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40キロ痩せて彼氏が出来たら幸せになれると思ってた… “女の幸せ”に囚われ、苦しめられた女性の実体験

  • 2024.6.6
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“ルッキズム”、人を見た目で評価する「外見至上主義」が話題になっている。見た目で人を差別する考え方は間違っていると世界中でルッキズムを見直す動きが進んでいるが、日本にはまだまだその考え方が根深く残っているのが現実だ。自分らしく生きているだけなのに他人から外見をバカにされ、傷ついた経験がある人も多いのではないだろうか。

『40キロ痩せても幸せになれなかった話』(やじまり/祥伝社)は、外見をバカにする男性の言葉に傷つきダイエットで40キロ痩せた作者・やじまりさんの実話を元にしたコミックエッセイだ。本作ではダイエットに成功したのに「幸せになりたい」と思うあまり本質を見失ってしまい、幸せになれなかった作者の経験が描かれている。やじまりさんと同じように外見をバカにされて悩んだことがある人は、1度本作を手に取ってみてもらいたい。

やじまりさんは、幼いころから食べることが大好きだった。中学生になってからは好きなだけお菓子を食べたうえで夕食もしっかり食べていたので、制服のスカートがはけなくなるほど太ってしまった。太ったことは気にしないまますごしていたものの、女子校の友だちに彼氏ができたことで異性との付き合いに憧れを抱いていく。そして、彼氏という存在に憧れながら自動車教習所に通ったことがきっかけで、やじまりさんは自分の体型を意識するように。

やじまりさんは素敵だと思った教習所の男性教官から無視されたあげく、太っている女性を否定する発言を聞いてしまった。そのせいで「太っている自分がだめなんだ」と思うようになってしまう。そんなネガティブな感情にさいなまれ、ついには自分は太っているから幸せになれないのだと考えるようになっていく。実際には「彼氏ができる=幸せなわけ」ではないのだが、彼氏がいる友だちがあまりにも幸せそうだったことからその考えに固執していた。

人の外見をバカにする人間が悪いにもかかわらず、やじまりさんは太っている自分が悪いのだと思い込んでしまう。もし自分が友だちとして側にいたなら、「そんなわけないよ!」と声をかけてあげたくなる。男性に拒否されたことがトラウマとなり、男性との関わりを避けるようになってしまった。そんな中でも唯一話ができたのは自分の外見を知らないオンラインゲーム上の男性で、女性として扱ってくれることで恋心を抱くように。そして、直接会いたいといわれたことがきっかけで、やじまりさんはダイエットを決意する。

痩せることで他人から愛されたいという感情ではじめたダイエットだったが、やじまりさんは次第に自分のためにも楽しめるようになる。「うれしい、もっとがんばりたい」と思いながらダイエットをしている姿を見ると、こちらまで前向きな気持ちにさせられる。2年間の努力の結果40キロものダイエットに成功し、今までは自分になんか似合わないと思っていたおしゃれを楽しめるようになっていた。

痩せたことで彼氏もできて、ずっと憧れてきた“女の幸せ”を手に入れた――はずだった。しかし、彼氏との付き合いは苦しいばかりで、全然幸せになれない。モラハラ気味の彼氏からは「普通の女の子」を押し付けられて、段々自分を押し殺して生きるようになっていた。しかし、自分にきちんと寄り添ってくれる人たちの声を聞いたことで、やじまりさんは自分のことを大切にしようと思えるようになり――。

自分のコンプレックスを解消すれば幸せになれると信じて努力することは、決して悪いことではない。むしろ前向きなその姿勢に、元気をもらえる人もいるはずだ。しかし、周りと比べて「幸せになりたい」と思い込むあまり、自分のことを大切にできなくなっては意味がないのだろう。

自分には価値がないと思い込んでいたやじまりさんにとっての本当の幸せとは、一体なんなのか。本作を最後まで読んでから、自分自身が「今」幸せになるためにはどうすれば良いのかを考えてみてもらいたい。

文=ネゴト/ 押入れの人

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