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関空はなぜ「ロストバゲージ」がゼロ? 世界一の工夫を訊いた

  • 2024.6.2
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海外の空港で、手荷物受取所のレーンに自分の荷物が流れてこなかったという話を聞くことは少なくありません。荷物が行方不明「ロストバゲージ」になると、時間も浪費しますし、往路どちらでも影響が大きくて気が滅入ります。

関西国際空港の滑走路、手荷物を積み下ろす様子(写真提供:関西エアポート)

そもそも、なぜロストバゲージは起こるのでしょうか。国際空港は1日の航空機発着回数が多く、膨大な量の荷物の出し入れが必要になります。形も大きさもバラバラの荷物を識別するのはタグだけですから、ひとつくらいどこかにいってしまうこともありそう・・・。

ところが「関西国際空港」(泉佐野市・泉南市・田尻町)は、1994年の開港以来、同空港を起因とするロストバゲージ・ゼロを更新中とのこと。どのようにしてその記録を継続しているのか、同空港を運営する「関西エアポート」と地上業務に関するサービス全般をおこなうハンドリング会社のひとつである「CKTS」を取材しました。

◆ そもそもなぜ荷物が「無くなる」のか?

──まず、預けた手荷物はどのようなルートで航空機に積み込まれるのですか?

チェックインカウンターで預けられた荷物は、4階からベルトコンベヤで1階の荷捌き場に運ばれます。荷物はスタッフの手によってコンテナに積み込まれ、ドーリー車で運搬されたコンテナを航空機に搭載します。積込時に個数・目的地を確認し、チェックイン時に預かった手荷物のデータと相違がないようしっかりとチェックをおこないます。

空港スタッフのサポートのもと、手荷物がベルトコンベアで運ばれてゆく(写真提供:関西エアポート)

到着時は、その逆の工程で航空機から荷降ろしされた荷物コンテナがドーリー車で荷捌き場まで運ばれます。荷捌き場では、コンテナ内の荷物がスタッフの手作業で到着ベルトコンベヤに流されます。

──そのなかで、荷物が行方不明になる原因はどこにあるのでしょうか。

一般論になりますが、
・経由地での荷物の積み忘れや積み間違い
・手荷物タグの発行ミス(カウンターで行き先と違うタグが発行されてしまう)
・手荷物タグの紛失(タグが手荷物から外れ搭載する航空会社や行き先が不明になる)
・出発地で荷物を違う便に載せる積み間違い
・ベルトコンベヤからの落下・・・などが考えられます。

◆ 丁寧な心がけ「雨で濡れてしまった荷物は…」

──なるほど。2023年の関西国際空港の航空機発着数は16万9773回と発表されていますから、荷物の数は膨大です。紛失が考えられる箇所ではどのような工夫をされているのですか?

「CKTS」では、手荷物がお客さまの手元に渡るまで、ベビーカーやゲート預け・優先順位・トランジット情報などをもとに、複数人で漏れがないように個数・目的地の確認をおこなっています。

もしも個数が合わない場合は、航空機の貨物室内、航空機の駐機場所から荷捌き場までの道中を捜索するほか、コンテナやカート内に残っていないかをすぐにチェックして対応します。

また、到着手荷物をターンテーブルに流す際も、関西国際空港が最終目的地であることや、乗り継ぎの手荷物が混載されていないかをひとつひとつ確認します。到着ターンテーブルのカーブ周辺に手荷物が落ちていないかもチェックします。

でも一番の心がけは、「お客さまの手荷物を大切に取り扱う」という意識です。

開港以来、ロストバゲージがゼロだという関西国際空港(写真提供:関西エアポート)

──確認作業の積み重ねがロストバゲージ・ゼロを実現しているのですね。見ていると、荷物の上げ下ろしなども丁寧にされているようです。

お客さまの荷物を丁寧に取り扱うことはもちろん、「持ち手をお客さまの方向に向ける」「長尺荷物やベビーカーは手渡しする」「雨天時には、雨で濡れてしまった荷物はタオルで拭き取りをする」等をおこなうようにしております。

──そんなことまで! そういったことは、日本ならではの対応なのでしょうか。

もちろん日本だけではないと思いますが、日々心掛けているのは空港ご利用のお客さまに快適に過ごしていただきたい、そして関西国際空港をまた利用していただきたいというホスピタリティ精神と細やかな気配りの現れではないかと考えております。

◇◇

同空港は、イギリスを拠点とする世界の航空・空港の格付け会社「スカイトラックス」の国際空港評価のうち、手荷物取扱部門において2024年に8回目の1位を受賞しました。評価には、手荷物受け取りまでの待ち時間や効率、ロストバゲージの対応などが含まれます。

「スカイトラックスの受賞やロストバゲージ・ゼロの記録は、各航空会社、各ハンドリング会社をはじめとする、関係者の日々の努力の積み重ねと丁寧な作業の賜物だと思います。これからも空港を利用されるお客さまが快適で楽しい時間を過ごせるように努めて参ります」と広報担当者は話しています。

これからは見えないところで地道な作業を重ねるスタッフの存在を感じながら、レーンの荷物を受け取りたいですね。

取材・文/太田浩子

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