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小中学生の筋トレ、どんなメリットがある?身長が伸びなくなるってホント?専門家が解説

  • 2024.6.4
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「小学生、中学生は筋トレしない方がいい」「子どものうちに筋トレすると背が伸びなくなる」などの噂話をよく耳にしますが、本当でしょうか。

いわゆるゴールデンエイジ期に筋力トレーニングを行うことで、カラダを痛めてしまったり、身長などの成長を止めてしまうかもと懸念される方は多いかもしれません。

また、筋トレはさせたいものの、正しい方法が分からないという方もいるでしょう。親としてみれば心配なことばかりです。

今回は、子どもが筋トレを行う際の注意点や、年齢別で見た筋トレの選び方をご紹介します。

ゴールデンエイジとは

ゴールデンエイジとは、神経系(脳や脊髄・感覚器)が向上する時期を指し、その時期の運動経験が運動能力を左右するとまで言われています。

プレゴールデンエイジ(5歳~8歳ごろ)

この時期に多くの運動を体験し、動作に対する神経回路を作っておくことで、その後の運動能力を大きく伸ばすことができます。

ただし、長時間集中力が続かない年代でもあります。遊びながらカラダを動かすようなプログラムを短時間でいろいろ行うことが効果的です。

ゴールデンエイジ(9歳~12歳ごろ)

神経系の発達は12歳でほぼ100%となり、さまざまな動作を習得するのがもっとも早い時期です。この時期は多くの動きを習得することで、その後の運動神経を飛躍的に伸ばすことができます。

神経系の発達をグラフにした「スキャモンの発達曲線」(グラフは筆者作成)

ポスト・ゴールデンエイジ(13~15歳ごろ以降)

ゴールデンエイジを過ぎると、身長や体重など骨格の成長が著しい時期に入ります。

この時期は、骨格の急激な変化によって今までできていた技術や感覚にズレが生じ、思うようにカラダを動かせなくなったり、スキルをうまく発揮できない場合があります。

しかし、骨格や筋力の成長とともに反復練習を行うことで感覚は修正され、より力強く、すばやい動作が可能となります。

子どもの運動神経を左右する「コーディネーション能力」とは?

こうしたゴールデンエイジ期に筋トレを行うメリット、デメリットとは。

子どもは筋トレをしていいのか、しないほうがいいのか

子どもの筋トレは成長によくないと捉えられていることが多いでしょう。しかし実際のところ、決して悪いことではありません。

正しい方法で行えば子どもの成長を助け、スポーツのパフォーマンスを向上させ、ケガを予防することができるのです。

成長に合ったメニューであればメリットが大きい

では、悪いとされているのはなぜでしょうか。

理由の多くは「成長を止めてしまう」「筋トレによって関節を痛める」など、子どもの成長に悪影響を与えるとされる情報が広がっているためです。

たしかに大人のようにハードな筋トレを行っても、効果が薄かったり、カラダを痛めやすいという問題はあるかもしれません。

しかし筋トレによって成長が止まることはなく、むしろ運動によって成長ホルモンの分泌が促されるというメリットの方が大きいのです。

関節のケガについては、子どもの成長に合ったメニューを、正しい動作で行わせることが大切です。世界で活躍するトップアスリートが行っているメニューだからといって、そのままメニューを真似するなど、無理なトレーニングを行うとケガに繋がってしまうでしょう。

ところで、子どもの頃から筋トレすると身長が伸びなくなるという噂がありますが、本当でしょうか。

子どもの頃から筋トレすると身長が伸びなくなるってホント?

アメリカ・カリフォルニアで子どもへのコーチ指導を行う角谷剛さんは、自身の教育経験からこう語ります。

「背が伸びなくなるから、ウチの子には筋トレをさせないで」

これは、子どもを入会させるために連れてきた保護者から、筆者が実際に言われたことがある言葉です。

クロスフィットでは、バーベルやダンベルなどを使った筋トレのほかに、走ったり跳んだり、鉄棒やリングなどを使った体操競技のようなエクササイズも行っています。

そのため、筋トレ以外のことだけをやらせてほしいということでした。

クロスフィットとは。効果やメニューの組み方も、自宅でできるトレーニング

この人に限らず、子どもが筋トレをすると背が伸びなくなるという説を信じる人は日本では多いでしょう。実際、アメリカでもけっして珍しくはありません。

正しい筋トレは子どもの成長に悪影響はない

結論から述べますと、筋トレを正しい方法で行えば子どもの成長を阻害することはなく、むしろ逆に成長を促す効果があります。

さらに運動能力を高めて、怪我をしにくい丈夫な体作りに役立つでしょう。

  • 筋トレは自重のみかごく軽い重量で行う

確かに、やみくもに重い重量を担がせるようなエクササイズは成長軟骨に強い負担がかかり、成長を阻害する可能性があります。

とくに、スクワットのような上下方向の動作には注意が必要です。そのため、私たちのジムの子どもクラスでは、筋トレは自重のみかごく軽い重量で行っています。

「筋トレをやったから背が低いのではありません」

余談になりますが、私の身長は160cmで日本人としても小柄。米国社会ではさらにその背の低さが際立ちます。

コーチである私を見て、「ウチの子も背が伸びなかったらどうしよう」という不安を持ってしまう親御さんもいるかもしれません。

ですので、よく次のように伝え、笑いをとると同時に安心してもらっています。

「私が筋トレを始めたのは30歳を過ぎてからです。子どもの頃にやっていたのは野球とサッカーです。筋トレをやったから背が低いのではありません」

「子どもの頃から筋トレすると身長が伸びなくなる」って本当?トレーナーが解説

子どものうちは自重トレーニングがおすすめ

実は、赤ちゃんが大泣きしたり、ハイハイする動作も、筋力を鍛える動きの一種です。

筋トレというと、ダンベルやバーベルなど重りを持って行うウエイトトレーニングが一般的ですが、子どもが行う場合は、自重トレーニングがオススメです。

自重トレーニングというのは、自分の体重を負荷にして行うトレーニング方法のこと。年代別に適したトレーニング内容を見ていきましょう。

幼児期

幼児期は、とにかくたくさんカラダを動かして遊ぶことが大切。遊びが筋トレになっているのです。

すべり台やジャングルジムを登り降りすることで、手や足でカラダを支えたり、バランスを取るなど、さまざまな姿勢で手足を思い通りに動かすことを学びます。

そこから自分のカラダを自由に動かす能力「巧緻性(こうちせい)」が身についていきます。

また、運動遊びを通じて社会性を身に着けることもできます。

運動遊びは、発展してくるとルールが必要になってきます。そのため、遊びの中で社会性を学ぶことができるのです。ルールを守ったり、順番待ちの我慢ができるようになったり。こういったことを、運動遊びの中で学べます。結果、癇癪を起さずに我慢できたり、話を聞けるようになったりしていくのです。

「運動遊び」が子どもの発達や健康のカギを握る4つの理由 より

ケンケンパや鬼ごっこ、縄跳びなどもオススメです。いろいろな遊びを行わせてみましょう。

小学生は簡単な自重筋トレ

小学生、とくに低学年の頃は「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、運動に関わる神経系を発達させる重要な時期です。

筋力トレーニングの効果はまだ低いものの、今後のスポーツ活動においての動作習得のひとつとして、筋トレをとり入れることは有効と言えるでしょう。

  • 座位や寝た姿勢で行える簡単な筋力トレーニングがよい

低学年は骨や関節の影響も考えて、座位や寝た姿勢で行える簡単な筋力トレーニングを行いましょう。そして高学年には、腹筋運動など動きのあるトレーニングをとり入れてください。

中学生は個人に合わせたキツさの筋トレ

中学生は、身長や体重が急成長する時期です。急にカラダが大きくなり、運動の強度も上がります。

筋力トレーニングを行うことで自身のカラダを支える力が身につき、ケガを予防することができます。

  • 負荷設定は個人ごとにメニューを組む

大きくカラダが変化する時期なので、トレーニング内容は細かくチェックし、無理のないようにメニューを組み立て直す必要があります。

また、成長の個人差が大きいため、チームで筋トレを取り入れる場合には、各選手の負荷設定にも注意してください。

この時期は、まだ高重量のウエイトトレーニングは必要ありません。自重トレーニングや、軽めのダンベルを使った筋トレを中心にメニューを作りましょう。

高校生はマシンやウエイトトレーニング

身長や体重の急成長が落ちついてきて、­筋肉の発達が著しい時期になります。この頃から、マシンやダンベル、バーベルなどの用具を使ったトレーニングをとり入れてみましょう。

筋力や運動のパフォーマンス向上につながっていきます。正しい動作を身につけながら、負荷を高めていきましょう。

次は、どの年代の子どもにもオススメの筋トレメニューを紹介します。

子どもにオススメの筋トレメニュー5選

ここでは、子どもにオススメの筋トレエクササイズを紹介します。どの年代でも効果的に行うことができます。

腹筋を鍛える

体育座りになり、胸の前で手を組んで背筋を伸ばします。そのまま、上体を後ろに倒していきましょう。倒せる限界のところで5秒間ほど姿勢をキープします。

体幹を鍛える

腕立ての姿勢で、頭から足までまっすぐにしましょう。腰を反ったりお尻を上げたりしないようにして、姿勢を5秒間キープします。

脇腹や下半身を鍛える

横向きで寝そべり、手でカラダを支え、両足を揃えて床につけましょう。上側になっている足をゆっくり上げます。限界まで上げたら、元の姿勢に戻ってください。反対側も同じように、各10回行います。

お尻や体幹を鍛える

仰向けで寝て両膝を曲げ、頭から膝までまっすぐになるように腰を浮かせましょう。片方の膝を伸ばし、まっすぐになったら元の姿勢に戻ります。左右交互に5セット繰り返します。

体幹を集中的に鍛える

片足立ちになって、両手は床と水平に上げます。浮かせた足を90度にし、その姿勢を10秒間キープしましょう。

背中が丸くなったり、足が落ちないように注意しながら行ってください。

子どもの成長に合わせた筋トレメニューを行うことが大事

筋力トレーニングは正しく行うことで子どもの成長を助け、スポーツパフォーマンスの向上に役立ちます。大人と同じメニューではなく、成長時期に合わせたトレーニングが行えるようメニューを組み立てましょう。

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筆者プロフィール

和田拓巳(わだ・たくみ)

プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。 医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。現在、様々なメディアで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。
日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI

<Text:和田拓巳>

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