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実はもう公務員じゃない。価値観の異なる両親には嘘をつき続ける

  • 2024.6.6
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私は今、両親にとある嘘をつき続けている。それも小さな嘘、とは言えないくらいのそこそこ大きな嘘だ。ずばり、自分の現在の職業についてである。

両親は、私が社会人1年目の時から変わらず公務員として働き続けていると思っている。しかし私はとっくに公務員をやめ、別の職場でアルバイトとして働いているのだ。実家に帰省して仕事の話になった時も、びっくりするくらい簡単に思いつく捏造設定で話を誤魔化し、公務員を続けている人間として振る舞い続けている。両親は疑うことなく、私の口から語られる嘘しかない話を信じきっている。

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そもそも、どうして嘘をつくことになってしまったのか。それは、仕事を辞めた原因がパワハラによる精神疾患だったからである。上司との関わりが上手くいかず適応障害と診断され、休職したのちにそのまま退職してしまった私。

最終的に鬱病と診断され、精神科通院と服薬を続けながら、最近やっとアルバイトとして再就職したところである。一時は病院に運ばれるほど大ごとになってしまったのだが、その時ですら両親に伝えなかった。精神疾患で仕事を辞めたと伝えて、両親に肯定的に受け入れてもらえる自信がなかったからだ。

なんて酷い両親なのか、と思われるかもしれないが決してそういうわけではない。両親は本当に優しいし、私のことを愛してくれているのもわかっている。しかし両親は、現在ではDVやパワハラ、体罰などと言われ悪しきものとされている言動があたりまえに行われていた世代の人間である。

ふとした瞬間に、そのあたりの感覚が自分とは違うと感じてしまう。DVやパワハラ、体罰などを許容しているというわけではないが、「自分たちが若い頃はそれがあたりまえだった」とか「最近の若者はメンタルが弱い」とか思っているんだろうな、というのが両親の発言の節々からわかってしまうことが少なからずあるのだ。私と同世代の人で似たような経験がある人も多いのではないだろうか。

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私自身、両親に嘘をつき続けていることはとても苦痛だ。罪悪感もあるし、口からでまかせを言うのも気がひけるし、そのでまかせを真に受けて一喜一憂している両親を見るのも胸が痛い。

しかし、「自分とは感覚が違うから、両親に受け入れてもらえないかもしれない」という不安や恐怖がさらに上回ってしまっているのだ。話してもいないのにあれこれ考えてしまっていて、結局は私の気持ち次第というか、話してみれば案外なんてことないのかもしれない。

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しかしジェネレーションギャップと言えばいいのか、育ってきた環境や取り巻く世論が違うので仕方がないことではあるが、やはりそのあたりの感覚が違うのは致命的である。いつか笑い話くらいのテンションでこの嘘を終わらせることができたらいいなと思っている。

その反面、真実は墓まで持っていくしかないかもしれないという諦めの気持ちがあるのも正直なところだ。世代による感覚の違いって、本当に取り除くのが難しい。その事実に甘んじて、嘘をつき続ける私をどうか許してほしい。

■めんみのプロフィール
ふとした時に文章を読みたくなる、書きたくなる……そんな気まぐれな人間です。 ちょっとした想いを、文章で共有することの楽しさに気づき始めた今日この頃。

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