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「あの人と比べて私は…」自分以外の人間が幸せそうに見える、3人のワーママそれぞれの苦悩

  • 2024.6.1
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自分以外の人間が幸せそうに見える。「羨ましい」そんな思いを抱いたことは誰にだって1度くらいあるだろう。『あのママが妬ましい 幸せ比べ、天国で地獄』(きなこす/KADOKAWA)は、お互いを羨んでいる3人のワーキングマザーが主人公だ。

劣等感が強く、他者との比較でしか幸せを感じられない雪。そんな雪は、美人で社長夫人の涼香が妬ましくて仕方ない。

しかし美人がゆえに周囲に誤解され人間関係をうまく築けないままだった涼香は、明るく人望のある楓に憧れている。

あっけらかんとして清々しい楓は、元ヤングケアラーで現在も義両親の世話を任されている苦労人。そんな楓は、若くして子どもを授かり仕事も続けている雪が羨ましくて…。

そんな風に羨望の眼差しを向け合う3人が、プライベートのちょっとしたつまずきをきっかけに自分のコンプレックスや苦労の種と向き合っていくことになる。

自分の弱さと向き合うことはとてもしんどい作業だ。それをやってのける彼女たちのガッツとど根性になんとも言えず胸を熱くさせられる。誰1人として腐らないところが健気で、なんなら愛しささえ芽生えてしまう。

読者のハートに元気を届けるこの読み心地は、著者のパワーによるところが大きいだろう。

本作の著者は、夫のモラハラに悩む妻の毎日をコミカルに描いた『マンガでわかる 離婚まで100日のプリン 決別or再構築、どうしよう?』を描いたきなこす先生だ。

きなこす作品の魅力のひとつはシリアスになりすぎないユーモアあふれる筆致。本作でもそのバランス感覚がきらりと光り、重さと軽さのあんばいが心地よい。あたたかくクスッと笑える「きなこす節」が、彼女たちの曇りがちな日常を彩っていく。

もちろん明るく楽しいだけではなく、3人の内面にぐっと踏み込んでいくため読み応えも抜群だ。

雪・涼香・楓たちは年齢も生きてきた環境も違う、ただ職場が同じだけの同僚なのだが、幼少期の体験がコンプレックスに繋がっているという共通点がある。そして、良くも悪くもそれらを乗り越えるためのエネルギーが「母の存在」だった。

子ども、とくに娘にとって母親の影響はことさらに大きいように思う。

主人公の3人も、母の言動に蝕まれたり励まされたりしながら人生を生きている。ピンチのさなか、彼女たちに一歩進む力を与えたのは記憶の中の母の姿だった。母親の強さが、弱さが、彼女たちを変化させる糧となっていく。

三者三様のやり方で己の殻を破った雪・涼香・楓。「羨ましい」から始まった関係は、やがて爽やかな結末を迎える。3人それぞれの見せ場がしっかりと描かれ、1巻完結ながら充実した読後感に浸れるのも魅力的だ。

彼女たちが抱える悩みの数々は、多くの人が共感するに違いない。ぜひ「うんうん、そうだよね!」と頷きながら読み進めてもらいたい。

文=ネゴト/ あまみん

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