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「アップデートしたかった。変わるチャンスは自分でつかむ」石原さとみ、眼差しの温度

  • 2024.6.7

主演ドラマ「Destiny」が山場を迎え、全身全霊で難しい役を演じきった映画『ミッシング』は早くも話題沸騰。出産を経てさらにエネルギッシュに、美しく、存在感を高める石原さとみさんが本誌初登場。強い光を放つ眼差しに、心をまるごと持っていかれてしまいそう!

白ドレス 参考商品(アクネ ステゥディオズ/アクネ ステゥディオズ アオヤマ)、イヤーカフ¥24,200(poda/アトリエ ジムル)、リング¥95,700(ソフィー ブハイ/エスケーパーズ アナザーワールド)、ウエスタンブーツ¥53,900(アンスクリア/アマン)

 

白ドレス 参考商品(アクネ ステゥディオズ/アクネ ステゥディオズ アオヤマ)、イヤーカフ¥24,200(poda/アトリエ ジムル)、リング¥95,700(ソフィー ブハイ/エスケーパーズ アナザーワールド)、ウエスタンブーツ¥53,900(アンスクリア/アマン)

映画『ミッシング』が公開中の石原さとみさん。キャリアアップに挑むため、自ら監督に売り込んだという熱意とプロセスをたっぷりうかがいました。

ジャンプスーツ¥66,000(ジャンティーク)、シルバーネックレス¥275,000、パールネックレス¥90,200、右手のリング¥90,200、左手のリング¥77,000(全てソフィー ブハイ/エスケーパーズ アナザーワールド)

本当に覚悟がないと 自分が壊れてしまうような役

——『ミッシング』では、これまで全く観たことがない石原さんを観ることができました。神経を削りまくった作品だと思いますが、完成してみていかがですか?
 
「よく生きて帰ってきたな、と自分でも思います。精神状態がおかしくなっても仕方ないくらいきつい役でしたが、家族がいたおかげで、家が安定剤のようになってくれました。特に私に子どもがいることで、演じた沙織里の心の内を知ることもできましたし、最強の安定剤になったんだと思います」
 
——この作品の出演は、石原さんご自身が熱望されていたそうですよね?
 
「そうなんです。7年前に監督に直談判したのがきっかけです」
 
——直談判! 
 
「そうなんです。どうしても吉田(恵輔)監督と仕事をしたい、と思って、直接お会いして口説きまくったんですが、そのときは断られてしまって……。それから、全く音沙汰がなかったんですが、3年後に『脚本を書きました』とご連絡をいただいたのがこの作品でした」
 
——3年音沙汰なく、いきなり脚本が来たとなると、相当嬉しかったのでは?
 
「もちろん。飛び上がるほど嬉しかったですし、一読して『こういうのをやりたかった!』と思ったんですが、そもそも絶対に私にはオファーが来ない役柄だと思ったので、どうすればこの役に挑めるか、想像力をフル回転させました」
 
——それからさらに時間があいて撮影に入ってますよね? 準備期間だったんですか?
 
「いえ、私の出産を待っていただいたことや、その他にもいろいろなことが重なって時間がかかりました」
 
——出産を経たことで全く違う環境になっての撮影になりましたね。
 
「そうなんです。仕事復帰が見えてきたタイミングで脚本を読み直したら、以前に読んだときと全く違う印象になったんです。ページをめくるのがつら過ぎるし、これは本当に覚悟がないと自分が壊れちゃうと思うほど。だって、目の前にいる自分の命よりも大切な存在がいなくなっちゃうなんて、想像することはできても、どうすればいいのか全く分からないんですから。でも、吉田組にご迷惑をかけるわけにはいきませんし。クランクインするまで怖くて仕方なかったです」

Tシャツ¥19,800(アンスクリア/アマン)、デニム¥75,900(ターン ストゥディオ/ユナイテッドアローズ 原宿本店)、右手のブレスレット 上から:¥410,300、¥376,200、左手人さし指のリング¥210,100、中指のリング¥165,000 (全てハム/エスケーパーズ アナザーワールド)、イヤーカフ¥14,300(ガルニ/ガルニトウキョウ)、シューズはスタイリスト私物

黒ドレス¥77,000、バングル¥154,000(共にジャンティーク)、ジャケット¥107,800(アンスクリア/アマン)、イヤーカフ¥22,000(コールムーン/ショールーム セッション)、リング¥49,500(poda/アトリエ ジムル)

撮影の終盤にようやくこの現場に いられる幸せを実感できた

——難しい役柄ですもんね。
 
「撮影前からスランプで、撮影が始まってもスランプ。だから、監督も私をどう料理すればいいのか迷われている感じがあったんです。あとで聞いた話ですが、監督は撮影開始から1週間くらいして、ようやく現場を楽しめるようになったそうなんですが、私は全くそんなことはなく(笑)」
 
——どのようなアドバイスを受けました?
 
「監督はドキュメンタリーのように撮りたい、と何度もおっしゃっていて。お芝居と素のドキュメンタリーのようなバランスのさじ加減について鍛えていただきました」
 
——子どもを失った母、という以前に、沙織里のようなキャラクターを演じられたこと自体ないですもんね……。
 
「撮影の1カ月ちょっと前のことですが、監督が『こういう人たちだよ』とイメージする方に会う機会を設けてくださったんです。そのとき、私もお酒をいただいて、ざっくばらんにお話をうかがいました。それで、監督が考えている沙織里のバックストーリーみたいなものがちょっとだけ見えてきたのは助かりましたね」
 
——ノーメイクで洗いざらしの髪で、気分次第で感情をそのまま表現しちゃうキャラ。特に夫に対しては率直過ぎるほど率直。
 
「そうですね。実際の暮らしぶりなどをうかがって、沙織里のような女性がどのような気持ちを抱えているのか、すごくためになるお話でした。ですが……とにかくそこからも想像力と体現が追いつかなくてスランプに突入してしまったんですよね」
 
——いつごろスランプを脱したと思いました?
 
「客観的になれた、という瞬間がありました。撮影も終盤に差しかかってきたときに、ようやく状況を客観視できるようになって、『わ!  7年前に一緒に仕事をしたいと自分で行動に移して、私が好きな作品ばかりを撮っている監督の現場にいる!』って幸せな気分になれたんです。私が好きで仕方ない監督の作る世界の一部になっていることを実感できたときに、ようやくちょっとだけ抜け出せたかな、と思います。といっても、ずっとお芝居で泣いていたので、お芝居が終わっても抜けきらない不安がありました」
 
——役が抜けないつらさ、ありますよね。切り替えはできました?
 
「変えるために、クランクアップしたあとすぐに髪を切りました(笑)」
 
——ショート、超お似合いです。
 
「ありがとうございます。沙織里を一番象徴していて、見た目ですぐに変えられるのは髪型ですから。撮影前から毎日ボディソープにちょっとだけシャンプーを混ぜたもので髪を洗っていたので、バッサバサでしたよ」
 
——ボディソープ!
 
「そうそう。でもボディソープだけだとキシキシになり過ぎて、逆にまとまりが出ちゃうんですよ。それで、シャンプーを混ぜてうまいことあのヘアスタイルになる配分を研究しました。ほんと、私はそういうところからしか入れないんだな、とも思ったのですが」
 
——あの髪の毛の質感は、沙織里というキャラクターを端的に表してますよね。
 
「役に入るためにはそういったいろんなことをして肉づけしていないと、私はどんどんと離れて自分に戻ってしまう、と思っているんです。自分にないキャラクターだからこそ、見た目から変えていって安心感を得ているんですよね」

黒ドレス¥77,000、ウエスタンショートブーツ¥110,000、左手のバングル¥154,000、右手のバングル¥63,800(全てジャンティーク)、リング¥49,500(poda/アトリエ ジムル)

流されて生きていくのと、 自分で流れを作るのは違う

——変わるといえば、7年前の直談判は自分を変えたい、という思いから?
 
「そうです。私は自分の伸びしろを信じているタイプですが、あのときはもっと変わりたい、アップデートしたい、という気持ちが強くて。監督の作品は全部好きで、いつかその世界に入りたい、と思っていたからこそ、変わるきっかけをお願いしたかったんです。その場では決まらず、まんまと断られ(笑)。この作品が産後復帰の1発目になりましたが、それがむしろよかったんだと思ってます。出産を経ると、体重が増えるだけでなく、髪の毛が抜けたり、産毛やシミが増えたり、コンディションが全く変わるんですよ。しかも、産後は仕事に復帰するためにキレイにならないと、という努力を一切していなかったので、自分をさらけ出す1年でした。そういう経験をしたあとで、この現場だったのは、ご縁でしかない、と思っています。監督に出会ったタイミングも、この作品に出会ったタイミングも、今では全ていい時期だったんだな、と思えるようになりました」
 
——念願がかなっちゃいましたが、このあとどうするか、何かヴィジョンは?
 
「それがまだ……。まずはこの作品をたくさんの方にご覧いただいて、みなさんがどう感じ取られるかが不安と楽しみで複雑な気分ですね。ただ、この作品の打ち上げのときに、監督をはじめとする吉田組のスタッフのみんなから言われたんですよ。『次が大変だよ、絶対に注目されるから』って」
 
——おっと、さすが数々の問題作を世に放ってきた吉田組の心配。
 
「そうなんですよね。そのときは『どうなんでしょう?』と思っていたんですが、ご覧いただいたプレスや関係者の方々のリアクションを聞いていると、吉田組の言っていることはまんざらでもない、と思うようになりました。だからといって、次どうするか今はまだあまり考えていないので、この作品に出会えたときのように、何かしらのタイミングでいい作品やスタッフ、共演の方々と出会えるんじゃないかな。いや、出会いたいですね」
 
——絶対にオファー殺到しますよ。キャリアアップした石原さんを求めて。
 
「だといいんですけど……。とはいえ、俳優のお仕事だと、変わるチャンスは自分で作ることができるんですよね。しかも、私はすごく好奇心旺盛なのに飽きっぽい性格なので(笑)、何を今自分が求めているのか、この先5年後、10年後にどうなっていたいのか、という目標だけはしっかり立ててるんですよ。流されて生きていくのと、自分で流れを作るのは大きな違いですから、自問自答が一番大事だと思うんですよね。自分の考えがまとまらないと、人には絶対に伝わらないし、変わることもできませんから」

ジャンプスーツ¥66,000(ジャンティーク)、シルバーネックレス¥275,000、パールネックレス¥90,200、リング¥9 0,200(全てソフィー ブハイ/エスケーパーズ アナザーワールド)、ストラップシューズ¥63,800 (ネブローニ)

『ミッシング』 現在、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー中

story_幼い娘の失踪から3カ月、その母・沙織里(石原)は、世間の関心が薄れていくことに焦り、地元テレビ局の記者・砂田(中村)を頼る日々。そんな中、沙織里によからぬ噂が流れ、ネットで炎上してしまう。
監督・脚本:吉田恵輔/出演:石原さとみ、青木崇高、森優作、有田麗未、中村倫也 ほか/配給:ワーナー・ブラザース映画/公開:現在、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー中

profile_いしはら・さとみ/1986年、東京都生まれ。2003年、映画『わたしのグランパ』でデビューし、第27回日本アカデミー賞ほかで新人賞を獲得。NHK連続テレビ小説「てるてる家族」(03〜04)や大河ドラマ「義経」(05)のヒロインを演じることで人気を不動のものに。以後、多くのドラマ、舞台でも活躍。出産後、本作で映画俳優復帰。現在主演ドラマ「Destiny」もOA中。8月28日には映画『ラストマイル』が公開予定。

photo:TISCH[MARE INC.] styling:KEIKO MIYAZAWA[WHITNEY] hair & make-up:AYA MURAKAMI model:SATOMI ISHIHARA interview & text:MASAMICHI YOSHIHIRO
 
otona MUSE 2024年7月号より

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