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「ネガティブな感情も肯定する」Z世代注目アーティストさらさが語る、自分の感情との向き合い方

  • 2024.6.5

デビューわずか1年で大型フェス「FUJIROCK FESTIVAL」に出演し、自身の単独ライブでは追加公演もソールドアウトという、Z世代最注目のアーティスト・さらささん。

彼女が楽曲作りにおいて学生時代からテーマに掲げているのが「ブルージーに生きろ」。「ネガティブな感情も肯定する」という意味のこの言葉は、楽曲の中で表現され聴く人のネガティブな感情を救っている。そんな彼女の魅力に迫った(「」さらささん)。

やりたいことにチャレンジさせてくれた両親のサポートで好きを突き詰められた

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R&BやJAZZ、SOULのテイストを醸し出し、自身で作詞作曲を手掛け、型にはまらず幅広い楽曲をつくりだす。そんなさらささんが音楽に魅了されたのは、幼少期からだった。

「小さいころから音楽が好きで、一日中テレビの前で歌ったり踊ったりしている子でした。初めて買ったCDはディズニーチャンネルで放送している『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』。それから、ミュージカルに興味を持つようになって、小学校から歌やフラダンスを習い始めました。この頃から将来は自分の好きな歌やダンスを仕事にしたいと思っていましたね」

シンガーソングライターでありながら、アート作家、フォトグラファー、アパレルブランドのバイヤーなど、様々な顔を持つさらささん。好きを突き詰められたのは、両親のサポートが大きかったからだという。

「両親はやりたいことは基本的に何でも挑戦させてくれました。高校生の時は、学校終わりにセッションバーに行って歌うのが日課でしたね。両親ののびのびやらせてくれる支えがあって、縛られずに自分の考えや好きなことにチャレンジできていました」

おもしろい大人たちに会うことで、様々な感性を吸収していった10代

そんな10代のころは、積極的に色々な経験を持つ人に会いに行ったという。

「アーティスト以外にも、アクティビストや作家さんなど、色々な人に会いに行きました。自分の憧れている人たちが、どんな考え方をしているのか知ることが楽しくって。『なんかおもしろい大人がいる』って思ったらすぐに会いに行きました(笑)。DEPTのeriさんは19歳くらいのときロールモデルでしたね。eriさんをきっかけに知り合った子とは今でも仲が良くて、最初のEPのジャケットを撮ってもらいました。そうやって知り合っていった人の考え方が、自分の思考に影響していると思います」

並々ならぬ好奇心で外に向かっていっていたさらささん。自身の性格について語ってもらった。

「中高一貫校に通っていたとき、内部組と外部組の温度差みたいのがあって。当時は学校が世界の全てだったから、周りの友達は悩んでいる子も多かったんです。でも私は結構気にしていなくて。人間関係に悩んでいる周りの友達に『仲良くなる人はなるし、ならない人はならないから』って伝えていました。そこで人格が形成された気がします」

若いうちから様々な人たちと触れ合ってきた。でも、心底では違う感情を抱えていた。

「でも根底は繊細なタイプなんだと思います。だから自分の考えを口にすることで、自分に言い聞かせている部分もあったのかもしれません。

一人っ子なので大人ばかりの環境で育ったから、同年代とのかかわり方が分からなくて、予測不可能だったんです(笑)。だから同級生と接すると、『自分は自分だから』『自分は正しい』という思考というよりも、どこかで『自分が間違っているんだ』と無意識に思い込んでいた時期もありました。

『どうしたら仲良くできるのか?』を小学生の頃から、考えていました。でも、そうやって周りの感情を繊細に考えることは疲れるかもしれないけど、人の気持ちに共感できる場面が増えるかもしれない

傷を持っている人って、なんだか魅力的だなって思うんです。だから、傷つきやすいところも魅力に変えようと思っているし、むしろ繊細であるからこそ、完璧であると思っています」

「ブルージーに生きろ」をテーマに、ネガティブな感情を救う楽曲たち

繊細な感情をマイナスに捉えるのではなく、むしろ魅力に感じて大切にしてきた、さらささん。学生時代から「ブルージーに生きろ」をテーマに楽曲作成を行ってきた。この言葉に込められた想いとは?

「“ブルージー”は悲しみや落ち込みから生まれた音楽のジャンル『ブルース』から取っています。ネガティブな部分を見ないようにしがちだけど、受け入れるとか意味があるものだと捉えられたら、ちょっと肩の荷がおりるんじゃないかなって。だからネガティブな部分も肯定しようと、このテーマを立てました。

私は今まで生きてきた経験から、挫折や失敗が自分の人生を良くすることに繋がっていると感じています。10代後半の頃、音楽を一度辞めた時期がありました。当時は、セッションミュージシャンになりたくて、レベルの高いミュージシャンばかりの中で、自分なりに頑張っていたけど疲れちゃって。音楽を聴くのもセッションで歌えるようにするために義務感で聴いていたから、楽しくなくなっちゃったんです。それから一年くらい音楽をやめました。

でもやっぱり歌が好きだったから、もう一回歌いたいと思うようになって、友達が入っていたブラックミュージックサークルに入ったり、自分で曲を作ってみたり、今までとは違う形で音楽と触れ合ったんです。その時、セッションは周りの人に認められたいという想いが強かったけど、その時は友達と一緒に音楽を作ることが純粋に楽しくて、周りにダサいと思われてもいいから、自分の作りたいものを作ろうって考えるきっかけになりました。音楽は自分の中にあるもので『やめる、やめない』ではないんだと気づく転換期になったんです」

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その踏ん張りは自分に価値があるもの?

この転換期をきっかけに考え方にも変化があったという。

「それからは、自分にルールを作らないようにしています。『自分はこういう系統だから、この系統でいなくてはいけない』と思う人もいるかもしれないけど、自分が気持ちよく活動するうえでは、ルールに縛られる必要がないと思っています。例えば、今はR&Bをメインで楽曲を作成しているけど、同じジャンルばかりを作っていく必要はない。明日ロックを歌ってもいいですしね(笑)。

あとは、一つの環境でダメだったから、自分はダメだって思っちゃうのはもったいない環境を変えてみたり、諦めずに探し続けること。同時に、自分のことを深く考えることを忘れずにいれば、自分に合う場所っていうのは絶対あると思うんです。

最近感じるのは、場所を変えることに若いうちから慣れることが大事だなって。周りの友達でも同じところで踏ん張り続けるのが美徳と考えている子も多くて。

努力と我慢は違うからそこを履き違えちゃいけないし、履き違えたまま向かう先には、幸せはあるのか?ちゃんと考えないといけないなって思います。でもそれは育ってきた環境もあって、突然出来ることではないから小さいことでも『これは自分にとって我慢する価値があることか?』を見定める能力を日頃から意識する必要がありますね」

「何者にもならなくていい」。代表曲『ネイルの島』に込められた心の救済

すべての楽曲に「ブルージーに生きろ」が込められているという。特に意識している楽曲は?

「『ネイルの島』は歌詞にある『何者にもならなくていい』『ゆれるだけでいい』という、肩の力を抜くことを意識する考え方が、自分の届かなかったところに届くための近道だっていう曲です。

グレーゾーン』は白黒はっきりつけるというよりも、グラデーションになっている価値観や考え方にこそ人間らしさを感じることを歌にしました。

琥珀という意味の『Amber』は、琥珀の石言葉『陰と陽のバランスを保つ』からもわかりますが、ポジティブなことだけでもダメだし、ネガティブなことだけでもダメ2つのバランスが取れているからこそ、人生が上手くいくという想いを歌にしています。

上の3曲は、自分自身の暗い部分を薄めて救済する想いで書きましたが、『午後の光』は自分のネガティブな部分をストレートにぶつけました。書き方は初めてだったけど、気に入ってくださる方が多くて、ネガティブな気持ちをそのまま受け入れることも、心を癒すひとつの手段だと思います」。

25歳の今、想うことと将来の課題は?

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「忘れがちだけど、すでに全て自分は持っているということを忘れないようにしたいです。私は、幸いなことに両親も健在で、ご飯を食べることができて、音楽を作ることができている。それがとてつもなく幸せだということを忘れないようにしたいですね。

あとは25歳になって、時間の不可逆性を感じるようになりました。時間は過ぎたらもう帰ってこないですし、20代だから30代だからこその感性ってあると思うんですよね。だから今は、25歳の感性で何を作れるのか?を考えています。そう生きていたら、次の年代も楽しみになるんじゃないかな。

未来に対しては、自分の仕事に対して厳しく責任感を持つ必要があると感じます。言いづらいこともしっかり詰めていかなきゃいけないなって。のちのち聞いていなかったじゃ言い訳になってしまうし、一個一個シビアに詰めていくことが重要だなと。今鍛えている真最中です」

海と山に囲まれて育ってきた、だからより良い選択肢を自然と選んでいる

6月5日は「環境の日」。彼女は幼い頃から、環境への意識が自然とあった。その理由は、育ってきた環境だという。

「海と山が身近にある湘南で育ったことや、実家で環境に配慮した製品を積極的に使っていたこともあり、環境について考えるハードルは自然と低かったのかもしれません。環境が汚染されることで、健康被害も起こるし、大好きな動物たちの生態系も崩れてしまう。その中で自分に出来ることがあるなら、ちょっと高くてもいいものを選びたいという感覚が自然だったのかもしれません」。

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ライブグッズでは、自ら古着にシルクスクリーンで加工したTシャツを販売したり、オーガニックコットンを使用したグッズを手掛けている。その活動の裏にはどんな想いがあるのだろう。今後の目標と一緒に話を聞いた。

「私服でも古着を選ぶ機会が多いのですが、その原動力は新しく生産された生地を使って、服を大量生産することに抱く違和感が大きいから。自分の違和感を大切にしたくて、古着をリメイクしたグッズの制作を始めました。表に立っているからこそ、少しでも私の作るものや発信を通して、誰かにとっていい方向に動けたらいいなと思っています。

今は、古着にシルクスクリーンを施す作業は一人でやっているから限定枚数での販売で規模を大きくできずにいたけど、これからは体制を整えて、当たり前に古着を選択できるようになればと思います。

あとはグッズでマイボトルを作りたいと思っていて。ライブの時ってどうしてもプラカップがたくさんゴミになっちゃうから、ライブに持ってきてくれたらドリンクを入れて使いまわししてゴミを減らせるような仕組みが作れたらなと思っています」

今感じられる感性を大切にしながら、楽曲やアートなど様々な方法で表現していくさらささん。それは、間違いなく、同年代や同じ感情を持つ人に響いて救いになっている。これからの20代、30代、どのような表現をしていくのだろう。今後も目が離せない。

さらさ・シンガーソングライター
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湘南の“海風”を受け自由な発想とユニークな視点を持つシンガーソングライター。SOUL、R&B、ROCKなどあらゆるジャンルを内包し、ジャジーでオルタナティブ、どこかアンニュイなメロディと憂いを帯びた歌声で観るものを虜に。高校3年の時に制服のまま出向いた元SOIL&”PIMP”SESSIONS 元晴、勢喜 遊 (King Gnu)、MELRAWらが主催するセッションにてMVPを獲得。本格的にシンガーを目指す。

2022年4月に1st EP『ネイルの島』をリリース。鞘師里保、Michael Kanekoへの歌詞提供をはじめ、さかいゆう、清 竜人、s**t kingz、碧海祐人、gatoなどの楽曲に参加。

悲しみや落ち込みから生まれた音楽のジャンル“ブルース”に影響を受け、自身の造語「ブルージーに生きろ」をテーマに、ネガティブな感情や事象をクリエイティブへと転換。音楽活動だけに留まらず美術作家、アパレルブランドのバイヤー、フラダンサーなど、マルチに活動の場を広げている。12月14日(水)に1stアルバム『Inner Ocean』をリリース。

@omochiningen

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