1. トップ
  2. “爆走と狂気”の『マッドマックス』が丸わかり シリーズ9年ぶりの新作公開を前に、過去作一挙振り返り

“爆走と狂気”の『マッドマックス』が丸わかり シリーズ9年ぶりの新作公開を前に、過去作一挙振り返り

  • 2024.5.31
  • 69 views
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」はムービープラスで6月1日(土)夜6:45より放送 © Warner Bros. Entertainment Inc.
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」はムービープラスで6月1日(土)夜6:45より放送 © Warner Bros. Entertainment Inc.

【写真】インパクトあるモヒカン頭の暴走族・ウェズ(「マッドマックス2」より)

CS映画専門チャンネル「ムービープラス」では、本日5月31日に封切りとなる『マッドマックス:フュリオサ』(以下『フュリオサ』)の全国公開を記念し、シリーズの過去全4作品に加え、監督やメインキャストの関連作を大特集。世界中を魅了した『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(以下『デス・ロード』)から9年ぶりとなるシリーズ最新作ということで、いやが応にも期待が高まるなか、今一度シリーズの魅力をおさらいしていこう。アクション、ドラマ、キャラクター、ギミック、世界観と、全方位にサービス精神が溢れており、全ての映画ファンが「これぞエンタメ映画!」と歓喜する、その理由とは? 名前は聞くけどじつはよく知らないという人も、これさえ読めば観たくなるはず。

『デス・ロード』に繋がるフュリオサの“怒り”の物語

本日より公開中の『マッドマックス:フュリオサ』は、前作『デス・ロード』(2015年公開)の前日譚という位置付け。シャーリーズ・セロンが演じた“戦うヒロイン”フュリオサの若き日を描いたストーリーで、フュリオサ役には新たにアニャ・テイラー=ジョイが起用。またフュリオサにとっては母の仇であり、育ての親でもあるのが本作で初登場となるディメンタス将軍で、こちらはクリス・ヘムズワースが演じている。『デス・ロード』で大暴れして、世界を魅了したフュリオサにスポットを当てたシリーズ初のスピンオフ作品となる。北米市場では一足先に公開済みで、当然のように興収No. 1を記録しているメガヒット作品だ。「ムービープラス」ではシリーズの過去4作品はもちろん、フュリオサを演じるアニャ・テイラー=ジョイ、ディメンタス将軍役のクリス・ヘムズワース、シリーズを通じてメガホンをとるジョージ・ミラー監督の関連作まで放送する大盤振る舞い。作品のみならず、俳優や監督の魅力まで堪能できるラインナップとなっている。

過去シリーズ4作に共通する「爆走」と「狂気」

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」より © Warner Bros. Entertainment Inc.
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」より © Warner Bros. Entertainment Inc.

『マッドマックス』をよく知らない人でも、マッチョなモヒカン頭のヤンキーたちが、「ヒャッハー!!」と叫びながら改造車で砂漠を爆走しているという世界観はどこかで目にしたことがあるだろう。それこそが『マッドマックス』シリーズであり、あの『北斗の拳』もまた、本作の世界観にインスパイアされて生まれたフォロワーのひとつであることは有名な話だ。その原点とも言える第1作は1979年に公開された『マッドマックス』。暴走族による凶悪事件が多発する荒廃した近未来を舞台に、メル・ギブソン演じる特別警察官マックスが暴走族たちと戦う復讐劇だ。冒頭、「俺はナイトライダーだ!」とハイテンションで自分の名前を叫びながら、盗難車のV8インターセプターを駆り、マックスに追い立てられると急にビビって泣き出すなど、なんともイかれたマッドすぎるキャラクターが登場するが、それがこのシリーズの全てを象徴している。そう、『マッドマックス』は敵キャラがとにかくユニークで個性的なのだ。この狂気に振り切ったキャラクター造形と体当たりなカーアクションが大ウケし、本作はスマッシュヒットとなった。

【写真】インパクトあるモヒカン頭の暴走族・ウェズ(「マッドマックス2」より) © 1982 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
【写真】インパクトあるモヒカン頭の暴走族・ウェズ(「マッドマックス2」より) © 1982 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

そして前作の10倍の予算をかけて作った続編『マッドマックス2』(1981年公開)が、シリーズの運命を決定づけた。物語の舞台を戦争で荒廃しきった世界に変更し、モヒカン頭の暴走族が弱者を蹂躙する世界観を確立。作品を知らない多くの人にまで「これぞマッドマックスの世界!」と知らしめるほどに強烈なビジュアルインパクトを与えた。主人公は引き続きマックスだが、ここでもやはり敵キャラが見どころ。赤いモヒカン頭のウェズや、ホッケーマスクで顔面を覆ったボスのヒューマンガスなど、一度観たら忘れられないキャラクターのオンパレードで、正直マックスよりインパクトが強い。また本作でもド派手な改造車同士のチェイスや爆破シーンは健在で、「狂気」と「爆走」というシリーズにおける 二本柱を決定づけた作品とも言える。

「マッドマックス/サンダードーム」より © 1985 Kennedy Miller Entertainment Pty. Ltd.
「マッドマックス/サンダードーム」より © 1985 Kennedy Miller Entertainment Pty. Ltd.

続く3作目『マッドマックス/サンダードーム』(1985年公開)は、荒野をさすらうマックスが流れ着いた街での物語。過去作と比べるとカーチェイスは減ったものの、濃ゆいキャラは健在で、なんといっても金網デスマッチが印象的な作品だ。とくに小柄な老人と巨体の子供が合体したマスター・ブラスター戦は必見。その一方、ソウル歌手であるティナ・ターナーを敵ボス役に起用したり、人間ドラマに重きを置くなど、シリーズ3作目らしい野心的な試みにも注目したい。

3作目から30年ぶりの続編となった『デス・ロード』(2015年公開)は、アカデミー賞6冠と、紛れもなく映画史に燦然と輝く名作。砂漠を舞台に、冒頭からラストカットまでひたすらにカーチェイスが描かれる本作は、シリーズに一貫した「狂気」と「爆走」を最大濃度にまで高めており、まさに原点回帰にして最高傑作と呼べる。イモータン・ジョーをはじめとした独創的で魅惑的なキャラクターと、こだわり抜いた改造車や武器、ギミックの数々、狂信者たちの常軌を逸した行動、背後に見え隠れするシリアスな人間ドラマなど、「これぞ映画!」と叫びたくなるほどのリッチな映画体験が味わえること間違いなしだ。本作は海外だけでなく日本でも多くの熱狂的なファンを生み出し、声を上げて応援しながら鑑賞する「絶叫上映」や「爆音上映」など、特殊なスタイルでの上映が各地で行われたのも記憶に新しい。そして、本作において孤高の戦士、かつヒロイン的ポジションなのがフュリオサだ。現在公開中の『フュリオサ』は彼女の若き日が描かれており、『デス・ロード』へと繋がる物語となっているため、観に行くならば必修科目と言えるだろう。

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」より © Warner Bros. Entertainment Inc.
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」より © Warner Bros. Entertainment Inc.
「トワイライトゾーン/超次元の体験」より © Warner Bros. Entertainment Inc.
「トワイライトゾーン/超次元の体験」より © Warner Bros. Entertainment Inc.

監督&主演陣の新たな一面もチェック

ここからは監督と主演俳優の関連作を見ていこう。まずは『マッドマックス』の生みの親であり、シリーズを通じて監督を務めるジョージ・ミラー。『マッドマックス』で長編映画デビューを果たしているだけに、やっぱり過激な作品が多いのかと思いきや、じつはそうではない。ドタバタコメディーの『ベイブ/都会へ行く』(1998年公開)や、皇帝ペンギンの大冒険を描いたフルCGアニメ映画『ハッピー フィート』(2006年)など、ハートフルな作品も手がけており、その引き出しの多さは驚嘆に値する。今回「ムービープラス」で放送するミラー監督作品は『トワイライトゾーン/超次元の体験』(1983年公開)と『イーストウィックの魔女たち』(1987年公開)の2作品。『トワイライトゾーン/超次元の体験』はスティーヴン・スピルバーグら若手4人の監督によるオムニバス映画で、ミラー監督は第四話の「二万フィートの戦慄」を監督。飛行機恐怖症の男が嵐に揺れる旅客機で怪物と出会うストーリーで、リチャード・マシスンの短篇を元にしたホラーサスペンス。『イーストウィックの魔女たち』はジョン・アップダイクの同名小説を原作とした奇想天外なセクシャル・コメディで、天使と悪魔のビジュアルは、ミラー監督お得意のSFXが満載。どちらの作品も、ミラー監督の新たな一面を感じることができるだろう。

続いては、『フュリオサ』の主演を務めるアニャ・テイラー=ジョイとクリス・ヘムズワースの二人の関連作を見ていこう。テイラー=ジョイは『ウィッチ』(2016年公開)のトマシン役で注目され、M・ナイト・シャマラン監督のサイコスリラー映画『スプリット』(2017年)で人気を確立したトップ俳優。今回「ムービープラス」で放送する『キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱』(2019年公開)では天才科学者であるキュリー夫人の娘で、聡明なイレーヌ・ジョリオ=キュリーを演じている。一方、ヘムズワースは『マイティ・ソー』(2011年公開)で主人公のソーを演じ一躍有名となった、ヒーロー役が似合うイケメン俳優。「ムービープラス」で放送する『白鯨との闘い』(2015年)では、過酷な漂流生活でやせ衰えていく主人公を演じている。テイラー=ジョイもヘムズワースのどちらも、『フュリオサ』とはまったく異なる新鮮な役柄と演技を披露しているので、ぜひチェックしてほしいところだ。

いかがだっただろうか。「ムービープラス」の『フュリオサ』公開記念特集を通じて、改めて『マッドマックス』シリーズの魅力と監督&俳優陣の魅力を感じ取ってみてほしい。

◆文/岡本大介

「白鯨との闘い」より © 2015 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
「白鯨との闘い」より © 2015 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
元記事で読む
の記事をもっとみる