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昭和初期に始まる、大阪のレジェンド酒場〈明治屋〉を訪ねて

  • 2024.6.4
明治屋 外観

昭和13(1938)年の創業以来、店前に立ち続けるというブリキの看板には、長い時を語る微妙な凹凸。店内で柱時計の振り子がコツ、コツと時を刻む音も、深い飴色のラワン材のカウンターも創業時のまま。まさに昭和、小津安二郎のモノクロ映画のような空間に身を置けば、誰でも、旅心が震えるだろう。

2011年に一度、移築しているものの、建材や什器(じゅうき)の多くを忠実に移し、店内はまるで往時のまま、というこの居酒屋には……時が培った円熟味と端正さが凜々しく漂っている。

大阪〈明治屋〉外観
阿倍野の駅前ビル内、当世風のモール内。しかしこの暖簾(のれん)の内外は周囲と隔絶し、凜とした空気。

その端正さはもちろん、料理にも、酒にも。きずしのサバも漁港直送。菜の花の辛子和えなど季節野菜の煮炊きものや、湯豆腐などにまで、響く関西ならではの上品な薄口だしの妙は「80歳になる母が毎日、昆布とカツオで仕上げてますからねぇ」と、カウンターで燗付器を預かる4代目・松本英子さん。

酒選びも秋鹿あり新政あり、しかも至って手頃な値付け。「新政は15年ほど前からずっと入れてますわ」と屈託がない。そんな杯と小鉢の数々に触れるうちに、強く深く心に伝わるのは、昭和から受け継がれてきた手仕事の味の誠実さ、正直さというものだろう。空間の風趣以上に、その仕事の実直さと誠実さこそが、〈明治屋〉に八十余年の歴史をもたらした美しく不動の“心”なのだ。

大阪〈明治屋〉店内
「商いは牛のよだれのように細く長く」の家訓を象徴する置物。
大阪〈明治屋〉湯豆腐
湯豆腐。濃密な大豆のコクと優美なだし。感動の350円。
大阪〈明治屋〉菜の花からしあえ、どて焼き
菜の花からしあえ300円、きずし550円、どて焼き500円。カウンターが特等席。

Information

明治屋

住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-6-1 ヴィアあべのウォーク1F
TEL:06-6641-5280
営:13時~21時30分LO
休:日曜・月曜
予約不可
席数:カウンター13席、テーブル22席
ビール大瓶580円。日本酒グラス、燗酒1本とも420円~。

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