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愉しい記憶ばかりでおめでたい。食に無頓着な私の思い出アラカルト

  • 2024.6.6
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私は食には無頓着だ。どれくらい無頓着かと言うと、高校時代毎日同じおかずのお弁当を食べていた程だ。入っていた具材は今でも覚えている。まず、解凍したグリンピース・にんじん・とうもろこしが入ったいり卵、次に生姜焼き味のお肉、黒豆、さつまいも、ゆかりご飯だ。お昼の時間に友人に、「みおのお弁当、また芋入ってる~!」と笑われたくらい本当に毎日一緒だった。それでも、好きな物しか入っていなかったから、全く苦ではなかった。

そんな私が一番好きな食べ物は、カルボナーラだ。洋食の中で一番好きなのではなく、食べ物の中で一番好きだ。

ある時まで、自分がなぜカルボナーラが一番好きなのかわからなかったが、ある人に「美味しいものを食べたんでしょうね」と言われ、思い出した。小学校低学年くらいの頃に、祖父とデパートで食べたカルボナーラが美味しかったのだ。まだ小さい頃だったと思うが、パスタに半熟の卵がのった光景を今でも覚えている。

またある時、二十二歳にして初めてティラミスを食べた時のこと。私が「美味しい!」と言うと、「チーズが好きなんだよ。それもマスカルポーネチーズが入っている」と言われた。そうなの?マスカルポーネチーズ?聞いたことはあるけれど、人が言葉にして発しているのは生で初めて聞いたし、食べただけで、入っているかどうかが分かるの??とりあえず、私はマスカルポーネチーズというものが好きだと分かった。

◎ ◎

最初に断っておくが、私は味に執着がないため、今回のエッセイは味にまつわる断片的な思い出のアラカルトになる。

アラカルトという言葉は知っている。「単品」という意味でせう?

大学生の一時期、高級中華料理屋さんでアルバイトをしていたから知っている。アルバイト時代のエピソードにこんなものがある。

ドリンクメニューを教わっていた時のこと。紅茶とコーヒーがあると言う。ホットとアイスがあると言う。ここまでは分かった。だが、紅茶と言われたら砂糖を付けて、コーヒーと言われたらミルクとシロップを付けると言われた。

そこで私はすかさず質問した。「砂糖は何のために付けるのですか?」「ミルクとシロップは何のために付けるのですか?」「なぜ紅茶には砂糖なのですか?」「なぜコーヒーにはミルクとシロップなのですか?」等……。

お店のアイドリングタイムに習っていて、お客さんがいなかったから、声が響いた。教えて下さった方も私も熱心だったから、だんだん声が大きくなっていって、他のスタッフが何事かと様子を見に来るほどだった。

次の出勤日にお店に行ったら、私のそのやりとりが珍エピソードとしてスタッフ中に広まっていた。私はどこが珍なのか分からなかったが。

◎ ◎

こんな私でも、自分で「これはあんまり好きじゃないな」と分かったものがある。それは焼肉だ。ちょっと珍しいかも知れないけれど、苦手だ。なぜ苦手か分かったかと言うと、三カ月の間で三回焼肉を食べた時期があって、その時に胃もたれをしたからだ。

好きな人とのご飯だったから、最初は平気だったが、あるお店はこれまでよりも量が多く、やられた。

最後は嬉しかった思い出。母・私・妹の三人で京都に行った際に、老舗の中華料理屋さんに入って、母にご馳走してもらった。そこは、母方の祖父が、母と叔父たちを連れて行ったお店だそうで、母が清々しい顔で「感慨深いなー」と言っていたのは、ちょっと大げさに言うと、「生まれてきて良かったな」と思った。

味に無頓着な私でも、思い返すと思い出は色々とあるものだ。私の場合は、味に無頓着な分、一緒に食べた人の様子をよく覚えている。愉しい思い出ばかりで、私はおめでたい奴だが、そこが良い。

■ほりみおのプロフィール
國學院大学文学部日本文学科卒業。自宅で文章を書くのが好き。 Instagram:beautiful_culture

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