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令和相槌集『新婚さんいらっしゃい!』/テレビお久しぶり#103

  • 2024.6.7
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「テレビお久しぶり」 (C)犬のかがやき
「テレビお久しぶり」 (C)犬のかがやき

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長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『新婚さんいらっしゃい!』(毎週日昼0:55-、テレビ朝日系)をチョイス。

令和相槌集『新婚さんいらっしゃい!』

そういえば、リニューアルされてから一度も見たことのなかった『新婚さんいらっしゃい!』。結婚したばかりの夫婦に話を聞くという単純明快な構成そのものは変わっていないが、番組の顔だった桂三枝と山瀬まみから藤井隆と井上咲楽へと演者が変わっている。他にも変わっているところがあるかもしれないが、私には分からない。というより、これほどシンプルで歴史ある番組、もはや変わりようもないだろう。

2024年6月2日放送回では、ふたりそろって同じものにハマっている新婚さんが二組登場する。コブクロファン同士の新婚さんと、オリックスバファローズファン同士の新婚さんだ。これはうらやましい。夫婦に限らず、同じものに熱中できる仲間がいるというのは特権だ。人間の多様さには驚かされるばかり、”好き”というレベルならそれなりに共通もするだろうが、熱中ともなると話は別だ。他人というのはホント、わけの分からないものにばかり熱中している。とても相容れそうにない。そもそも熱中という概念が存在しない人だっている。そんな中で、同じものに熱中する者同士が出会い、結婚したのである。奇跡といっても過言ではない。それだけ、人と人は、同じものに熱中したりはしないのだ。

さて、私は、この『新婚さんいらっしゃい!』に相槌番組としての魅力を見た。登場する新婚さんはもちろん素人で、たどたどしく緊張する様子を見せながらも、ふたりの馴れ初めを語っていく。その語りに対し、ホストである藤井隆と井上咲楽が、相槌を打つのである。至極当然の話ではあるが、喋る側として見慣れている芸人が聞き役に徹する姿というのはなかなか興味深い。コミュニケーションというのは何よりも”聞くこと”が大事である。いくら面白いことを言えたって、ロクに相槌を打てなければコミュニケーションの未来はない。そこまで切羽詰まる必要もないだろうが、自らのコミュニケーションを研ぎ澄ませたいと常に考えている私にとっては、『新婚さんいらっしゃい!』を、”令和相槌集”と捉えた。これは的外れな捉え方では決してない。結婚も相槌も、コミュニケーションそのものであるからだ。

人生はコミュニケーションである。コミュニケーションで始まり、コミュニケーションで終わる。番組内で、コブクロの大ファン同士である新婚さんによって『永遠にともに』が歌われるが、”共に歩き 共に探し 共に笑い 共に誓い 共に感じ 共に選び 共に泣き 共に背負い 共に抱き 共に迷い 共に築き 共に願い”という一節は、明らかにコミュニケーションを歌っている。コミュニケーションに始まり、コミュニケーションに結実する、そんな人間の生を、改めて見せつけてくれる番組である。

■文/城戸

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