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娘の友達はまさかの「放置子」。早朝に尋ねてくる4歳の少女に振り回された主婦の奮闘記

  • 2024.6.6
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家庭という閉ざされた空間には、表面化しにくい問題がいくつも潜んでいる。もし、他の家庭でのトラブルを感じ取ってしまったら、自分には一体なにができるのだろうか。

『もしかして、近所のあの子は放置子』(まのもなお:漫画、もっち:原作/KADOKAWA)は、そう考えさせられるコミックエッセイだ。本作では、ひとりの主婦が放置子問題に直面。戸惑いながらも解決法を模索する。

一ノ瀬さくらは、夫の両親が持つ土地にマイホームを建て、新生活をスタートさせた。4歳になる長女や生後間もない次女の育児、そして突然訪ねてくる義母への対応に追われ、さくらは毎日、ヘトヘト。だが、それなりに幸せな日々を送っていた。

ところが、長女・ゆりが公園で同い年の少女「みっちゃん」と友達になったことから、日常は変化していく。公園で遊ぶ、みっちゃんの傍にはいつも親の姿はなく、ひとりぼっち。

他の子が使っているスコップを取るなど乱暴な行動を見せることもあったため、さくらはゆりを公園へ連れて行くことを控えるようになった。

すると、みっちゃんはゆりと遊ぶため、早朝からさくら宅を訪ね、おやつをせがんだり、おもちゃを横取りしたりと、身勝手な行動を見せるように。困ったさくらは、ママ友に相談。それを機に、みっちゃんが地元では有名な「放置子」であることを知った。

放置子とは、親から関心を向けられず、ほったらかしにされている子どものこと。よその家へ上がりこみ、トラブルを起こすこともあるという。

みっちゃんの母親・ない子は、我が子が注意されると逆ギレ。そのため、周囲は接し方に悩み、みっちゃんは孤立していたのだ。事情を知ったさくらはますます対応に悩み、みっちゃんへの関わり方により頭を抱えるようになってしまう…。

ひと昔前とは違い、近所付き合いが希薄な今は他人の家庭トラブルにどこまで介入すべきか、線引きが難しい。問題があるように見えても、各家庭にはそれぞれの事情や考えがあるため、みっちゃんのような放置子を目の当たりにした時には、関わり方や支え方に悩んでしまうのが正直なところだ。

もし、そんな状況に置かれた時、自分にはどんなことができ、何をすべきなのだろうか。みっちゃんへの接し方に戸惑うさくらの姿は読者に、そんな問いを投げかけているように思えた。

また、本作に描かれている、主婦業を見下す夫・かずおや義母に対するさくらの反逆も必見。

自分さえ我慢すればいいと思い、耐え続けてきたさくらが心身を疲弊しなくてもいい夫婦関係を求め、夫との関係を再構築していく過程に胸が熱くなる。

そして、変わっていくさくら夫婦と対比して、みっちゃんを取り巻く、ない子夫婦の事情も描かれているため、双方の夫婦関係を通して、自分たちの夫婦仲を見つめ直したくもなるのだ。

子どもが生き生きと安心して過ごせるかどうかは、親自身の生き方や夫婦関係が大きく影響する。だからこそ、まずは私たち大人が心身を削りすぎない生き方をし、話し合いができる夫婦関係を築いていくことが大切。それは結果的に、大切な我が子の心身を守ることに繋がっていくはずだ。

我が子に安心できる家庭だと思ってもらうためには、私や我が家にどんな変化が必要なのだろう。本作は、そんな自問自答も授けてくれる1作である。

文=古川諭香

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