1. トップ
  2. 恋愛
  3. 松下奈緒さん、いつもとは違う「音」を出したい。映画『風の奏の君へ』でピアニスト役

松下奈緒さん、いつもとは違う「音」を出したい。映画『風の奏の君へ』でピアニスト役

  • 2024.6.6

松下奈緒さんがピアニスト役で、お茶の産地として知られる岡山県美作市を舞台にした映画『風の奏の君へ』に主演します。作曲や演奏も手掛け、⾃分⾃⾝と重なる部分も多く感情を揺さぶられたと話します。どうリンクさせながら演じたのか、美作市の景色にどんなことを感じたのか、うかがいました。

都会にはない風の匂いを感じた

――本作品、『風の奏の君へ』の話を聞いたときの感想を教えてください。

松下奈緒さん(以下、松下): 今回は岡山県美作(みまさか)市が舞台でしたが、地方でしっかりその世界に入り込んで撮影ができるのは映画ならではなので、すごく楽しみだなと思いました。

私が演じる里香(さとか)はピアニストで、私自身も演奏・作曲をするので、嬉しかった半面、自分と共通する部分が自分に味方してくれるのか、ぶつかってしまうのか、最初は不安もありました。特にピアノを弾くシーンは、どこまでが自分でどこからが役なのかその境界線が難しいな、と感じていました。

でも、現地であの景色に触れたときに、「きっと里香はこう感じたんだろうな」とすっと思えたんです。美作の風に吹かれることで、家で台本を読んでいたときには気づかなかった方向性のようなものに気づくことができた感覚がありました。

朝日新聞telling,(テリング)

――撮影は岡山県美作地域で行われました。美作市の印象はいかがでしたか?

松下: 映画のタイトルにも「風」とついていますが、美作で風が吹いたときに、何とも言えない懐かしい匂いがしたんです。森の匂いなのか、緑の匂いなのか……都会にはない匂いでした。空気は澄んでいますし、高台に行けば行くほど風が気持ちよくて、深呼吸がしたくなる。そんな場所が街の中にたくさんありました。自然の中で邪念が取り払われていく感覚もあり、とても素敵で落ち着いた街だなという印象を持ちました。

大谷健太郎監督が美作市で育ったので、撮影前から美作の良いところからおいしいお店まで、たくさん話を聞いていたんです。美作のことを知り尽くし、美作愛に溢れた監督だからこそ撮れる映像があったと思います。「こんな絵を撮りたい」「この場所でロケをしたい」という監督のこだわりを近くで感じて、とてもワクワクしました。

――撮影期間中、現地の方とのふれあいもありましたか?

松下: 数えきれないほどの方々に直接的、間接的にとてもお世話になりました。お茶の工場に連れて行ってくださり、1つ1つお茶を淹れる工程を見せていただくなど親切にしていただきました。行ってすぐの頃に美作の方が淹れてくださったお茶がすごく温かくておいしかったんです。お茶1杯でこんなにも心がほっとできるのか、と思いました。当時まだ寒かったからこそ、余計にその温かさが嬉しかったですね。

私は普段からお茶が好きで、よく飲むんです。今回、甘いもの、少し苦みのあるものなどいろいろな種類のお茶を飲ませていただいたのですが、全部とてもおいしかったです。お茶を作る工程を実際に見せていただき、本当に大事に育てられていることも知りましたし、作り手の思いで味も変わっていくんだな、まだ知らない味がたくさんあるなと実感しました。

「茶香服」(ちゃかぶき=利き酒のようにお茶の特質から銘柄をあてる遊び)のシーンは地元の方にもご協力いただきました。撮影時間が長く、合間合間にみんなで「頑張りましょう」と声を掛け合ったりして、通常のスタジオ撮影では感じられないような、人と人とのつながりを感じることができました。

朝日新聞telling,(テリング)

ピアノも演技もやってきてよかった

――ピアノのシーンは吹き替えなしで実際に演奏されています。

松下: 吹き替えなしでピアノを演奏する自信はあったのですが、やはりその時々の気持ちによって音は変わってきます。里香を演じるにあたっては、自分がいつも松下奈緒として弾いている音とは違う音が出せるといいなと思いながら演奏しました。私と里香の最も大きな違いは、里香は自身の余命と向き合っているところです。岡山の地に来て里香は何を残したかったのか、そこは意識して演奏しました。

――この映画のために「風の奏の君へ」含め、全2曲の作曲も手掛けられたのですね。本映画の主人公・里香も、美作で曲を完成させます。

松下: 撮影に入る前に、美作市に連れて行っていただき、そのファーストインプレッションでメロディを作りました。実際にどう弾くのか、ある程度イメージして撮影に臨みましたが、計算して演奏するものでもありません。岡山の地で共演者の方の声を聞き、距離感を保ってみてはじめて出てくる音があり、そういう意味で、演奏については自分の中でもすごくライブ感がありました。

今回の撮影を通して、音楽はいろいろなことを気づかせてくれるなと改めて実感しましたし、ピアノも演技も両方やってきてよかったなと改めて思いました。

■尾越まり恵のプロフィール
ライター/株式会社ライフメディア代表。福岡県北九州市生まれ。雑誌、WEB、書籍でインタビュー記事を中心に取材・執筆。女性のハッピーを模索し、30代はライフワークとしてひたすらシングルマザーに密着していました。人生の決断を応援するメディア「わたしの決断物語」を運営中。

■大野洋介のプロフィール
1993年生まれ。大学卒業後、出版社写真部に所属した後、フリーランスとして活動中。

元記事で読む
の記事をもっとみる