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幼稚なイメージはもう古い?「オノマトペ」で子どもとのコミュニケーションを“グッと”豊かに!体感イベントも開催中

  • 2024.6.5
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出典:ぎゅってWeb

「オノマトペ」とは、「ニャーニャー」や「ガシャン」など物理的な音を表す擬音語と、「キラキラ」や「ワクワク」といった実際には音を伴わない状態や気持ちを表現する擬態語をまとめた総称。日本は世界でも特に種類が多い「オノマトペ大国」と呼ばれています。子育てをする大人は自然と活用している言葉ですが、幼稚なイメージがあり、子どもが大きくなるにつれて意識的に使わなくなる人も少なくないのではないでしょうか。

オノマトペで日々感じる子育ての課題をクリアできるかも?今回は、普段何気なく使っているオノマトペの実用性について、名古屋大学大学院准教授の秋田喜美先生に聞きました。

7月15日(月・祝)まで東京・ITOCHU SDGs STUDIOで開催中の“オノマトペの可能性を体感できる”イベント「オノマトペ処方展」も紹介します。

お話を聞いたのは…

秋田喜美

( あきた・きみ )

さん

出典:ぎゅってWeb

2009年神戸大学大学院博士課程修了。博士(学術)。名古屋大学大学院准教授。専門は認知・心理言語学。
著書:『言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか』(中公新書)、『オノマトペの認知化学』(新曜社)ほか

オノマトペは人間にしか生み出せない

オノマトペは、その実用性の高さが今改めて注目を集めています。今はAIでも文章をつくり出せる時代ですが、新たなオノマトペはまだ人間にしか生み出せない人間特有のものといわれています。

例えば3歳の子どもがショベルカーの動きを「ばよっばよっばよっ」と表現したという実例がありますが、AIに「ショベルカーの動きをオノマトペで言ってください」と尋ねると、今のところ「ガラガラ、ドシャーン」など、既存の表現をただ組み合わせたものしか返ってこないそう。

オノマトペは効率が良い言葉

オノマトペは一言で端的に物事を表せる効率の良さがあります」と話すのは、認知・心理言語学を専門とする秋田喜美先生。

「例えば子どもに『ぴょんしよう』と言っただけで、どんなふうに飛ぶのかイメージを共有することができます。でも『ぴょん』というオノマトペを使わなかったら、『足をそろえてカエルみたいに大きく飛ぶ』なんて長い説明になってしまいますよね。『ぴょん』なら体の動きに合わせて言うこともできる。『ぴょん』に『する』をつけることで動詞になるわけですが、実は一般的に動詞は名詞に比べて習得が難しい言葉なんですよ」。

確かに子育てにおいて小さな子どもに何かの動作をしてほしい時、「ポイ」や「もぐもぐ」などのオノマトペに、「する」と組み合わせて伝えることが多いもの。

「飛行機も『とぶ』だし、カエルも鳥も『とぶ』ですよね。動作として考えてみると、助走やとぶ距離、体の動きなどいろいろな要素が含まれます。それをぴょーんって言いながら体の動きを見せるだけで、大人がイメージするさまざまな動作を一言で共有できるようになるわけです」。

オノマトペは何に役立つ?

子どもの思考力を育てつつ、言語習得できる

大人は状況に応じて言葉を自然に使い分けますが、例えば「捨てる」という言葉も、「処分する」「投げ捨てる」などさまざまな意味合いがあり、語彙の少ない子どもには抽象的に感じて難しく感じるのだそう。それを「ゴミをポイして」と言い換えることで動作が具体的になり、子どもは行動と言葉を結びつけやすくなることがわかっています。

また知っている言葉がほとんどない小さな子どもでも「わんわん」と聞けば、犬が吠える音と言葉を頭の中で結び付けて、言葉と犬とのつながりを理解しやすくなります。言葉とその意味を結びつけやすいオノマトペは、その音から意味を想像することで、言葉の習得はもちろん、思考力を育むことにも役立つのだそう。

オノマトペはカラダに根差し、感覚に強く結びついている言葉なんですね。そう言った感覚を語彙の少ない子どもが大人に伝えるのは、本来非常に難しいことですが、オノマトペを使えば、かなり具体的で複雑な情報を伝えることができるのが魅力ですよね」。

物を触ったり、嗅いだり、五感を使ってオノマトペを表現してみよう

文字でもニュアンスを伝えられる

「言い方の工夫で微妙なニュアンスを調整できるように、オノマトペは文字を工夫することでもニュアンスを伝えることができます」と秋田先生。

「もこもこ、ふにゃふにゃ、にょろりなど、いずれも柔らかい感じがしますよね。これはひらがなの方が合うし、カチカチやクッキリ、パキン、シャーとかは硬いイメージなのでカタカナが合う。さらにその書体をイメージに近付けて描けば、子どもに文字でニュアンスを表現できることを教えるのにも役立つだろうなと思います」。

オノマトペは文字でニュアンスを表現できる

オノマトペが医療現場で活躍!?

直感的で頼りないイメージから、医療現場で使われるのは避けられることもあるオノマトペですが、最近はその実用性が見直されつつあるそう。秋田先生は今、言語研究からの社会貢献を目指して、医療現場におけるオノマトペについて調べているそう。

「オノマトペを感覚的に使い分ける時、その個人差はきちんと調査されていません。オノマトペは微妙な感覚や感情まで表現できますから、その表現に個人差が小さく、正確性が高い部分があるのなら活用しない手はないですよね」。

「キリキリ」と「シクシク」の痛みの違いや、「チクッ」と「チクーーーーーーッ!」のように感情を込めたニュアンスの区別までオノマトペを使えば可能。「通常の言葉では伝えきれない辛い感覚も、医療の現場で伝えられる可能性がオノマトペにはある」と秋田先生は話します。

日常生活の中でも、小さい子どもの不調を把握するのは難しいもの。普段から子どもとオノマトペで感触などを共有する経験を重ねておくことで、いざという時の違和感や症状を共有しやすくなることも考えられます。

体に違和感があるとき、体調が悪いときにも、オノマトペを使えば、症状を上手に伝えやすくなります

オノマトペは誰でも使いこなせる?

「オノマトペは言い方や言う人の表情の違い、さらに動きを付けることによって、多彩なニュアンスを伝えることができますが、あまりにも独特すぎる音を選んでしまうと全く伝わらなくなります。鳥の鳴き声を『にょにょにょにょ』なんて表現してもきっと伝わりにくいですよね」と秋田先生。

全く新しい表現でも、音がうまくはまれば自由に表現することができますが、伝わりやすい範囲を見極めることも、オノマトペを上手に活用するポイントのようです。とはいえ、豊かな表現力がないと伝わりにくいかというと、そういうわけでもないよう。

「演技力や表現力による影響は多少あるとは思いますが、どんな人でもオノマトペを使えば、ある程度はニュアンスの差を伝えることができるという実験結果が出ています。本能的に習得できる言語なので、無意識に使いこなしているということなんですよね」。

だから気負わずにどんどん使ってみてほしいと秋田先生は話します。

子どもが成長した後のオノマトペ活用法

「実際、2〜3歳児に対してより、4〜5歳児に対しての方が、オノマトペの使用頻度が少なくなるというデータがあります。子どもが『ぴょんぴょん』という言葉を理解したなら『ぴょんしたね、飛んだね』とか『飛ぶよ、ぴょんするよ』なんて同時に並べたりして、『飛ぶ』という言葉を教えるといったことを、親御さんたちは無意識のうちにやっているようなんです」。

そうして大人が使う動詞などを習得した後も、子どもとのコミュニケーションや運動の習得、発想力を育てるなどのシーンでオノマトペは活用できると秋田先生は話します。

実技を教えるならオノマトペはぴったり

「ある程度成長した子ども相手でも、体育の授業や運動部の指導など、実技を教える場面でオノマトペは有効です。例えば何かを『ぎゅっと握る』というニュアンスを伝える時、『ぎゅ』を使わずに説明したら、とんでもなく長くなりますよね」と秋田先生は笑います。

共同作業で情報を共有する時も有効

子どもたちと共同作業をする時にも、オノマトペは細かいニュアンスまで共有するのに役立つと秋田先生。

「例えば運動会の練習などで、一斉に同じようにジャンプすることを伝えるなら、『ピョーン』と言ってジャンプして見せるのが一番早いですよね?息を合わせて一緒に何かを行う時などにもオノマトペはとても役立つと思います」。

オノマトペ処方展では、握力、ジャンプなど、オノマトペの効果を実際に試せるコーナーも

どんなイメージ?創作の場で発想力を育てる

「オノマトペは今までにないイメージや考えを発想するヒントにもなると思います。例えば『テケテケ』みたいな絵を描いてみようとか(笑)。今まで共通認識がないチャットアプリの着信音をオノマトペで表現してみようとか。なんかもっとしっくりくる言い方はないかな?って考えてみるのも楽しいですよね」。

使い方の自由度が高いオノマトペは、SNSなどでも日々新しい言葉が生まれています。新しいオノマトペの使い方を試してみることで、思いがけずモチベーションが上がったり、新しい人間関係が生まれたりすることもあるかもしれません。

出典:ぎゅってWeb

『オノマトペ処方展』概要

主催・開催場所

ITOCHU SDGs STUDIO

開催期間

2024年7月15日(月・祝)まで

公式サイト

https://www.itochu.co.jp/ja/corporatebranding/sdgs/20240401.html
※最新の情報はこちらでご確認を

料金

入場無料

営業時間

火曜〜日曜 11:00~18:00 ※月曜が祝日の場合、翌営業日が休館

アクセス

〒107-0061 東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden B1
東京メトロ銀座線「外苑前」駅4a出口から徒歩2分、東京メトロ銀座線・半蔵門線・都営地下鉄大江戸線「青山一丁目」駅1出口(北青山方面)から徒歩5分

全体監修

今井むつみ先生(慶應義塾大学教授)、秋田喜美先生

医学監修

武田裕子先生(医師・順天堂大学医学部教授)、岩田一成先生(日本語教師・聖心女子大学教授)

取材・文/山田朋子

<ライター/ぎゅってWeb編集部>

のんびりさんが集まる編集部。働くママの毎日をもっと楽しく、ちょっとラクに。そんな情報を朝・昼・晩とお届けします。

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