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門脇麦の憂いある表情に注目『オールド・フォックス 11歳の選択』本編シーン

  • 2024.6.7
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侯孝賢(ホウ・シャオシェン)プロデュース、台湾ニューシネマの系譜を受け継ぐ俊英シャオ・ヤーチュエン監督による台湾=日本合作映画『オールド・フォックス 11歳の選択』が6月14日(金)より公開される。このたび台湾人役で大抜擢された門脇麦の出演シーンが解禁された。

【写真を見る】門脇麦が瞳に憂いをたたえたヤンジュンメイ役を熱演

【写真を見る】門脇麦が瞳に憂いをたたえたヤンジュンメイ役を熱演 [c]2023 BIT PRODUCTION CO., LTD. ALL RIGHT RESERVED
【写真を見る】門脇麦が瞳に憂いをたたえたヤンジュンメイ役を熱演 [c]2023 BIT PRODUCTION CO., LTD. ALL RIGHT RESERVED

バブル期の到来を迎えた台湾。11歳のリャオジエ(バイ・ルンイン)は、父(リウ・グァンティン)と2人で台北郊外に暮らしている。自分たちの店と家を手に入れることを夢見る父子だったが、不動産価格が高騰。リャオジエは現実の厳しさと、世の不条理を知ることになる。そんなリャオジエに声をかけてきたのは、“腹黒いキツネ”と呼ばれる地主のシャ(アキオ・チェン)だった。他人にやさしい父と違い、他人なんか見捨てろと言い捨てるシャ。果たしてリャオジエは、どちらの道を歩んでいくのか?

『悲情城市』(90)でヴェネツィア国際映画祭グランプリ、『黒衣の刺客』(15)でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞、小津安二郎への敬愛から『珈琲時光』(04)を製作し、2023年10月には引退を発表した侯。そんな侯監督作品の助監督を務めたヤーチュエンが監督を務めた本作。これまでのヤーチュエン監督作すべてのプロデュースを侯が務めており、本作が最後のプロデュース作となる。2023年の第60回台北金馬映画祭で監督賞、最優秀助演男優賞(アキオ・チェン)、最優秀映画音楽賞、衣装デザイン賞の4冠を達成。5月16日に発表された、2024台北電影奨では、本作が10部門でノミネートされた。

主演のリャオジエには『Mr.Long/ミスター・ロン』(17)などで日本でも知られている日台のダブルで、台湾では“神童”と呼ばれている天才子役ルンイン。そして日本でもスマッシュヒットを記録した『1秒先の彼女』(21)のグァンティンがダブル主演としてリャオジエの父親役に扮し、慎ましやかに支え合いながら生きる父子役を演じている。リャオジエに影響を与える“腹黒いキツネ(オールド・フォックス)”と呼ばれる地主のシャ役には、本作で台北金馬映画祭最優秀助演男優賞に輝いた台湾の名バイプレーヤー、アキオ・チェン。シャの秘書役に『怪怪怪怪物!』(18)のユージェニー・リウ。そして、門脇が経済的には恵まれているが空虚な日々を生きる人妻ヤンジュンメイを演じ、初の台湾映画出演を果たした。

解禁されたのは、10代から台湾映画を見続け台湾映画に出ることが夢だったという門脇の登場シーンだ。門脇が演じるのは、グァンティン演じるタイライの幼馴染ヤンジュンメイ。かつて2人は淡い恋心を抱いていたが、その想いは成就することなく、タイライはレストランで給仕長をしながら幼い息子を男手一つで育てている。一方ヤンジュンメイも結婚して豪奢な服をまとい、宝飾品を身につけ、金銭的には恵まれた暮らしをしつつも、心は満たされない空虚な日々を過ごし孤独を感じている。そんななか、タイライの働くレストランで2人は再会することに。

クリスマスの夜ヤンジュンメイはまた1人食事に訪れていた。賑わう店内、サンタの帽子を被ったタイライは忙しなく働いている、そんな彼を優しい眼差しで見つめるジュンメイ。そしてタイライが彼女のテーブルへ来ると「あなたと息子さんに」とクリスマスプレゼントを渡す。受け取るなり中身を覗き込むタイライを手で制止すると「いまは見ないで。メリークリスマス。お勘定を」とスマートに会計を済ませる。慣れた様子でタイライにコートを着せてもらうと、悲しげな微笑みを湛えながら改めて「メリークリスマス」と伝え合って別れる、というシーンだ。

監督は「あの役には、お嬢様気質でちょっとわがままな感じがして、でも憂いが感じられてどこか孤独の影がある、という人を求めていたのですが、30歳くらいでそういう雰囲気のある人が台湾では見当たらなかったんです。それで、侯孝賢監督から『日本の俳優と仕事をしてみるといいよ』と勧められたことを思い出しました。ちょうど『浅草キッド』を観て、彼女がとてもいいと感じていたのでお願いしました」と語っている。

門脇は「私が演じたヤンさんは寂しい人です。彼女の孤独や悲しみを感じさせる瞳、そこをとにかく心がけました」と語る彼女の言葉が見事に表現されたシーンとなっている。タイライとヤンジュンメイの切ない恋模様の続きはぜひ劇場で楽しんでいただきたい。

文/山崎伸子

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