1. トップ
  2. 恋愛
  3. 恋人や夫婦、家族に本音は必要? 遠慮せず、持続的な関係のためにできること 『9ボーダー』7話

恋人や夫婦、家族に本音は必要? 遠慮せず、持続的な関係のためにできること 『9ボーダー』7話

  • 2024.6.5

19歳・29歳・39歳。節目の年齢を目前にした三姉妹が「LOVE」「LIFE」「LIMIT」の「3L」について悩み、葛藤し、それぞれの答えを見つける過程を描くヒューマンラブストーリー『9ボーダー』(TBS系)。第7話、大庭家の次女・七苗(川口春奈)とコウタロウ(松下洸平)、そして家族の面々が「本音」をキーワードに関係を進展させる。

無理してハンバーグを食べる七苗

幼なじみの高木陽太(木戸大聖)とお昼に親子丼を食べている時に、コウタロウ(松下)から電話で誘われた七苗(川口)。昼食中だとは言い出せず、無理して一緒にハンバーグランチを食べることに。

好きな相手のために、ちょっとだけ我慢する。一緒にいたいから、少しだけ無理をする。相手を大切に思うからこそ滲(にじ)む、ちょっとした自己犠牲。誰しも大なり小なり、覚えがある感情ではないだろうか。

相手への「好き」という気持ちや「会いたい」という願望ゆえの優しさ、思いやりが、ときにはボタンを掛け違うきっかけになってしまうこともある。

七苗とコウタロウの場合は、しっかり相手に向き合い、長く関係を続けていくために「本当のことを言う」と約束し合った。相手に遠慮して嘘をつかないこと。我慢しないこと――。台風のせいで停電してしまった大庭家で、毛布にくるまりながら、そっと言葉を交わし合う七苗とコウタロウは、きっとようやく本音で話ができたに違いない。

恋人や夫婦に、本音は必要なのか。持続的な関係のために、嘘はつかず、正直にいるべきなのか。

大庭家に戻ってきた父・五郎(高橋克実)は言っていた。三姉妹の母が家から出ていってしまうあたりから、夫婦の関係は「話したいこと話さないで、ぶつからないように逃げて、そのままお互い何考えてんのか分からなくなった」と。

相手の心や立場を慮(おもんぱか)り、言葉を選ぶことは大切だ。それでも、遠慮や我慢が優しさや思いやりに取って代わる日がやってくるかもしれない。あまりにも、ぶつかり合うことを怖がっていると。

恋愛=賞味期限があるもの

本音を隠し、自分で自分の本心を見ないようにしている人物がいる。大庭家の長女・六月(木南晴夏)だ。

夫と離婚してバツイチになってからというもの、自身が経営する会計事務所の部下・松嶋朔(井之脇海)のことが気になっている六月。両思いであることに薄々気づいているが、それゆえに、一歩を踏み出せないでいる。彼女は前回(6話)でも、朔に対して、また誰かに期待して裏切られるのが怖い……といった発言をしていた。

「恋愛して高まってる期間は3年くらいしかない」「もうそんな、有効期限があるものに振り回されたくない」というのも、六月の言葉。くわえて、セルフハッピーを標榜(ひょうぼう)し、「一人でも幸せに生きる!」と宣言しようとしていた彼女だけれど、好きな相手に惹(ひ)かれる気持ちを制限するのは、少なくとも健全ではないはず。

確かに、恋愛には賞味期限があるのかもしれない。終わりがあるものに振り回され、他人に裏切られる可能性に一喜一憂するのも、疲れてしまうかもしれない。

それでも、朔のまっすぐすぎる姿勢に、六月は打たれた。彼女のことを想って、六月の好きなおみくじチョコを買ったは良いものの、渡していいのかどうか……と悩んでいるうちに、転んで頭を打ち、病院に運ばれた朔のことを、きっと六月はこれからも放っておけない。

いつか終わってしまうとしても、振り回され、傷ついてしまうとしても、いまの気持ちに素直になる。本音で、相手とぶつかる。それが恋愛だ、と言われたら、受け入れるしかない。

家族になるために必要なこと

恋人や夫婦だけじゃなく、家族にも、本音は必要だ。

正式に大庭家に引っ越してくることになった、三姉妹の弟・品川九吾(齋藤潤)。これまで暮らしていた長野の家を片付けるのも「心配しないでください、やれますから」と七苗たちの手伝いをやんわりと拒む。

七苗たちにとって、九吾は突然あらわれた“弟”だが、それは九吾にとっても同じだろう。いきなり父や姉たちと言われても、助け合うのが家族だと言われても、実感できるまでには時間がかかる。

彼の心をほんの少し前に動かしたのは、五郎と湯に浸かりながら言われた「これだけは保証する。あいつら、頼りになる」という言葉だったかもしれない。

九吾のリュックについているボールのキーホルダーや、大事に残されているグローブから、七苗たちはあることを察した。現在は通信制の高校に通っている九吾だが、本当は全日制の学校で、思いっきり野球をやりたいのではないか。

案の定、九吾は「結構お金もかかるし、保護者会の負担も大きくて……」と、野球を諦めた理由を訥々(とつとつ)と語った。自分の力ではどうにもならない、経済的な理由からやりたいことを制限される子どものつらさが滲み出るシーンだった。

そんな九吾に、七苗たちは言う。「遠慮はなし! 本当のこと言って。私たち家族でしょ」「学校行ったら、何したい?」――。九吾の口から溢(あふ)れてきたのは、部活をやって、友達をつくって、休み時間に喋(しゃべ)って過ごして、寄り道をして遊んで……。そんな、他愛のないことだった。

やりたいことは全部やりな、とまっすぐに伝えてくれる三姉妹の言葉に、五郎の言った「あいつら、頼りになる」がリフレインする。やりたいことを「やりたい」と言っていいんだ、本音を伝えてもいいんだ、と思えることは、九吾にとって家族になるために必要な過程だった。

たまにはすれ違い、喧嘩(けんか)もしてしまうかもしれない。それでも、遠慮して言いたいことを言えず、我慢だけでギリギリ成り立っているような関係よりは、ずっといい。母の思い出を共有しながら、ときに本音でぶつかり合うことで、彼らは家族になっていくのだ。

■北村有のプロフィール
ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。

■モコのプロフィール
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。

元記事で読む
の記事をもっとみる