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ペアリングでさらに際立つ。旬の香りを映した、幡ヶ谷〈kasiki〉のアイスクリーム

  • 2024.6.4
〈kasiki〉店主・藤田澄香さん

香りを纏ったミルクと果物のアイスが、ドリンクと生み出す、新しい世界

床から天井まで左官で仕上げた、グレージュ一色の空間。カウンターにはお酒のボトルが並び、アイスのショーケースは奥に隠れている。何の店だろうと訪れたお客さんに、「アイス屋なんですよ」と和やかに話すのは店主・藤田澄香さん。

ワインバーやケータリングに携わってきた彼女にとって、アイス作りは料理の延長だ。レストランのデザートに作ったのが始まり。「白いミルクのキャンバスに食材の香りを映す感覚が面白くて」、たちまち夢中に。独学で自身のアイスを確立し、ポップアップから〈kasiki〉をスタート、2022年に店を構えた。

「素材を生かしたいから、ベースは牛乳、生クリーム、砂糖のみ。添加物は使いません」。脂肪分の違う生クリームを適切にブレンドすることで、増粘剤なしでも滑らかに。

少量ずつ作るから保存料も必要ない。ハーブやスパイスの香りを纏(まと)わせたベースに、丁寧に下処理した旬のフルーツをたっぷり混ぜ込み、食材の新たな魅力を引き出していく。さらには果物の冷たいスープなど、皿盛りのデザートも展開し、アイスの可能性を広げている。

ハーブをミルクで煮出す様子
たっぷりの新鮮なハーブをミルクに煮出し、香りを映す。家庭用サイズの小鍋でこまめに作るから味がブレにくく、いつも出来たて。
冷たいメロンスープ
フレッシュシェーブルチーズの濃密なアイスがとろける、冷たいメロンスープ。サンブーカがメロンの青い香りを深める。山梨〈共栄堂〉の「Y22HR_DD」など、スパークリングワインを合わせたい。

旬の香りに満ちたアイスの楽しみをより増幅させてくれるのが、ナチュラルワインやシングルオリジンのコーヒー、お茶とのペアリング。アイスにワインとは意外に思えるが、実際に試すと、ワインの酸味や渋味が果物の味を際立たせたり、奥行きを深めたりしてくれる。

これほどワインと好相性なのは、スパイスやハーブの香りを纏い、果実が生きる藤田さんのアイスならではだ。

コーヒーは「果実味ときれいな余韻が、うちのアイスと似ているんです」と言う福岡〈COFFEE COUNTY〉の豆で淹(い)れる。クリアなコーヒーはアイスの繊細な香りを邪魔せず、フルーティさを相乗する。

〈kasiki〉の店内
柔らかな光が注ぐシームレスな空間は、干田正浩さんによる設計。
〈kasiki〉で提供されるナチュラルワイン
常時8種以上のタイプが異なるナチュラルワインと〈COFFEE COUNTY〉のコーヒー、蔵前〈norm tea house〉のお茶を揃える。

「ペアリングを聞かれたら、アイスに共通する香りがあるものをお薦めしています。でも、こうでなければと厳密に考えるより、自由に選んで新しい味を発見してもらうのが一番」。

アイスのカジュアルさはそのまま、ペアリングがアイスだけでは辿り着けない世界へ没入させてくれる。

〈kasiki〉店主・藤田澄香さん
Ice Cream(ルバーブ山椒のアイス、パイナップルジャスミンのアイス) × Wine(ドメーヌ・ベリュアール「エポニム2020」)(全国から届く旬の恵み満載のアイスに、飲み頃のナチュラルワインを。アイスに合わせて選んでもらってもよし、気分で選ぶもよし。)

〈kasiki〉が提案するアイスペアリング

アイスペアリングの理論と実践、ときどき気分

季節の食材の個性を引き出す、ナチュラルワインとソーダ、クリアなコーヒー。

チョコチップカルダモンのアイスとドメーヌ・ドゥ・ラ・トゥルネル 「ヴァンジョーヌ2014」
チョコチップカルダモンのアイスとドメーヌ・ドゥ・ラ・トゥルネル 「ヴァンジョーヌ2014」(カルダモンが上品な香りを放ち、パリパリのチョコチップがとろけるアイスのお供には、仏・ジュラ地方のヴァン・ジョーヌ(イエローワイン)を。紹興酒を思わせる酸化熟成のオリエンタルな香りがカルダモンと、カラメル系の深味がチョコと相性抜群。)
ルバーブ山椒のアイス、 パイナップルジャスミンのアイスとドメーヌ・べリュアール「エポニム2020」
文旦ラムレーズンのアイス、プラムとヴェルベーヌのアイス × ドメーヌ・べリュアール「エポニム2020」(ルバーブの梅のような香りに、和歌山産紀奥山椒の柑橘香と刺激を添えたアイスには、「エポニム」のみずみずしさがマッチ。トロピカルな甘味のパイナップルにジャスミンの香りを纏(まと)わせたアイスにも、ピュアでしい甘さのこのワインが寄り添う。
文旦ラムレーズンのアイス 、プラムとヴェルベーヌのアイスとCOFFEE COUNTY 《Colombia Rubiela Velàsquez》
文旦ラムレーズンのアイス 、プラムとヴェルベーヌのアイスとCOFFEE COUNTY 《Colombia Rubiela Velàsquez》(愛媛〈吉田農園〉の文旦(ぶんたん)を使ったアイスは、ピールの苦味と香りをラムレーズンの芳醇さが支える。甘さと酸味、淡い柑橘香のあるコーヒーは、文旦とよく合い、きれいな余韻が文旦とプラムのみずみずしさやビター感を、より鮮やかに印象づける。)
東方美人茶と甘口ワインのアイスとブラッドオレンジソーダ
東方美人茶と甘口ワインのアイスとブラッドオレンジソーダ(クリームソーダも“ペアリング”の一つ。ソーダのベースは広島・瀬戸田から届くブラッドオレンジで作る自家製コーディアル。甘やかで果物に合う台湾茶、東方美人に甘口の白ワインを加えたアイスが、ブラッドオレンジの華やかな香りに品を添える。)

Information

kasiki(カシキ)

アイス シングル500円、ダブル850円。グラスワインは時価(1,000〜1,500円目安)。クリームソーダ1,000円。
住所:東京都渋谷区西原1-13-2
TEL:なし
営:13時~21時
休:木曜、不定休
Instagram:@kasiki__

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