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【新垣結衣さん&早瀬憩さんインタビュー】「私」と「あなた 」は違う人間だからこそ

  • 2024.5.30

映画『違国日記』でW主演をつとめた新垣結衣さんと早瀬憩さん。年齢もキャリアも性格も違う2人は作品のタイトルどおり〝違国〟の存在だけれど、無理や忖度のない空気感はとても自然で風通しがいい。その関係性はどのように築かれたのか、互いへの想いを語ってもらいました。

「『とってもフレッシュな子がいます』っていうさわやかな雰囲気を感じました」(新垣)

出典: 美人百花.com

――まるでもうひとつの『違国日記』を見ているよう。本作は新垣さん演じる人見知りの小説家・槙生と、早瀬さん演じるその姪・朝の交流を描いた作品。新垣さんは「ただの親戚でも親子でも友達でもない2人の関係性が好きです」とコメントしているが、目の前の人も「先輩俳優と後輩俳優の関係はこういう感じ」というテンプレとはまた別モノというか。近すぎず遠すぎず、でも互いの体温でつながっているような、ニュートラルな関係性が劇中の槙生と朝に重なる。

垣「憩ちゃんと最初に会ったのは衣装合わせの日。その頃は髪も今よりちょっと長くて、ちょっとシャイな感じで、でも『とってもフレッシュな子がいます』っていうさわやかな雰囲気を感じました」

早瀬「会った瞬間、結衣さんからはやさしさとか穏やかさとか、内面から湧き出るオーラみたいなものがすごく伝わってきて。私はあまり緊張しないタイプなのでお会いする前から楽しみだったんですけど、実際にお会いして、安心したというか。撮影に入るのがもっと楽しみになりました」

――早瀬さんは今回オーディションで選ばれた16歳の新人だが、びっくりするほど物怖じしない(笑)。そして、そんな早瀬さんを隣で慈しむように見つめる新垣さんの表情も新鮮。

新垣「憩ちゃんは何かわからないことがあったりすると、監督に何でも聞いて自分の中で咀嚼し、すぐアウトプットする。それって難しいと思うんですけど、スポンジのように吸収して、どんどん生かしていく感じがすごいんですよ」

――大先輩の褒め言葉に「結衣さんが言うほど、ちゃんとしていないですけど……」と早瀬さんが恐縮すると、新垣さんが耳元で「してるよ」と囁き、早瀬さんがくすぐったそうに笑う。そんなささいなやりとりも可愛くて、槙生と朝っぽい。

早瀬「現場では待ち時間や昼休憩のときも、槙生ちゃんの家のセットで結衣さんと一緒に過ごすことが多くて。2人で話すときもあれば話さないときもあるし、片方が本を読んでるときもあれば、片方がふらっと帰るときもある。そんなふうに全然気を使わないし、無理に深入りしようとするわけでもない。本当に槙生ちゃんと朝みたいな自然な距離感で一緒に居られたので、その感じが映像にも表れているのかなと。でも、その雰囲気を作ってくれたのは結衣さんで、ずっと一緒にいてもまったく緊張させないんですよ」

新垣「私からすると、緊張しないようにしてくれたのは憩ちゃんのほう。やっぱり最初は『私が隣にいてどう感じるかな』とか『どういう話をしようかな』とか考えるわけです。でも憩ちゃんは物静かなタイプでありながら突然スイッチが入ってブワッとしゃべり出したりして、どんどん来てくれる。話したいと思えば話しかけてくるし、話しかければ答えてくれるっていうフラットな状態でいてくれたから、槙生ちゃんと朝の雰囲気を出すために意識することも特になかったです」

――話を聞いてつくづく感じたのは早瀬さんの素直さと、新垣さんの懐の深さ。こんな後輩、こんな先輩、そしてこんな関係性に憧れる。

「30代の自分は正直、想像がつかないけれど、こう在りたいと思うのは結衣さんみたいな人」(早瀬)

出典: 美人百花.com

――新垣さんが俳優として活動を始めたのは15歳。10代の新垣結衣はどんな子だったのだろう。

新垣「東京に住み始めた頃で、雑誌の読者モデルから本格的にお芝居を始めたばかりで戸惑い、もがいていました。わからないことだらけなので教えてもらったことをやるしかない。15歳なりにちゃんと責任感を持たなきゃって思っていたけれど、なんだか納得できない気持ちもあって。それを大人にぶつけてみたり苦しんだこともありましたが、知らないことが多いからこそ楽しめた部分もあった、という感じですね。でも本質的なところは20年たっても変わっていません。経験したことや出会った人によって肉付けされて、振り返ると恥ずかしいと思うこともあるけど、否定するようなことはひとつもない。あの頃、自分がやっていたことや考えていたことは基本、今もそのまんまだと思います」

――新垣さんの持つ、真っ白で色褪あせない少女性は「15歳の自分」が今も息づいているから。一方、早瀬さんにとって新垣さんは「理想の大人の女性」であり「憧れの美人像」だと言う。

早瀬「30代の自分は正直、想像がつかないけれど、こう在りたいと思うのは結衣さんみたいな人。私はまだ10代で突っ走っているから、自分のことで手一杯で周りに目が向けられないんです。でも結衣さんはこうして一緒にインタビューを受けているときも現場でもいつも気遣ってくれる。そんなふうに人のことも自分のことも大切にできる人は『美人』だと思いますし、結衣さんはお芝居や作品への熱量もすごい。お芝居が始まると槙生ちゃんの目、槙生ちゃんそのものになっていて、そこにいるのはもう結衣さんじゃない。そういうお芝居への向き合い方も素晴らしいなって尊敬しています」

新垣「私にとっての『美人』は、それこそ槙生ちゃんがそれに近い存在かもしれない。彼女は自分の中の揺るぎない大切なものを変わらず持ち続けているけど、柔軟な人でもあって。答えを決めつけず、人との出会いの中でまた広がっていける人。そんな人になりたいです」

――劇中の槙生のセリフで、新垣さんがもっとも印象に残っている言葉がある。

新垣「『あなたと私は別の人間だから。あなたの感情も、私の感情も自分だけのものだから。分かち合うことはできない』と朝に向かって言う言葉です。これはタイトルの『違国日記』にもつながるセリフだと思っていて、まったく違うものを見ている人が一緒にいて話をすることで、見えるものが広がるといいますか。『そういう見え方もあるんだな』っていうことを知り、否定するわけでも正解だと決めるわけでもなく、自分のものは自分のものとして、互いを大事にしていく。その状況が私の思う『美しさ』であり、自分のなりたいものに近い気がします」

――年齢もキャリアも違うけど、違うからこそ反射し合い、互いを輝かせる人。撮影中、「白玉(笑)」と言って新垣さんが早瀬さんのほっぺをツンツンして笑い合っていたが、そんな一場面にも、新垣さんが思う「美しさ」は確かに映し出されていた。

[新垣さん分]デニムベスト(ジャケット付き)¥121,000、デニムパンツ¥75,900/ともにTHE KEIJI(THE KEIJ・IIJIIT&Co.表参道) シャツ¥35,200/AURALEE 靴¥37,400/RHODOLIRION(NEPENTHES WOMAN TOKYO) ピアス[左耳]¥24,200、[右耳]¥24,200、リング¥39,600/以上e.m.(e.m.青山店) [早瀬さん分]トップス¥35,200、パンツ¥39,600/ともにJUN OKAMOTO リング¥72,600/Muff その他/スタイリスト私物

Profile

新垣結衣(あらがきゆい)

1988年6月11日生まれ。2005年にドラマデビュー。おもな出演作はドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』など。新境地を開いた昨年公開の映画『正欲』も話題に。

早瀬憩(はやせいこい)

2007年6月6日生まれ。12歳から俳優活動をスタート。『うちの弁護士は手がかかる』『ブラッシュアップライフ』NHK連続テレビ小説『虎に翼』など数々のドラマに出演。

Information

『違国日記』

小説家の槙生は疎遠だった姉が突然事故で亡くなり、姪の朝を引き取ることに。対照的な2人が同居を始め、理解し合えない寂しさを抱えながらも、丁寧に生活を育むうちにかけがえのない関係を築いていく。

出演:新垣結衣、早瀬憩 他

配給:東京テアトル 配給協力:ショウゲート

6月7日(金)より全国ロードショー

(C)2024ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

掲載:美人百花2024年6月号「幸福美女図鑑」

撮影/中村和孝 スタイリング/小松嘉章(nomadica)[新垣さん分]、小林美月[早瀬さん分] ヘアメイク/藤尾明日香(kichi) [新垣さん分]、森岡萌絵(sui)[早瀬さん分] 取材・文/若松正子 再構成/美人百花.com編集部

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