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働いて理解した。就活無双できるのは小手先のテクニック、じゃなかった

  • 2024.6.1
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文章を書くことにはそこそこ自信があったし、奨学金や海外研修など、面接を伴ったものは全て通ってきた経験もあり、いわゆる就活と言われるものをそれほど恐れてはいなかった。

大学進学直後に就活を意識してインターンや、SPI対策、自己分析をする人がいる中、私は就活のためではなく、学生のうちにしかできない自分がやりたいことだけをやってきた。どれも周りには就活対策に見えたようだったが、実際私はそうではなく、信念があって活動をしていた(むしろ社会人になったら好きなことはできないだろうという焦りと絶望感があった)ため、就活のためにやっている子よりも私の方が何かとオファーされやすかった。

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しかし、就活の時期がやってきて、書類審査さえ通過しない現実に直面し、これは手強いぞとようやく気がついた。そこで初めて、大学当初から就活のための活動をしていたあの子たちは間違っていなかったのかもしれない、という考えが頭をよぎった。

もうこうなったらなりふり構ってはいられない。私は就活経験者、その中でも、大企業等うまくいった人たちに思いつく限り連絡し、エントリーシートを添削してもらったり、就活のコツを聞いて回ったりした。

友人の添削後、書類審査が嘘のように通るようになった。書類審査が通ると面接。友人の言った通り、書類を作り込めば、面接は十分に話すことができる。あれよあれよといううちに企業からオファーが殺到し、就活は無双状態だった。

結局は小手先のテクニックか。正直そう思った。私の結果を、先生も友人も、ライバルたちも、誰もが驚いた。そもそも受験に失敗している私は自信がなさそうだったため、実力以上のところから内定を得たように見えたのかもしれない。

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就職し、会社に入り、人にお願いをしなければならないことが増えた。しかしなかなかうまくいかない。しかも相手は手強い。社会人を何年もやってきた人たち、しかもその中の生き残りの精鋭たちだからだ。そんな時に、ふと頭をかすめる。ESの時、主張を明確に伝えるためにどのように文章を書いたっけ。面接の時、何からどう順を追って話したっけ。面接は得意、問いにすぐ答えられる。そう思っていたけれど、仕事では話したり、会議を進行するのが苦手。きっとそれは仕事のことがまだきちんと理解できておらず必要な知識が頭に入っていないからで……。

そこでようやく理解した。ESとは、社会人として働くための基礎的な力を見られているのだ。一見意味のないように見える志望動機やガクチカも、社会に出るとやりたいことをやるために、どうやったら会社が動いてくれるのかを見極め、伝える力に繋がる。面接だって、日頃から問題意識を持って生活していないと、パッと問いに答えることができない。だから、就活のためではなく、明確な目的を持って興味本位で活動していた私は、面接官に対して説得力を持たせられた。そしてそもそもだが、信頼できて相談できる友人を作れるか、問題が起きた時に対処するため誰を頼るべきかわかっているか、など、友人を頼ったら就活無双できるなんて結局はテクニックじゃん、と思っていた力そのものが、仕事をする上で大切なスキルなのだ。

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学生という社会も知らない若いうちからある意味、ふるいにかけられ、試されていることは残酷ではあるが、そういう人を社会は欲しているし、そういう人を育てようとしているのが、学びの場なのだろう。

就活はこれまでに培った自分の力をアピールし、いかに役に立つ人間かを理解してもらう場だと思っていた。しかし、私は就活を通して、自分を売り込む術を叩き込まれて、育てられた。それが今の仕事の場で生きている、生かそうとしているのだと、メールを打ちながらふと気がついた。

■ありすのプロフィール
研究者。旅好きなので、いつか旅エッセイの出版を画策してます。趣味は小説の執筆。

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