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「結婚で生活の質が下がるのは確実…」合計特殊出生率0.99の東京で非婚しか選べない女性たち

  • 2024.6.7
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厚生労働省が6月5日に発表した「令和5年 人口動態統計」で、合計特殊出生率が調査開始以降で過去最低の「1.20」へ、東京都は「0.99」と、ついに1を下回った。驚愕の「0.99ショック」を受けて、東京都在住の女性に話を聞いてみた。
厚生労働省が6月5日に発表した「令和5年 人口動態統計」で、合計特殊出生率が調査開始以降で過去最低の「1.20」へ、東京都は「0.99」と、ついに1を下回った。驚愕の「0.99ショック」を受けて、東京都在住の女性に話を聞いてみた。

厚生労働省が令和6年6月5日発表した「令和5年 人口動態統計」で、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は1947年以降過去最低の1.20となった。都道府県別では、東京都が0.99となり、ついに1を割り込む事態となっている。

少子高齢化と言われて久しい。晩婚、晩産を通り越して、今や非婚を選ぶ人も少なくない。この間、政府の少子化対策はまったく功を奏することがなかったようだ。

0人を1人にするより、1人を2人にするほうが楽?

少子化対策がらみで、とある専門家に「子がいない人に産めというより、すでに子どもが1人いる人にもう1人産んでといったほうが実現率が高い」と聞いたことがある。

だから少子化対策は、実質「子育て対策」になっていた。子どもを2人産んだら、3人産んだらと補助を増やしていったのだろう。

ただ、今の世の中、女性も社会に出ている人がほとんど。3人までは産めないのが本音だ。たとえいくらか補助金が出たとしても、3人の子を大学まで出すとしたら、とんでもない費用がかかる。しかも物価が上がって実質給与はどんどん下がり、大都市圏は住宅費用もとんでもなく高い。

「ひとり親世帯」では生活できない厳しい現実

そもそも男女や雇用形態による待遇差を解消する同一労働同一賃金も実現されていないし、ひとり親世帯、とくに母子家庭では子どもを育てていくだけの収入を得ることもできない。

厚生労働省が発表した「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」によると、シングルマザー世帯の平均年収は272万円、シングルファザー世帯の場合は518万円(いずれも社会保障給付金、養育費等を含む)である。これでは母子世帯はやっていけない。

まずは「非正規」という働き方を何とかしたほうがいいのかもしれない。望まない非正規労働から正社員化へ。つまりは昔ながらの働き方である。

現在、日本企業の内部留保(利益剰余金)は約555兆円あるという。こういった資金を労働者にきちんと分配していく必要もあるのではないだろうか。

「子どもが産まれても、そこそこの生活ができる」
「共働きでも安心して子どもを預けるところがある」
「夫婦がそれなりに休暇をとって家族の時間が充実する」
「万が一、離婚しても、なんとか普通の生活はできる」

そんなふうに思える社会なら、婚姻数が増えるかもしれない。今の状況では、「結婚さえしたくない、子どもなんてとんでもない」と考える若者は増えていくだけだ。

東京都の「0.99ショック」に30代女性の本音

「0.99ショック」を受けて、東京在住の独身女性に話を聞いてみた。

「私も産まないだろうなと思います」

そう言いきったのはカナエさん(33歳)だ。現在、恋人はいるが結婚の予定はない。彼が非正規で、「正社員になるまで結婚しない」と言っているそう。カナエさんは正社員だが、仕事量に比して給与は決して高くはない。あげく、奨学金返済も抱えている。

「彼に万が一のことがあったとき、私の収入だけで何とか暮らしていけるならいいんですがとても無理。貧乏だけど子どもがいたら楽しいよねなんていう発想にはなりません。そもそも私は結婚しても姓を変えたくないし。彼が正社員になるのが先か、選択制別姓制度ができるのが先か(笑)」

もはや、時代は「誰もが結婚する」わけではない。結婚も出産も、あくまでも個人の選択なのだ。だからといって、誰もがひとりでいたいわけでもない。結婚を望む潜在意識はおそらく多くの人にあるはず。だからこそ、「選択したくなる」結婚や出産でなければならないのだ。

結婚したら「生活の質が下がる」のは確実

「でも結婚することで生活の質が下がる、一般的に女性の家事負担が増える、いつか相手の親の介護までついてくる可能性があるとなったら、誰も結婚なんてしたくないと思います。

20代で結婚した友人たちの間で、離婚する人も出始めている。妊娠中に離婚した女性もいれば、子どもが産まれてすぐの離婚も。それでも頑張って子どもを育てていこうと思ってるみたいですが、相手は養育費もろくに払ってない。そういう現状を聞くと、結婚以前の問題だなあと感じます」

親世代を見ても、結婚の「お手本」がないとカナエさんは言う。お互いを尊重しあって対等な感覚でいられる夫婦が、本当に世の中にいるのだろうかとさえ思うそうだ。

「私たち世代が心から願っているパートナーシップと、結婚制度の間に乖離(かいり)があるような気がします。制度だけじゃなくて親たちの感覚も。だから結婚に乗っかるのが面倒、なんなら同棲でじゅうぶん。ただ、子どもは持たないようにしたほうが経済的にも精神的にも余裕が生まれる。そんな感じですね」

誰もが、今の生活から滑り落ちないように必死なのかもしれない。その結果、「結婚」や「出産」が排除されてしまうのだ。結婚して子どもを持つのは当たり前という時代ではない。そこをきちんと検討しながらの少子化対策が、今後、生まれてくるのかどうかが待たれている。

<参考>
・「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」(厚生労働省)
・「同一労働同一賃金ってどういうこと?」(連合)
・「【参考】 利益剰余金(2022年度)」(財務省)

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。

文:亀山 早苗(フリーライター)

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