもと楽しく暮らしています」このプロローグの文字だけでもパワフルさに圧倒されてしまう! 医師として働きながら子どもを3人育ていているだけで大変さが伝わってくるのに、更にマンガを描いているなんて! 一体いつ寝ているのだろう? と疑問がわいてくる。パワフルでバイタリティ溢れるさーたりさんが描く『腐女医の医者道! これが私のニューノーマル編』(KADOKAWA)は、医師、母そしてオタクとしてコロナ禍をどう過ごしたかを描いた『腐女医の医者道!』シリーズの4作目だ。

腐女子の女医で「腐女医」。腐女医である作者のさーたりさんは外科医として勤務する現役の医師であり、同じく外科医の夫と3人の子どもと暮らしている。実は医師はオタクが多かったり、知られざるドクターヘリの裏事情や、女性の医師は合コンでモテないといった現役医師だからこそ知る世界を覗き見できる「腐女子の医者道!」シリーズ。医師としてだけでなく母親として、そしてオタクとしての視点からも楽しめるのが本シリーズが人気な理由である。4作目となる本作ではコロナ禍で激変した医療現場と家庭環境、そしてオタ活事情が描かれる。

他国の話だと思っていた感染症が、あれよあれよとパンデミックと化し、新しい生活様式を取り入れるようになった数年。外出自粛や臨時休園など、仕事も家庭も今まで通りにいかなくなった日々は記憶に新しい。本作ではコロナ禍において医療従事者の大変さや苦悩が、さーたりさんらしくユーモア交えて描かれる。

リモートワークやオンライン会議にもすっかり慣れ、働き方が多様化した。また令和の小学生はデジタルネイティブとして、どんどん新しい環境に対応していっている。こうして今までの非常識が常識となっていくことは、選択肢が増えたり、簡略化されたことで時間や手間が減ったり、悪いことばかりではない。

とはいえ、心の帰省でもあるコミケが開催されないことが何より辛いオタクであるさーたりさん。オタ活できないコロナ禍のオタクたちはどうしていたのか? 彼らはオンライン同人誌即売会という新しい発明を生み出していた! もちろんさーたりさんも思いっきり楽しみ、さらにオンラインなら老後も参加できると希望に変える姿はさすが。

さーたりさんは医師、母として、そしてオタクとしてもどんな状況下でも楽しみを見つける天才である。

医師と3人の子育てだけでも体力気力も限界を迎えそうだが、さらにオタ活をしてマンガも描くバイタリティはどこからやってくるのだろうか? 自分ならどれを減らそうかと考えてしまいそうだが、さーたりさんにとっては母としての幸せ、医師としての幸せはもちろん、オタ活による幸せも大事で、仕事、家庭そして趣味の全てが循環することでうまく回っているのだ。子育て中はつい自分のやりたいことは後回しにしてしまうが、欲張っていいんだよ! 自分が幸せでいることが大事だよ! と働く母にパワーをくれる。

新しい感染症は10年周期でやってくる、とも言われている。恐ろしい話だが、過去の歴史からもきっと避けられない事実だろう。だからこそ今回の経験や学びをその時に活かすべく記録として残すことが大事になってくる。人は「不要不急」なものにどれだけ救われているかを再認識できる本作は、医師としての視点だけでなく母、オタクとして非常事態を生き抜くための貴重な備忘録だ。

文=ネゴト/ Ato Hiromi

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