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「時間に追われている…」高校生がゆるーく瞑想体験 32歳女性副住職が伝える“こだわりを捨てる”大切さ

  • 2024.6.3

クラス替えなど環境の変化で心がざわつく時期に、仏教を通して、心を穏やかにする体験をしてほしい。

この春はじまった、一般の高校生を対象にした、お寺でのあるプログラムを取材しました。

スマホもない。英単語帳もない。

Sitakke

「なにもしない」30分。イマドキの高校生にはなかなか取れない時間です。

旭山寺の渋谷智海(ちかい)副住職(32)が呼びかけます。

「自分の心の中のモヤモヤを一緒に吐き出してください。不安なこと、恐れていることをふっと口から出していきます」

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北海道旭川市にある高野山真言宗、旭山寺(きょくさんじ)。

でも、地元の人たちは、親しみをこめて「あさひやまでら」と呼びます。

仏教体験のプログラム「ゆる小僧」。

肩ひじを張らず、ゆるく、仏教の修行を体感する。

副住職・渋谷智海さんが、女子高校生と一緒に立ちあげました。

実は渋谷さんは、なかなか異色の経歴の副住職。

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3人姉妹の長女として生まれ、「寺の娘」でありながら、カトリック系の高校・大学へ進学。

卒業後は広告代理店に勤務していました。

もちろん、寺を継ぐ気はなかったといいます。

むしろ、なかなか家族旅行ができなかったことや「お寺の娘」と言われることがいやだったのだとか。

だけど、寺のホームページの作成を頼まれたことがきっかけで転機を迎えました。

仏教の教えが現代の悩みにこたえてくれる「面白さ」に気づき、修行の道へと進んだのです。

「本当に忙しい」時間に追われる女子高校生

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一方、渋谷さんと一緒に「ゆる小僧」を立ち上げた、旭川西高校3年生の梶みゆきさん。

毎日のスケジュールは授業・部活動・受験勉強…。

高校生って、本当に忙しい!

授業が終わると、猛ダッシュでマネージャーをつとめている、野球部の部室に向かいます。

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部活へダッシュ!

「もともと小中学生のときに野球をやっていて、やっぱり野球に携わっていたいという気持ちがまた芽生えて」

部活が終わって学校を出るのは、午後7時すぎ。

JRで1時間ほどかけて妹背牛町の自宅に帰ります。

そのあとは、授業の復習に、受験勉強…みゆきさんの夜はまだまだ長い…。

2年前から、高校のカリキュラムで、テーマに基づく研究・発表=「探究活動」が必修になりました。

授業だけにはおさまらず、放課後、休日にも活動することもあります。

毎週水曜日は5時間目と6時間目にこの「探究活動」が入りますが、「それだけでは全然終わらない」とみゆきさん。

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家に持ち帰って資料をまとめることもめずらしくありません。

「本当に忙しい」

思わずそんな言葉がもれます。

友だちと遊ぶ時間も大切にしたい。学校行事にも積極的にかかわりたい。

「やりたいことはあるけど、体が追いつかないし、時間もないし…。時間に追われている感じがする」

そんなときに出会ったのが、旭山寺の渋谷副住職でした。

お寺に「死」ではない新しいイメージを

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仏教の根本思想にある「手放す」という考え方。

渋谷副住職は、そんな考え方をみゆきさんに伝えました。

「SNSの普及で情報がいっぱいいっぱいになって、シャワーのように浴び続けている。いっぱい持っている情報を手放してみて、ちょっと考え方を変えるきっかけになれば」

「立ち止まっていい」

「自分なりのペースでいい」

仏教を通して心の健康を守る方法を伝えたい。

一方で、お寺離れが進んでいる今の時代…。

コンビニよりも多いと言われる寺院はそれぞれで工夫をしていかなければ生き残っていけない現実もあります。

「お寺=死」ではない、新しいイメージを持ってもらい、若い世代にこそ、お寺や仏教を知ってもらうきっかけになるのではないか。

そうして、渋谷さんとみゆきさんのアイデアを詰め込んで誕生したのが「ゆる小僧」です。

高校生もリラックスしたい

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この日やってきたのは、みゆきさんと同じ高校の同級生5人組。

泊まりがけで仏教の世界をゆるっと体験します。

みゆきさんは「実際にやってみて、すごくリラックスできた。落ち着ける場所って限られているので、ととのう…じゃないけどいろんな高校生にも味わってもらいたい」とゆる小僧への思いを話します。

リラックスしたい、高校生の心をわしづかみにできるでしょうか。

プログラムにある「30分の瞑想」。

渋谷智海副住職がこう語りかけます。

「空海はこんな言葉を残しています。『人には必ず仏の心がある。深海のような穏やかな心を持っている。その心のうえに不安とか焦りとか欲望が渦巻いていて、その心に気付けていない』」

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自分の不安と向き合い一度力を抜く。30分の瞑想には、そんな狙いがあります。

高校生たちについて、渋谷副住職は「一番は将来の不安みたいなものが多いんじゃないかな」と寄り添います。

「やるべきことやっていても、どうしても不安は起きてしまうので、一回吐き出して、フラットにしていく時間があるといいなと思っています」

夕食の時間。カレー作りにお寺は一転、宿泊研修のような空気に包まれました。

そして夜9時。ゆる小僧のメインイベントがはじまりました。

こだわりを捨ててみる

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ゆる小僧のメインイベント。

暗闇の中で、自分の日常と向き合います。

「大切なもの・こと・ひと・場所」を5つずつ紙に書いていって、渋谷さんが話すストーリーにあわせてそれを今度はひとつずつ「捨てていく」。

この取り組みを通して、知らず知らずにこだわっているものに気づき、固執する気持ちから離れることを目指します。

「こだわりをいっぱい持っていて動けないということが多いので、ちょっとずつ減らしていって心を健康にしていく」のだと渋谷さんが教えてくれました。

高校生はそれぞれ壁を向いて座っていますが、「何を書いたか、捨てたかは人に教えない」という前提で、正直な気持ちを吐き出すようにしています。

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こだわっているものを書き出し、ひとつひとつ捨ててみる

これまでに参加した高校生の中には「スマホ」や「推し」と書く人もいれば、「自分の臓器」とか「呼吸」などと、生きていくために必要なものを書く人も。

また、なにを捨てていいかわからずに泣いてしまう高校生もいて、「家族がいかに大切かがわかった」と話をしていました。

渋谷副住職は「自分がこだわっていたことが、もし自分が死んだと思うと、そんなに大切じゃなかったことに気がつく。こだわりがなくなると、楽になることも多いんです」と教えてくれました。

はじめてのお泊まりで、ちょっぴり夜更かしをした5人。

ゆる小僧のプロジェクトも終わりが近づいてきました。

参加した高校3年生も、勉強に追われ、「焦っていた」といいます。

「いったんここで瞑想して、大事なものを見つけられて、呼吸とかをゆっくりすることも大事だと思った」

高校生でも心を解きほぐすことの大切さを知った2日間。

さあ、今日も新しい日常がはじまります。

今後、「ゆる小僧」のイベントは、長期休暇にもあわせて定期的に開催していきたいということです。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年5月1日)の情報に基づきます。

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